訳ありの席
ここに、ルーク・アシュレイと言う男が居る。彼は貴族であり爵位は男爵だ。この話は、ルークが皇帝となるまでの物語。
ルーク・アシュレイは現在十七歳。彼の領地は今から三年前、後に【最悪の厄災】と呼ばれる隣国二箇所の同時侵略により、村が滅びかけた。滅ばずに済んだのは、アシュレイ領地と親交のある隣の領地アーデルハイド領地の当主グレン・アーデルハイドがいち早く事態に気が付き、国王へに知らせ、アシュレイ領地に王国騎士団及び冒険者を派遣したからである。
そして、敵国との戦いでルーク・アシュレイは両親を失った。残されたのは、ルーク本人とその兄弟、弟のラムザ・アシュレイと妹のマリー・アシュレイ、それと僅かな領民だけであった。なお、ラムザとマリーは双子で現在共に八歳であり、両親を失ったことで、アシュレイ領はルークが当主となった。
【世界歴2026年2月某日】
「ラムザ、マリー朝ご飯だぞ!降りてこい!」
【ジリリリリッ】
ルークは、階段の側にあるベルの中から一つ鳴らす。これは、ご飯が出来た時の合図。その他にも、ルークが領地の事で出かけるときのベル、はたまた緊急時用のベルなど様々なベルがる。ルークがベルを鳴らしたと当時に、
【バタバタバタッ】
何やら二階が騒がしくなる。そして、すぐに階段を降りる足音が二つ。
「ルーク兄ちゃん、おはよう!」
「ル、ルーク兄様、お、おはようございます」
「おう、二人ともおはよう!ご飯できてるぞ!」
「ほーい!俺が運ぶから、姉ちゃんはお箸を取ってくれ!」
「う、うん…………」
弟妹は慣れた手つきでルークの手伝いをする。
「よし!じゃぁ…………」
「「「いただきます」」」
ラムザが凄い勢いでおかずを取っていく。そんなラムザを見たマリーは、
「ラ、ラムザ、誰も取らないかもっと落ち着いて食べないとダメだよ!」
「もぐ……もぐ………△◎ΩЖ∇★(わかってるって)」
「こら、ラムザ!お行儀が悪いよ」
「ははははっ!」
「ル、ルークお兄ちゃんも注意してよ…………」
「いいんじゃないか?ラムザだって悪気があってやってることじゃないだろうし!」
「★±※∃Λ(そーだ、そーだ!)」
「ダメだよ。ラムザがそんなんじゃ、当主のルークお兄ちゃんに迷惑がかかるでしょ!ちゃんとしなさい!」
「………はーい」
「はははっ、偉いなマリーは!」
「そ、そんなことないよ。私はルークお兄ちゃんに迷惑かけたくないも」
「それはそうと、今日から叔父さんと叔母さんが来るから迷惑かけないようにな!」
「「はーい」」
「春休みには一度戻ってくるから、それまで元気にやってるんだぞ!」
「「うん」」
今日から、この家には叔父と叔母が来ることとなっている。ルーク家は三人で暮らしており、双子の弟妹は、ルークの事を尊敬しておりルークの言う事は何でも聞く。弟のラムザは、活発な男の子で、妹のマリーは物静かで内気な子である。
そして、今日からルークは王都にある通うアルカナ学校に編入するのだ。ルーク達の国、アルカナ王国に唯一存在する学校で、叔父と叔母の勧めで通うこととなった。なんでも、叔父たちが言うにはこの先当主をやっていくうえで、次期当主になるであろう者達が通っている為、社交性を磨いて来いとの事だ。
アルカナ学校は、身分を問わず貴族から平民まで通える学校で、学校の中では貴族も平民も関係なく皆、平等の扱いだ。ただ、それを良しとはしない一部の生徒居る。身分の壁があり、爵位が高いものが自分より身分の下の者を虐めることなど多々あることだ。
そして弟妹達も学校へと行き、ルークもアルカナ学校へと向かった。一度職員室に寄り、校長と担任教師に挨拶をして、教室へと向かった。
【ガララララッ】
