表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/21

リアクション大魔王「出河」との戦い

市街地を抜けると、一行の前に、巨大な魔王城が聳え立っていた。城門は既に開いており、まるで一行を歓迎するかのようだった。


城の最奥、謁見の間には、巨大な体躯を持つオーガ型の魔王が、王座に座っていた。全身は鋼のような筋肉で覆われ、頭には二本の角。その姿は、これまで戦ってきたどのモンスターよりも、明らかに「最終ボス」の風格を持っていた。


『……ついに、ここまで来たか』


魔王の声は、地を揺るがすほどの重さだった。ステータス画面を確認する。


```

名前:リアクション大魔王「出河」

種族:オーガ

能力:攻撃されるたびに

「熱っ!」「痛っ!」「でかっ!」

と大騒ぎする

観客人気だけは高い

```


「……『観客人気だけは高い』って、観客って誰だよ……」


長介がつぶやくと、謁見の間の壁際に、無数の小さなモンスターたちが集まっていることに気づいた。魔王軍の兵士たちが、まるで観客席のように、両側にずらりと並んでいる。


『フハハハハ!勇者一行よ!ついに、お前たちは、この出河と対峙することになった!』


魔王軍の兵士たちから、ざわめきが起こる。


『出河様だ!』

『今日も期待できそうだぞ!』

『前回の反応、最高だったよな!』


「……なんか、お祭りみたいな空気になってないか?」


長介が困惑していると、魔王は立ち上がり、巨大な拳を構えた。


『さあ、来るがいい!この出河、お前たちの攻撃、全て受け止めてやろう!』


クラスメートたちは、これまでの戦いで手に入れた武器や、笑界で身につけたスキルを総動員し、魔王に向かって攻撃を開始した。


「いくぞ!」


一人のクラスメートが、剣で魔王の腕を斬りつける。


『うおおおおっ!!痛っ!!!』


魔王は、大声で叫び、その場で飛び跳ねた。観客のモンスターたちが、一斉に歓声を上げる。


『出たー!「痛っ!」のリアクション!』

『今日も全力だな!』


「……今、すごい大袈裟に反応してたよな?」


別のクラスメートが、火属性の攻撃を放つ。


『うわあああ!熱っ!熱い熱い熱い!!!』


魔王は、体を激しく震わせながら、転げ回った。


『出河様の「熱っ!」、相変わらず最高だぜ!』

『あの転がり方、毎回違うのがすごい!』


「……これ、本当に戦ってるのか……?」


長介は、困惑しながらも、魔王の攻撃を観察した。魔王自身も、時折、クラスメートたちに向かって攻撃を仕掛けてくる。その一撃は重く、実際にダメージを受けたクラスメートは、何人か負傷していた。


『さあ、俺の攻撃も受けてみろ!』


魔王が、大きな拳をクラスメートに向かって振り下ろす。


「うわっ!」


クラスメートが、ギリギリで回避する。拳が地面に叩きつけられ、衝撃で地面が割れた。


「……攻撃自体は、本物だ。リアクションは大げさだけど、攻撃力は本物っぽいな」


長介は、これまでの戦いとは異なる感覚を覚えていた。これまでのモンスターは、何らかの「弱点」や「論理的な隙」を持っていたが、出河には、それが見当たらない。リアクションは大袈裟だが、攻撃そのものは正確で、強力だった。


「……これ、口プロレスで何とかなるのか?」


長介は、出河に向かって話しかけてみた。


「お前、そのリアクション、わざとやってるのか?」


『フッ……どうした、勇者よ。俺のリアクションに、何か文句があるのか?』


「いや、文句はないけど。痛そうにしてるけど、本当に痛いのか?」


『当然だ!痛いものは、痛い!』


『でかっ!』


魔王は、長介が放った小さな攻撃(これまでの戦闘で拾った小石を投げただけ)に対して、再び大袈裟に叫んだ。観客が再び沸く。


『出河様!小石にまで「でかっ!」だって!』

『さすがだ!』


長介は、ふと、考えた。これまでのモンスターは、それぞれ何らかの「歪み」を持っていた。誇張、反復、自虐、誤解、ギャップ、風刺、矛盾――それぞれの「お笑いの要素」が、弱点として機能していた。


しかし、出河の「リアクション」は、誇張ではあるものの、それ自体が「攻撃を受けた」という事実に対する、極めて正直な反応でもあった。痛いものは痛い、熱いものは熱い、でかいものはでかい――出河は、ただ、その感覚を、大きく表現しているだけだった。


