腐った学び舎
あの後結局、ルークはリナに対して何も聞かずこの日の授業を終えた。そして放課後…………
「おーい、アシュレイ!この後少し残れ、お前が寝泊まりする学生寮を案内してやる」
そう言ったのは、担任教師のジルだった。言われた通り、ルークはそのまま教室に残り担任教師が来るのを待っていた。授業が終われば生徒達は寮の門限九時までは自由の身だ。皆と遊びに行くもよし、鍛錬に励むもよし、はたまた寮で過ごすもよし、問題行動さえ起こさなければ何をやってもいい時間だ。
【ガララララッ】
「すまん、待たせたな。それじゃ行こう」
学校は首都の北部に位置していて、学校の敷地の左側に校舎、中央に商業施設、右側に二棟の寮がありそれぞれ男女別々となっている。もちろん、異性の寮には立ち入ることは許されてはいない。もしバレたら、即刻退学だ。首都に住んでいる者以外は皆寮に入っている為、かなりの生徒が寮暮らしだ。
寮に向かって歩いていると、商業施設には多くの生徒で溢れかえっていた。そんな生徒達で賑わう商業施設の立ち並ぶ場所を抜け、目の前に大きな2棟の寮が見えてきた。
「いいか、あの白い建物が男子寮だ。そして、あちらの黄色い建物が女子寮だ。いいか、決して女子寮には近づくな、入ったのがばれれば、即刻問答無用で退学になる。覚えておくように」
「わかりました」
「部屋は個人部屋になっており、二年生のお前は二階だ。荷物は今日中に届くということだ。それまではおとなしく部屋で待機しているように」
「はい。ところで先生一ついいですか?」
「ん?どうした?」
「実は、今日一日過ごして分かったことがあるんですが、あきらかにあのクラスには虐めが行われていますよね?」
「………………」
「それも、一人二人じゃなく複数の生徒達が。あれはどういうことなんですか?この学校は、身分など関係ないはずですよね?助けを求めてきた生徒は居ないんですか?」
ルークのもっともな質問に黙るジル。
「………………」
「答えてください」
「確かに、この学校では虐めが多発している。だが、君がそれを知ってどうする?自らが虐めを止めさせるのか?たかが男爵の君がか?そりゃ、主犯が平民なら可能だろ。しかしなぁ、相手が君より身分が上の者だったらどうする?君だってただじゃ済まされないぞ?わかったなら、余計な事に首を突っ込まない事だ」
「…………腐ってる」
「かもな…………。でも、俺達教師でもどうにも出来ないんだ。すまん…………」
「「……………………」」
二人の間で静寂が訪れる…………。
「先生、ここで大丈夫です。ありがとうございます…………」
「そ、そうか…………。なぁ…………アシュレイ?」
「何ですか?」
「君だけはまともで居てくれ…………」
「もちろんです」
「じゃ、先生は学校へと戻る事にするよ。また明日な!」
「はい!」
こうして、ジルは学校へと戻っていき、ルークは学生寮へと向かうのだった。
【その日の夜】
ルークは夕食を取る為に、学生寮の隣にある食堂に来ていた。食堂では朝と夜の二回、学生はお金を払わず無料で食事がとれる。各部屋にキッチンはあるが、生徒達は自分で食事を作るとお金が掛かってしまう為、基本はここで食事をしている。だが…………
「おい!何、平民風情が俺ら貴族と同じ場所で食事をとっているんだ!いつも言っているだろ!お前らみたい、何の役にも立たない奴等は部屋で食事をしろと!この食堂はなぁ、俺達、貴族様だけのものだ!わかったならとっとと出て行け、このゴミどもが!」
「そうよ!あんた達が居ると、せっかくの食事がまずくなるわ!はやく出て行きなさいよ!」
「でも………。僕たちだってちゃんとお金を払っているんだ!使う権利ぐらいはあるだろう?」
「はんっ!何が『お金を払っているから、使う権利ぐらいあるだろう?』だ!てめー、誰に口聞いてんのか分かってんのか?殺すぞ?」
「ひぃぃぃぃぃ」
そう言うと、平民であろう男子生徒達は慌てて食堂から出て行った。そして、そんな様子を見ていたルークは食事をトレーに取り、空いている席へ座り食べ始める。
(やはり、ここでは身分の差がものを言うのか。腐りきってるな)
そんな風に思いながら食事をしていたルークの元へ一人の女性が近づいてくる。
「あら?あなた、見ない顔ね?」
「あぁ、俺は今日からこの学校に通うことになった、ルーク・アシュレイだ。爵位は男爵、君は?」
「男爵?あははははっ!男爵ですって?」
「何が可笑しい?」
「可笑しいも何も、なぜ、男爵風情の雑魚貴族がここで呑気に食事をしているわけ?」
「何で食事をしてるかって、貴族だからだ。さっき、あいつも言っていただろ?『この食堂はなぁ、俺達、貴族様だけのものだ!』と。だからここに居るんだが、何か問題でもあるのか?」
「おおありよ!男爵なんてあってないような爵位じゃない!平民と何のかわりもないわ!」
「そういう君の爵位は何だ?公爵か伯爵か?」
「私の名は、エマ・クレセント!子爵よ!あんたより上なの!」
「ふっ」
「な、何が可笑しいのよ!」
「俺と一つしか変わらないじゃないか!それでよく威張れたものだな!」
「あ、あんたねぇ…………!」
すると、騒ぎを聞きつけた貴族の男がやってくる。彼は、先程平民の男子に出て行けと言った横暴極まりない男子生徒だ。
「どうしたんだ、エマ?揉め事か?」
「聞いてよ、ジョニー!こいつときたら、男爵のくせに子爵の私に歯向かうのよ!ほんと、頭にくる!」
「ほほぅ。そいつは見過ごせねーな!って、てめーはたしか俺のクラスに編入してきた…………」
「ルーク・アシュレイだ」
「そう、そう!ルーク・ウォシュレット…………だったか?あはははっ!そう言えば、そんな汚ねぇ名前だったな!」
「アシュレイだ」
「あぁん?んなの、どうだっていいんだよ!それよりてめー、エマに喧嘩売ったみてーだな!覚悟は出来てんだろうな?」
「何だ?俺とやり合うつもりなのか?」
「上等じゃねーか!表出ろや!」
ジョニーが、ルークに対して怒鳴り声をあげると、周りで野次馬をしていた貴族たちが集まり騒ぎ始める。
「お?何だ、何だ?どうした?」
「喧嘩か?」
「何で、ジョニーさんは大声をあげてんだ?」
「って、ジョニーさんが突っかかってんのって、俺らのクラスに編入してきたアシュレイじゃねーか?」
「あっ!ほんとだ…………」
「あいつ、ジョニーさんに喧嘩売るとは度胸あるな」
「度胸と言うか、ただの馬鹿だろ!ジョニーさんに敵うはずないのに」
野次馬の貴族たちが騒いでいるのを気にせず、ルークとジョニーは移動を開始した。




