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魔王軍幹部 オマージュドラゴンとの戦い

洞窟を抜けると、一行は溶岩が流れる火山地帯に出た。岩場の上には、巨大な竜が佇んでいる。鱗は黒く、背中には鋭い棘が並び、口からは煙が漏れている。


「うわ、めちゃくちゃ強そうじゃないか!?」


クラスメートたちが身構える。ステータス画面を確認する。


```

名前:オマージュドラゴン

種別:パロディ系モンスター

特徴:他作品の有名モンスターに似ているが微妙に違う

例:

火を吐きそうで吐かない

飛びそうで飛ばない

```


「……パロディ系?」


長介が読み上げると、ドラゴンが大きく口を開けた。


『グオオオオオ……!』


「来るぞ!火だ!」


クラスメートたちが慌てて身構える。ドラゴンの口の中で、炎のような赤い光が膨らんでいく。


「みんな、構えろ!」


『……グ、ゴホッ』


ドラゴンは、咳をした。口の中の赤い光は、ただの咳と共に小さく霧散し、何も起こらなかった。


「……あれ?」


『……ゴホッ、ゴホッ……すみません、ちょっと喉が……』


一行は、拍子抜けした顔で互いを見合った。


「……火、吐かなかったな」


長介は、ステータス画面の「火を吐きそうで吐かない」という記述を、改めて確認した。


「……これ、本当にその通りなんだ」


ドラゴンは、続けて大きく翼を広げた。


『さあ、空から攻撃して――』


ドラゴンは翼を広げたまま、力強くジャンプした。だが、体は数十センチほど浮き上がっただけで、すぐに地面に戻ってきてしまった。


『ぐ、ぐぬ……重力に……勝てない……』


「……飛ばなかったな」


「これ、本当に『パロディ系』なんだな……見た目はめちゃくちゃ強そうなのに……」


クラスメートたちは、緊張が一気に緩んでいくのを感じた。


『……笑うな!俺だって、本当はもっと、すごいことができるんだ!』


ドラゴンは、悔しそうに地面を踏みつけた。


「いや、別に笑ってないけど」


長介は冷静に答えた。


『……今、絶対、内心で笑ってただろ!』


「笑ってはいないけど…正直に言うと、『見た目から想像してたことと、全然違うことが起きてる』とは思った」


『うぐっ……』


ドラゴンは、さらに何か技を出そうと、口を大きく開けたり、翼を広げたり、尻尾を振り回したりした。しかし、どれも「いかにもすごい技が出そう」な予兆だけで、結局何も起こらない。


『くっ……グオオオオ……(なんかすごい技、出そう……)』


「……」


『……グルルル……(これは…なんか…来るぞ…)』


「……」


一行は、もはや身構えるのをやめ、ただドラゴンの動きを見守っていた。


『………………』


ドラゴンは、しばらく沈黙した後、肩を落とした。


『……すみません……俺、結局、何もできないんです……』


「……あ、自覚あるんだ」


『見た目だけは、結構頑張って怖くしてるつもりなんですけど……いつも、こうなっちゃうんです……』


長介は、少し考えてから言った。


「いや、お前、別に弱くないと思うけど」


『……え?』


「だって、ここまで、誰にも怪我させてないし。むしろ、すごく安全なドラゴンだと思う」


『……そう、ですかね……』


「うん。なんていうか……お前と戦って、誰も死ななかった。それって、結構すごいことだと思うよ」


ドラゴンは、しばらく長介を見つめていた。


『……ありがとうございます……そんな風に言われたの、初めてです……』


ドラゴンは、ゆっくりと、岩場の影に戻っていった。


```

オマージュドラゴン:戦闘終了(自主撤退)

備考:期待値調整により精神的ダメージ無効化

```


「……今回も、誰も傷つかなかったな」


「長介、お前さ……なんか、敵を『説得』するの、得意になってきてないか?」


「説得っていうか……普通に、思ったこと言ってるだけなんだけど」


クラスメートの川村が、ふと笑った。


「……長介、変わったよね」


「変わった?」


「うん。前は、誰の話にも笑わなくて、ちょっと怖い感じだったけど……今は、なんか、誰の話もちゃんと聞いてる感じがする」


長介は、少し驚いた表情を見せた。


「……そうかな」


「うん。この世界に来てから、長介、ずっと誰かのために考えてるじゃん」


ドラゴンが「飛びそうで飛ばない」を繰り返す中、橘と宮下のコンビが、ぼそっと会話していた。


「……あれ、絶対、本人も気まずいよな」

「うん。俺、見てて、ちょっと辛くなってきた」

「お前、敵に同情するのか」

「いや、なんか、わかるんだよ。俺も、決めポーズしてスベったことあるし」

「お前、いつそんな経験したんだよ」

「研究所での、初日」

「ああ……あれは、見てたわ」


二人の小さな掛け合いに、近くにいたクラスメートが、思わず噴き出した。


長介は、何も言わず、火山地帯の奥を見つめた。そこには、これまでとは比べ物にならないほどの、巨大な気配が感じられた。


「……次は、四天王、らしい」


一行は、気を引き締めて、旅を続けた。


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