「……これ、弱点とか、ないんじゃないか?」


長介は、これまでとは違う結論に達した。


「みんな、出河には、口プロレスは効かないと思う」


「じゃあ、どうするんだ!?」


「……普通に、戦うしかない」


クラスメートたちは、これまでの旅で身につけた連携と、それぞれの武器を駆使し、出河との激戦を繰り広げた。


『うおおおお!痛い!痛い!でも、まだまだ!』


出河は、大袈裟なリアクションを見せながらも、決して諦めることなく、攻撃を続けてくる。観客のモンスターたちは、戦況に合わせて、歓声を上げたり、息を呑んだりしていた。


長い戦いの末、ついに、出河は膝をついた。


『……ぐ……ここまで、やるとは……』


『出河様!最後まで、リアクション、忘れないでください!』


観客から、声が上がる。


ところが、その激戦の最中――魔王城へ向かう道中に通過した、笑気濃度が急激に高まる地帯での出来事が、ここで尾を引くことになる。


魔王城へ向かう道中、一行は、笑気濃度が急激に高まる地帯を通過していた。


「……この辺り、笑気、めちゃくちゃ濃いな……」


長介が警戒する中、根本・川島・田辺の三人も、明らかに、様子がおかしくなっていた。


「……あれ、なんか……みんな、面白いこと言ってる気がする……」


根本が、ふらふらと言った。


「……お前も、なんか、面白いこと、言ってる気がする……」


川島が、同じように、ふらふらと答えた。


田辺は、二人を見て、慌てた。


「……ちょっと、二人とも!しっかりして!」


「……田辺、お前の、その慌て方、なんか、面白いな……」


根本が、笑いそうになる。


「……いや、笑うところじゃない!俺は、今、進行役として、お前らを止めようとしてるんだ!」


「……その『進行役として』っていう言い方、なんか、ツボに入る……」


川島も、笑いを堪えている。


田辺は、青ざめた。


「……お、おい……二人とも、ボケになってる……俺、ツッコミ、できないぞ……」


長介が、駆け寄った。


「橘!田辺!大丈夫か!」


田辺は、半泣きになっていた。


「……長介!二人が、両方、ボケになっちゃって……俺一人じゃ、ツッコミきれない……!誰か、代わりに、ツッコんでくれ……!」


「お、俺が!?」


「いや、長介は、口プロレス担当だから、テイストが違う……!誰か、トリオの『ツッコミ』、できる人……!」


クラスメートたちは、慌てて周囲を見渡した。


「……お、落ち着け、田辺!深呼吸だ!」


長介が、田辺の肩を叩いた。


「……長介……俺、本当に、困ってるんだ……二人が、何言っても、ボケに聞こえて……俺がツッコまないと、ループするんだ……このままじゃ、永遠に終わらない……」


田辺の目には、本当に、涙が浮かんでいた。


「……これ、笑い事じゃないんだ……でも、笑い事に、しないと、いけないのに……俺、それが、できない……!」


長介は、その様子を見て、ふと、気づいた。


「……田辺、お前、今、自分の状況を、ちゃんと『説明』してるよな?」


「……は……?」


「それ、立派な『進行』だよ。お前、ちゃんと、役割、果たしてる」


田辺は、しばらく、長介を見つめた。


「……そう、なのか……?」


「うん。お前が『困ってる』って言ったこと自体が、今の状況を、みんなに伝えてくれてる」


田辺は、深呼吸をした。


「……みんな!根本と川島が、二人ともボケになってる!誰か、代わりにツッコミ、頼む!」


クラスメートの一人(風属性の生徒)が、慌てて前に出た。


「……えっと……お前ら、二人とも、何、笑ってるんだよ!」


根本と川島は、その声に、ハッとした。


「……あ……ツッコミ、来た……」


「……俺たち、ツッコまれた……」


二人の様子が、少しずつ、落ち着いていく。


```

トリオ「根本・川島・田辺」:危機回避(代理ツッコミにより安定)

備考:進行役の機能不全を、長介の介入と外部協力で補完

```


橘(コンビを失った後、トリオのサポートに回っていた)が、ほっとしたように言った。


「……良かった……二人とも、笑い死にする寸前だった……」


田辺は、まだ、少し涙目だった。


「……俺、トリオの中で、一番、地味な役割だと思ってたんだけど……今、改めて、進行役の大切さ、わかった……」


長介は、田辺の肩を、もう一度叩いた。


「……お前がいないと、本当に、誰も止まらないんだな」


「……そうなんだよ……わかってくれ……」


田辺は、半笑い、半泣きのまま、頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