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無属性で男爵だと笑われた俺、万物を変幻自在にする『物質変化』で気づけば皇帝になっていた  作者: 雨のち晴れ
学生編

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帝国の王女

【ザシュッ】


ルークは、拘束されている少女の手足を縛っている縄を切り、その後、口の布を外した。


「悪かったな…………。怖かっただろ?」


「……………へ?」


少女の口から間抜けな声が出た。てっきり自分は王国領土に侵入し、スパイだと思われ、このまま殺されるものかと思っていたが、なぜか拘束を解かれ、目の前に居る青年に助けられたのだから……。


「あの…………?」


「何だ?何処か痛むところでもあるか?」


「いえ、そうじゃなくて…………。私を殺さないの?」


ルークは目の前にいるマリー達よりも少し年上の少女を見て言った。


「なぜ殺す必要がある?」


「なぜって…………。さっきあなたが『直々に殺す』と……。それに、私は帝国の民ですよ?あなた方の敵になる者です。それを殺さないとは…………」


「何か勘違いしてるみたいだから言うけど、俺に子供を殺す趣味は無い。それに、あーでも言わないと、あいつらは出て行かなかったからな」


「………………」


あっけに取られて、開いた口が塞がらない少女。そして、ルークはすぐに外で待っているマリー達を小屋の中へと呼ぶ。


「ルーク兄様、どうかなさいましたか?」


「ん?兄ちゃん、誰だその子?」


マリーとラムザは、共にルークの後ろでバカ面をした人物を見た。


「あー、どうやらこの村に迷い込んだ帝国の女の子だ」


「「ふーん…………」」


二人とも、少女が帝国の民であると聞いても興味を示さない。所詮は自分達と変わらない子供。二人とも、この子が直接侵攻に対して関わりがあるとは思っても居なかった。もし囚われていたのが帝国兵だとしたら、状況は変わっていたのかもしれない。


「んで、この子どうすんの?」


「とりあえず今日は俺達で保護しようと思うんだが…………」


「ルーク兄様がそれでいいなら私は構わないけど…………」


「俺もそれでいいぜ」


「じゃ、決まりだな!今日はもう遅いし、俺達の借家に泊まって、明日の早朝に送っていく。それでいいか?」


「はい…………」


未だに現実に戻れないでいた少女。殺されるどころか、帝国に返すという選択をする王国の人間。本当に信用して良いものかと考える。そして、


「お兄さんの名前は…………?」


「俺か?俺は、ルーク・アシュレイ。一応、この領地の当主をしている。そして、この子が妹のマリー・アシュレイ。そして、こっちの男の子がラムザ・アシュレイ。君の名は?」


「アンナです…………」


「そうか。じゃアンナ、王国の領地でくつろげないとは思うが、借家は俺達兄弟しか立ち入りは出来ないから安心してくれ」


「わかりました、ありがとうございます。このお礼はいずれ必ず…………」


「礼なんていらない。結局は、俺達は敵同士だからな」


「そ、そうですね…………」


そして時間は過ぎ、不安と緊張が押し寄せる中、アンナは出された食事を食べながら色々な話をした。アンナ自身も、先日アシュレイ領が侵攻をうけたことは知っている。自身の目で、今回の侵攻が王国にとってどれほどの被害が及んだかを確認するために、単独で潜入したからだ。けして、迷い込んだのではない。


「さてアンナ、今日はこの部屋で寝てくれ。流石に子供と言えど、完全には信用しきれていないのでな…………。俺達は、こっちの部屋で寝るから、何かあったら遠慮せずに言うと良い」


「いえ、それはごもっともだと思います。何から何までありがとうございます」


「うむ。では、明日の早朝に来る」


そう言って、ルーク達は部屋に戻り眠りに入った。翌日、予定通り早朝に村を出て、アンナを帝国領へと送り出す。そして、丁度四人が王国と帝国の境目の森の中に入ったところで、


「本当にこんな所で平気なのか?」


「はい、問題ありません」


「そうか…………。アンナ、最後に一つ言っておく!今後二度とこのような事をするな。次は、助かる保証はない…………確実に殺されるぞ…………」


「そうですね、わかっています…………」


「わかってるならいい。では、俺達はここで失礼する………帝国兵が来たら面倒なのでな…………」


「あっ…………!」


「ん?何だ忘れ物か?」


「三人とも手を出してください」


「手を?何をする気だ?」


「今後この先、平和に過ごせるようにと。帝国ならではのおまじないです」


アンナがそう言うと、三人はそれぞれ手を差し出す。そして、アンナは三人の手に魔法をかける。これと言って何の変化もなく、アンナが終わったと告げると三人は別れを告げ村の方へと歩いて行った。そして、アンナも森の中へと消えていく。そして、アンナが森の中を歩くこと三十分、帝国兵がアンナを見つける。


「アンナ様!」


「あら?どうかしたの?」


「『どうかしたの?』じゃありませんよ!もう、皇帝陛下がご心配なさって大変だったんですよ?」


「ごめんなさいね。私なら平気よ!」


「怪我はなされておりませんか?」


「全然!この通りピンピンしてるわよ?」


「それなら良いのですが、いったい今まで何処におられたのですか!今後、勝手に居なくならないでくださいよ!何てったって、アンナ様はこの国の第一王女なのですから…………。その自覚をもう少しお持ちになってください…………」


「注文が多いわね…………はいはい、わかりました」


「皆が心配しています。帰りますよ!それと、ソフィア様が相当お怒りの様子なので覚悟しておいてください!」


「あははははっ…………それはまずいわね…………」


「ご自身のせいですからね!私達は知りませんよ!」


こうして、ミリア達も知る由もない、もう一つの出来事は終わり、現実へと舞台は戻る。

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