担任教師が教室のドアを開け、生徒達が揃っているかを確認する。この学校の一クラス当たりの生徒数は、三十人程度だ。そして、皆が居ることを確認した担任教師は生徒達に説明を始める。
「えー、これからこのクラスに編入する仲間を紹介する。入って来い」
【ガヤッガヤッガヤッ…………】
何も聞いていない生徒達は、動揺を隠せず騒ぎ始める。
「静かにしろー!騒いでいると入って来れないだろ!」
生徒達は静かになり、教師の入ってきたドアの方を見る。そして、静かに教室の中へと入って行くルーク。
「みなさん、は、初めまして、ルーク・アシュレイです。アシュレイ領の当主をやっております。爵位は男爵で属性は無属性です。よ、よろしくお願いします」
「…………………………」
ルークの挨拶が終わると、クラス中に静寂が訪れる。そしてすぐに…………
「あははははっ!」
「無属性で、男爵だってよ!」
「お前、終わってんな!とっとと、村に帰って畑仕事してた方がいいんじゃねーの?」
ルークは自分の身分と領地の事をクラスメイトから馬鹿にされ始める。でも、わかっていた事だ。元々この国で最も小さい領地のアシュレイ領…………。父親が武勲をあげ、貴族として認められたがその父親も戦により無くなった。そして若干十七歳の男の子が、突然当主となった事でその噂は一気に広がり、いらぬ噂まで流れ始めていた。
(ねぇ、アシュレイ領って、三年前に壊滅した領地だろ?何でそんな所の当主様がこんな所に居るのよ?)
(私だってわからないわよ。ただ、相当やばいって話しよ?領地を立て直すために、数少ない領民から多額の税を取っているとか…………)
(うわ~、最低ね。相手にしない方がいいわね)
(うん、かかわらないでおこう)
あれやこれやと、要らない言葉ばかり並べ白い目でルークを見る生徒達。
「お前達うるさいぞ、静かにしろ。では、アシュレイ君は一番後ろの空いている席を使ってください」
「はい」
ルークは窓際の一番後ろの席へと座る。そして、隣をチラッと見ると女子生徒と目が合うが、すぐに向こうが目を逸らす。そのままルークは女子生徒の机を見るのだが、その机には悪口などが書かれており、ボロボロの教科書が置かれていた。
「俺の名前はルーク・アシュレイ。よろしく!」
「………………」
ルークは女子生徒に挨拶をするが、女子生徒は何の反応も見せない。
(こりゃ、中々めんどくさい所に来てしまったもんだ)
と、ルークは思いつつも視線を外へと向ける。
「さて、それでは授業を始める。アシュレイ君はまだ教科書が届いていないので、隣のリナさんに見せてもらいなさい。リナさんも、アシュレイ君に教科書を見せてあげてください」
「はい」
(リナと言うのか。何だか少々訳ありなんだな…………)
リナは机を動かし、ルークの机と並ばせ教科書を中央に置く。しかし、その教科書も机と同じで落書き…………というよりも悪口が書かれていたり、所々破れていたり、とても見れたものではなかった。
「とても教科書とはほど遠い物だけどどうぞ…………」
「……………酷いな。どうしたんだこれは?」
「別に…………」
「別にって…………」
「あんたには関係ない事よ」
「先生には相談したのか?」
リナは一瞬、下を向き唇を噛むしぐさを見せた。そして、
「相談?何の事?」
「何の事って…………。これ、あきらかに嫌がらせされているだろ?」
「されてないわ、そんなこと」
「いや、しかし…………」
「あんまりしつこいと、大声出すわよ」
「うっ…………。わかった、これ以上は聞かない事にする」
「………………」
(この学校はいったいどうなっている?本当に機能しているのか…………?)




