魔法
ギャグボンバーとの戦いで坂本たちを失った一行は、重い足取りで森を進んでいた。誰も口を開かない。気づけば、空はいつもより暗く、まるで一行の心情を映しているかのようだった。
「……このままじゃ、また同じことになる」
長介が、静寂を破った。
「俺たち、魔法学園の生徒なんだから……四大魔法、使えるはずだよな」
クラスメートたちは、ハッとした表情を見せた。これまでの混乱の中で、誰も「魔法」という、自分たちが本来持っている力のことを思い出していなかった。
「そ、そうだ!俺、火魔法、得意だったんだ!」
火属性を得意とするクラスメートが、前方の茂みに向かって、炎の球を放った。
「ファイアボール!」
炎の球は、茂みの奥にいた小型のモンスター(雑魚スライムのようなもの)に直撃した。
「……あ、れ?」
炎は、モンスターに触れた瞬間、ふわりと消えてしまった。モンスターは、何が起きたのかわからない様子で、こちらを見ている。
「な、なんで……!?」
「俺も!水魔法、使えるはず!」
別のクラスメートが、水流をモンスターに向けて放つ。同じように、水流はモンスターに触れた瞬間、霧のように消散した。
風魔法、土魔法も試したが、結果は同じだった。どの魔法も、モンスターに「届く」ことはあっても、何の効果も発揮しない。
「……これまでの戦い、全部、魔法じゃなくて……」
長介は、これまでの戦いを思い返した。ギャグボンバーには「口プロレス」、クーデターミミックには「欲のなさ」――確かに、誰も、魔法を使っていなかった。
「……魔法、効かないのか……この世界……」
クラスメートたちの間に、絶望感が広がる。これまで学園で積み上げてきた「強さ」の基準が、この世界では、完全に無効化されていた。
「……俺たち、どうすればいいんだ……」
そのとき、森の奥から、声が聞こえた。
『……ほっほっほ。魔法が効かんと、嘆いておるのか』
一行が振り返ると、そこには、小さな老人が立っていた。銀色の光沢ある衣装を纏い、首元には赤と金色の装飾が施されている。頭には金色がかった、兜のようなヘルメットのようなものを被っており、何より目を引くのは、その眉だった――まるで筆で力強く描いたような、異様に濃く太い眉が、顔の上半分を占領していた。
「……だ、誰だ!?」
『……この森の奥に、お笑い連邦大学魔法研究所という場所がある。来るがよい。お前たちに、必要なものを、教えてやろう』




