リアクション大魔王「出河」との戦い
市街地を抜けると、一行の前に、巨大な魔王城が聳え立っていた。城門は既に開いており、まるで一行を歓迎するかのようだった。
城の最奥、謁見の間には、巨大な体躯を持つオーガ型の魔王が、王座に座っていた。全身は鋼のような筋肉で覆われ、頭には二本の角。その姿は、これまで戦ってきたどのモンスターよりも、明らかに「最終ボス」の風格を持っていた。
『……ついに、ここまで来たか』
魔王の声は、地を揺るがすほどの重さだった。ステータス画面を確認する。
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名前:リアクション大魔王「出河」
種族:オーガ
能力:攻撃されるたびに
「熱っ!」「痛っ!」「でかっ!」
と大騒ぎする
観客人気だけは高い
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「……『観客人気だけは高い』って、観客って誰だよ……」
長介がつぶやくと、謁見の間の壁際に、無数の小さなモンスターたちが集まっていることに気づいた。魔王軍の兵士たちが、まるで観客席のように、両側にずらりと並んでいる。
『フハハハハ!勇者一行よ!ついに、お前たちは、この出河と対峙することになった!』
魔王軍の兵士たちから、ざわめきが起こる。
『出河様だ!』
『今日も期待できそうだぞ!』
『前回の反応、最高だったよな!』
「……なんか、お祭りみたいな空気になってないか?」
長介が困惑していると、魔王は立ち上がり、巨大な拳を構えた。
『さあ、来るがいい!この出河、お前たちの攻撃、全て受け止めてやろう!』
クラスメートたちは、これまでの戦いで手に入れた武器や、笑界で身につけたスキルを総動員し、魔王に向かって攻撃を開始した。
「いくぞ!」
一人のクラスメートが、剣で魔王の腕を斬りつける。
『うおおおおっ!!痛っ!!!』
魔王は、大声で叫び、その場で飛び跳ねた。観客のモンスターたちが、一斉に歓声を上げる。
『出たー!「痛っ!」のリアクション!』
『今日も全力だな!』
「……今、すごい大袈裟に反応してたよな?」
別のクラスメートが、火属性の攻撃を放つ。
『うわあああ!熱っ!熱い熱い熱い!!!』
魔王は、体を激しく震わせながら、転げ回った。
『出河様の「熱っ!」、相変わらず最高だぜ!』
『あの転がり方、毎回違うのがすごい!』
「……これ、本当に戦ってるのか……?」
長介は、困惑しながらも、魔王の攻撃を観察した。魔王自身も、時折、クラスメートたちに向かって攻撃を仕掛けてくる。その一撃は重く、実際にダメージを受けたクラスメートは、何人か負傷していた。
『さあ、俺の攻撃も受けてみろ!』
魔王が、大きな拳をクラスメートに向かって振り下ろす。
「うわっ!」
クラスメートが、ギリギリで回避する。拳が地面に叩きつけられ、衝撃で地面が割れた。
「……攻撃自体は、本物だ。リアクションは大げさだけど、攻撃力は本物っぽいな」
長介は、これまでの戦いとは異なる感覚を覚えていた。これまでのモンスターは、何らかの「弱点」や「論理的な隙」を持っていたが、出河には、それが見当たらない。リアクションは大袈裟だが、攻撃そのものは正確で、強力だった。
「……これ、口プロレスで何とかなるのか?」
長介は、出河に向かって話しかけてみた。
「お前、そのリアクション、わざとやってるのか?」
『フッ……どうした、勇者よ。俺のリアクションに、何か文句があるのか?』
「いや、文句はないけど。痛そうにしてるけど、本当に痛いのか?」
『当然だ!痛いものは、痛い!』
『でかっ!』
魔王は、長介が放った小さな攻撃(これまでの戦闘で拾った小石を投げただけ)に対して、再び大袈裟に叫んだ。観客が再び沸く。
『出河様!小石にまで「でかっ!」だって!』
『さすがだ!』
長介は、ふと、考えた。これまでのモンスターは、それぞれ何らかの「歪み」を持っていた。誇張、反復、自虐、誤解、ギャップ、風刺、矛盾――それぞれの「お笑いの要素」が、弱点として機能していた。
しかし、出河の「リアクション」は、誇張ではあるものの、それ自体が「攻撃を受けた」という事実に対する、極めて正直な反応でもあった。痛いものは痛い、熱いものは熱い、でかいものはでかい――出河は、ただ、その感覚を、大きく表現しているだけだった。
「……これ、弱点とか、ないんじゃないか?」
長介は、これまでとは違う結論に達した。
