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あなたの知らないお笑いの世界  作者: 伝説の男前


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10/21

魔王軍幹部 ホラフキワイバーンとの戦い

荒野を進むと、空に巨大な影が現れた。翼を広げたドラゴンのような生物――ワイバーンが、上空を旋回している。


『フハハハハ!見つけたぞ、人間ども!』


ワイバーンは急降下し、一行の前に着地した。全長10メートルほどの、赫々とした体色のワイバーンだ。ステータス画面を確認する。


```

名前:ホラフキワイバーン

種別:誇張系モンスター

特徴:常に話を100倍に盛る

能力:自己申告だけは最強

```


「誇張系……」


長介がつぶやくと、ワイバーンは胸を張って語り始めた。


『俺の名前はホラフキワイバーン!知っているか?俺は昨日、勇者100万人を倒した!』


「……100万人?」


クラスメートたちがざわめく。


『そうだ!そして一昨日は、大陸を3つ消し飛ばした!さらに先週は、太陽を直接殴って軌道を変えた!俺の拳の一撃で、海が割れ、山が消える!』


長介は冷静にワイバーンを観察した。よく見ると、体には目立った傷もなく、特別な武器も持っていない。ただ翼を広げ、声を張っているだけだ。


「……ちょっと聞きたいんだけど」


長介が口を開いた。


「お前、昨日、勇者100万人を倒したって言ったよな?」


『そうだ!100万人だ!』


「この世界に、勇者って何人いるんだ?」


『な……』


ワイバーンが一瞬、固まった。


「普通に考えて、100万人の勇者なんていないだろ。この世界の人口、それより少ないんじょないか?」


『そ、それは……数の話じゃない!気持ちの問題だ!100万人分の強さの勇者を倒したという話だ!』


「じゃあ、実際には何人倒したんだ?」


『…………』


ワイバーンは口をつぐんだ。長介は容赦なく続ける。


「あと、大陸を3つ消し飛ばしたって言ってたけど、俺たちが今いるこの大陸、普通にあるよな?」


『そ、それは別の大陸の話だ!』


「太陽を殴って軌道変えたって話も、もしそれが本当なら、この世界、今ものすごい異常気象になってるはずだよな。でも普通に明るいし、普通に過ごせてるけど」


『うぐ……』


ワイバーンの体が、わずかに縮んだように見えた。誇張系モンスターであるホラフキワイバーンの「能力」は、本来「話を盛ることで相手を威圧し、戦意を喪失させる」というものだった。だが、長介の口プロレスは、その「盛られた話」一つ一つに、冷静に、具体的に、論理的な疑問を投げかけていく。


『う、うるさい!じゃあ、これならどうだ!俺は――』


「ちなみに、自己申告だけは最強なんだろ?実際の強さは?」


『……ぐ』


「さっきから、攻撃してこないし。本当に強いなら、最初から殴ってくればいいのに、なんでずっと喋ってるんだ?」


『そ、それは……』


ワイバーンの声が、徐々に小さくなっていく。誇張によって膨らんでいた「自己イメージ」が、長介の的確な指摘によって、一つずつ萎んでいく。


「お前、本当はそんなに強くないんじゃないか?」


『う……うわあああああ!!』


ワイバーンは、ついに耐えきれず、翼を広げて空高く飛び上がった。


『お、覚えてろよ!次会うときは、もっと…もっとすごい話を用意してくるからな!』


「待ってるよ」


長介が淡々と返すと、ワイバーンは恥ずかしそうに飛び去っていった。


ステータス画面に新たな記録が表示される。


```

ホラフキワイバーン:撃退(直接戦闘なし)

備考:誇張能力、口プロレスにより無効化

```


「……今回も、戦わずに終わったな」


クラスメートの一人が、半笑いで言った。


「長介の、その『冷静に正論で殴る』スキル、本当にやばいな……」


「やばいって、どういう意味で?」


「いい意味で。お前がいなかったら、絶対あのワイバーンの話、信じて怖がってたと思う」


長介は少し苦笑した。


「……俺、ただ普通に疑問に思ったことを言ってるだけなんだけどな」


「それが、この世界だと最強の武器になるんだよ」


ワイバーンが飛び去った後、クラスメートの一人――火属性を持つ生徒が、自分の手を見つめていた。


「……俺、さっき、ワイバーンの話、聞いてて……だんだん、頭に血が上ってきたんだけど……長介が冷静に指摘してくのを見てたら……逆に、冷静になれた」


```

新スキル開放:火属性・笑いのツボ「誇張を見破る炎」

備考:相手の話の「盛り」を、感情的にならず、的確に指摘する力

```


「……火属性なのに、冷静になる方が、効果あるのか」


「……むしろ、誇張に対して『カッとなって反論する』んじゃなくて、『冷静に、燃え上がる嘘を、一つずつ消していく』感じだったな」


おっさーが言っていた「お前のままでいい」という言葉と同時に、相手の「盛り」を一つずつ、丁寧に消していく――それもまた、一種の「火」の使い方だった。


一行は、荒野の奥へと進んでいく。次に待っているのは、さらに厄介な相手だった。


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