魔王軍幹部 リピートゴーレムとの戦い
荒野を抜けると、一行は石造りの遺跡群に到着した。古い石柱が等間隔に並び、その奥に、巨大な石の人型――ゴーレムが立っていた。
『……侵入者……確認……』
ゴーレムが、ゆっくりと振り向く。ステータス画面を確認する。
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名前:リピートゴーレム
種別:反復系モンスター
能力:同じ攻撃しかできない
ただし100回目になると威力100倍
初心者キラー
```
「同じ攻撃しか…できない?」
「でも、100回目で威力100倍って…」
そのとき、ゴーレムが右拳を振り上げ、まっすぐに長介たちへ向かって振り下ろした。
『パンチ……1回目』
「うわっ!」
一行は飛び退いて回避する。拳は地面に叩きつけられ、大きな衝撃が走ったが、威力自体はそれほど大きくない。
『パンチ……2回目』
ゴーレムは、まったく同じ動作で、同じ拳を振り下ろした。
「……同じだ。本当に同じ動きしかしてこない」
『パンチ……3回目』
「これ、避けるの簡単じゃないか?」
クラスメートの一人が言うと、長介はステータス画面の「初心者キラー」という文字を見つめた。
「……待て。これ、わざと簡単に見せてるんじゃないか?」
『パンチ……4回目』
『パンチ……5回目』
ゴーレムは、機械的に同じ攻撃を繰り返す。回避するのは難しくない。むしろ、退屈な作業のようにさえ感じられる。
「これ、何回目で威力100倍になるんだったか……」
「100回目、だよな」
「……今、何回目だ?」
『パンチ……8回目』
長介は、嫌な予感を覚えた。
「みんな、これ、回避を続けてるだけだと、100回目が来るまで戦い続けることになるよな」
「……あ」
「100回目の攻撃、威力100倍ってことは……俺たちの今の力じゃ、絶対に防げないってことだよな」
クラスメートたちの顔から、血の気が引いた。
『パンチ……12回目』
「ど、どうする!?今すぐ逃げるか!?」
「逃げても、追いかけてきたら同じことだろ……」
長介は、必死に考えた。ゴーレムの攻撃パターンを変えることはできない。ならば――。
「……攻撃回数を、操作できないか?」
「どういうこと?」
「ゴーレムが『パンチ1回目』『パンチ2回目』って、カウントしながら攻撃してるんだろ?だったら――」
長介は、ゴーレムの動きを観察した。一回の攻撃から次の攻撃までには、わずかなインターバルがある。その間に、ゴーレムが「カウントを認識するタイミング」があるはずだ。
『パンチ……15回目』
「みんな、聞いてくれ。このゴーレムの攻撃、100回目に威力100倍になるなら――99回目までに、総攻撃を仕掛けて倒せばいい」
「で、でも、今のところダメージ全然与えられてないぞ!」
「だから、回避だけじゃなく、攻撃の合間に、少しずつダメージを与えていく。ゴーレムの『同じ攻撃しかできない』っていう弱点を、逆に利用するんだ」
『パンチ……20回目』
長介は、口プロレスのスキルも併用することにした。
「お前、本当にその一発しかできないのか?」
『……パンチ……21回目』
「つまんないな、その攻撃。もう何回も見たよ」
『……パンチ……22回目』
ゴーレムは反応しない。「反復系」モンスターであるリピートゴーレムには、感情的な揺らぎが存在しないようだった。口プロレスは、相手に「動揺」や「焦り」を生じさせることで効果を発揮するスキルだが、リピートゴーレムには、そもそも「揺らぐ自我」が存在しない。
「……これ、口プロレス、効かないタイプか」
「じゃあ、地道に削るしかないってことか」
クラスメートたちは、ゴーレムの「パンチ」のインターバルの間に、武器(道中で手に入れた木の棒や石など)で少しずつ攻撃を仕掛けていく。攻撃自体は大したダメージにならないが、回数を重ねるごとに、ゴーレムの体に小さなヒビが増えていく。
『パンチ……50回目』
「半分まで来た……!」
『パンチ……70回目』
「あと30回……!」
ゴーレムのヒビは、徐々に大きくなっていく。長介たちは、リズムを合わせて攻撃を続けた。
『パンチ……95回目』
「ここからが勝負だ!絶対に99回目までに決着をつけるぞ!」
『パンチ……96回目』
『パンチ……97回目』
『パンチ……98回目』
「みんな、全力で!」
全員が、ありとあらゆる武器でゴーレムに攻撃を集中させる。ヒビは亀裂となり、ゴーレムの体に大きな割れ目が広がっていく。
『パンチ……99回目』
「ここだ!!!」
全員の攻撃が一斉にゴーレムに直撃した瞬間、ゴーレムの体は大きな音を立てて崩れ落ちた。
『パンチ……100回……』
最後のカウントは、最後まで発声されることなく、ゴーレムは粉々に砕け散った。
一行は、その場にしばらく座り込んだ。
「……勝った……のか……?」
「100回目、ギリギリ防いだ……」
ステータス画面に記録が表示される。
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リピートゴーレム:撃破
備考:99回目の攻撃で集中打撃、100回目の発生を阻止
```
「……『初心者キラー』っていうのも、わかるな。最初、めちゃくちゃ簡単な敵だと思ってたし」
「ああいうの、油断してたら絶対やられてたよな」
長介は、息を整えながら言った。
「……この世界、見た目とか、最初の印象だけで判断したら、絶対やられる」
クラスメートたちは、深く頷いた。
ゴーレムの攻撃インターバルに合わせて、全員で武器を振るう中、根本・川島・田辺の三人が、息の合った掛け声で攻撃のタイミングを揃えていた。
「いくぞ、せーの!」
「タイミング、合わせるの得意なんで!」
「俺たち、漫談で『せーの』のタイミング、毎日練習してるからな!」
三人の攻撃は、他のクラスメートより、わずかに精度が高かった。
一行はしばらく休息を取り、再び旅を続けることにした。次に待っているのは、これまでとは異なるタイプの強敵だった。