「みんな、出河には、口プロレスは効かないと思う」
「じゃあ、どうするんだ!?」
「……普通に、戦うしかない」
クラスメートたちは、これまでの旅で身につけた連携と、それぞれの武器を駆使し、出河との激戦を繰り広げた。
『うおおおお!痛い!痛い!でも、まだまだ!』
出河は、大袈裟なリアクションを見せながらも、決して諦めることなく、攻撃を続けてくる。観客のモンスターたちは、戦況に合わせて、歓声を上げたり、息を呑んだりしていた。
長い戦いの末、ついに、出河は膝をついた。
『……ぐ……ここまで、やるとは……』
『出河様!最後まで、リアクション、忘れないでください!』
観客から、声が上がる。
ところが、その激戦の最中――魔王城へ向かう道中に通過した、笑気濃度が急激に高まる地帯での出来事が、ここで尾を引くことになる。
魔王城へ向かう道中、一行は、笑気濃度が急激に高まる地帯を通過していた。
「……この辺り、笑気、めちゃくちゃ濃いな……」
長介が警戒する中、根本・川島・田辺の三人も、明らかに、様子がおかしくなっていた。
「……あれ、なんか……みんな、面白いこと言ってる気がする……」
根本が、ふらふらと言った。
「……お前も、なんか、面白いこと、言ってる気がする……」
川島が、同じように、ふらふらと答えた。
田辺は、二人を見て、慌てた。
「……ちょっと、二人とも!しっかりして!」
「……田辺、お前の、その慌て方、なんか、面白いな……」
根本が、笑いそうになる。
「……いや、笑うところじゃない!俺は、今、進行役として、お前らを止めようとしてるんだ!」
「……その『進行役として』っていう言い方、なんか、ツボに入る……」
川島も、笑いを堪えている。
田辺は、青ざめた。
「……お、おい……二人とも、ボケになってる……俺、ツッコミ、できないぞ……」
長介が、駆け寄った。
「橘!田辺!大丈夫か!」
田辺は、半泣きになっていた。
「……長介!二人が、両方、ボケになっちゃって……俺一人じゃ、ツッコミきれない……!誰か、代わりに、ツッコんでくれ……!」
「お、俺が!?」
「いや、長介は、口プロレス担当だから、テイストが違う……!誰か、トリオの『ツッコミ』、できる人……!」
クラスメートたちは、慌てて周囲を見渡した。
「……お、落ち着け、田辺!深呼吸だ!」
長介が、田辺の肩を叩いた。
「……長介……俺、本当に、困ってるんだ……二人が、何言っても、ボケに聞こえて……俺がツッコまないと、ループするんだ……このままじゃ、永遠に終わらない……」
田辺の目には、本当に、涙が浮かんでいた。
「……これ、笑い事じゃないんだ……でも、笑い事に、しないと、いけないのに……俺、それが、できない……!」
長介は、その様子を見て、ふと、気づいた。
「……田辺、お前、今、自分の状況を、ちゃんと『説明』してるよな?」
「……は……?」
「それ、立派な『進行』だよ。お前、ちゃんと、役割、果たしてる」
田辺は、しばらく、長介を見つめた。
「……そう、なのか……?」
「うん。お前が『困ってる』って言ったこと自体が、今の状況を、みんなに伝えてくれてる」
田辺は、深呼吸をした。
「……みんな!根本と川島が、二人ともボケになってる!誰か、代わりにツッコミ、頼む!」
クラスメートの一人(風属性の生徒)が、慌てて前に出た。
「……えっと……お前ら、二人とも、何、笑ってるんだよ!」
根本と川島は、その声に、ハッとした。
「……あ……ツッコミ、来た……」
「……俺たち、ツッコまれた……」
二人の様子が、少しずつ、落ち着いていく。
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トリオ「根本・川島・田辺」:危機回避(代理ツッコミにより安定)
備考:進行役の機能不全を、長介の介入と外部協力で補完
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橘(コンビを失った後、トリオのサポートに回っていた)が、ほっとしたように言った。
「……良かった……二人とも、笑い死にする寸前だった……」
田辺は、まだ、少し涙目だった。
「……俺、トリオの中で、一番、地味な役割だと思ってたんだけど……今、改めて、進行役の大切さ、わかった……」
長介は、田辺の肩を、もう一度叩いた。
「……お前がいないと、本当に、誰も止まらないんだな」
「……そうなんだよ……わかってくれ……」
田辺は、半笑い、半泣きのまま、頷いた。




