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ハクの授業


「って訳で、今日はオレ…と、自分が訓練を受け持つんでよろしくお願いします、アンナ様!」


︎︎元気ハツラツといった感じで訓練室の戸を開いてやってきた軍服を着た白虎族特有の白い髪にネコ科の耳、制服越しからでも分かる靱やかな筋肉はリンやシュリ、レイ同様確かな“圧”を伝えてくる。


ただ、話し方で分かるが公私の使い分けは苦手なようだ。俺としてもフランクとまでは行かんが分かり易い言葉で教えを受けたい為、先に気を回しておく。



「よろしくお願いします、ハク。…無理に敬語は使わなくても良いですよ、貴女はセイ同様に、その戦闘力の高さからノワール国の将官にまで上り詰めた女傑と聞きますから」


「はは、そう言って貰えると助かるっす。えーと、確かレイからは氣と魔力の違いと魔力(オド)の扱いについて教わったんでしたっけ?」


「えぇ、魔力の研鑽までは未だ早い…との事でしたが」



流石に気を使ったのは分かったのだろう、頬を掻きながらレイとの鍛錬の内容を思い起こす。

あれから日常の様々な場面で…何なら中庭等で草や木、花が帯びる微弱な魔力も感じ取れるように瞑想したり、生活の中に鍛錬を組み込む形で魔力の扱いに気を配った生活を続けていた。


そんな日常を知ってか知らずか、ハクは一度考え込みながらスンスン、と鼻を鳴らし俺の匂いを嗅いだかと思うと小首を傾げる。


今日も風呂は入ったんだがな…臭うか?



「なるほどなるほど、まぁ、誰でも出来る技術って訳でもないからレイ姐さんが言いたい事も分かるけど、オレとしてはアンナ様も出来そうな気がしますぜ?匂いからして」



違った、どうやら匂いである程度強さとかが分かるらしい。

教えを乞う奴がロリコン…いや、ぺドじゃなくて良かった…なんて思ってんのは此処だけの話だ。


微妙に引きつつも俺は率直な疑問を問い掛ける。

というか、魔力を武器や弾丸に込めるのは初めてリンと星戦をした時に無意識にやっていたが、それを自覚出来るようになった今だと勝手が違う事は分かる。



「に、匂い…ですか?なるほど、そうなのですね…武器に魔力を込めるのとは違いますよね」


「違うというよりかは、あくまで“スタートライン”っすね。込めてからがセンスがあるかどうかの違いになるんで…取り敢えず見せてみましょうかい?」


「お願い出来ますか?ハク」


「あいよ、んじゃ分かり易く、と」



折角転がってきたチャンスだ、しっかり学ばせて貰おう。

白銀の虎の意匠がなされた手甲を具現化させ、滝の前で構えを取るハクに視線を向け一語一句聞き逃さないように集中する。



「先ず魔力を込めるってのは、星騎士なら誰もが無意識にやってる事なんすよ、アンナ様の銃弾も魔力を込めて撃ってるとは思うんでこの辺りは端折って、と」


「そうですね、私の場合念じて創り出す感じですが…概ね理解は出来ます」


「っす。で、此処からが本題なんすけど、魔力を込める得物をコップかワイングラスみたいな“入れ物”だと見立てて、込めた魔力を粘土かなんかだとイメージしてください」


「粘土…ですか、…」


得物が入れ物なのは何となく分かるが、魔力を粘土と言われるとは思わなかった。

まぁ、御託を並べられるよりは余程分かり易いが。


要は弾丸を創り出す時に念じるという工程をより細かく、より深く魔力の動きをイメージする感じだ。


言われた通り、俺は両手に持った双剣銃に魔力を込め練り上げ始める。



「器が壊れないように内側から練り上げるんす、…良いっすね、出来てます」


「何だか…何時もと違って力が暴れ狂っている感じがします…!」


「良い感じっす!最後にその状態を維持して剣を振ってみてください」


「───はッ!」



言われた通りに縦と横、十文字に振り抜くと練り込まれた魔力を帯びた斬撃はそれだけで必殺の一撃となり空間を十文字に“空間を断ち斬っていた”。


背後で拍手する手に目の前で起きた事態に理解が追い付かないながらも振り返る。




「完璧っす!魔力を練り上げるスピードが増せばそれだけでA級星騎士になれるっすよ」


「A級…ですか、S級は世界に何人居るのでしょうか?」


「S級の上位はリンを含めて世界中ひっくり返して1000人も居るかどうかっすからねぇ…オレ、シュリ、レイ、セイはS級クラスの中位くらいって感じっす」



…逆に言えばA級から上の連中はただの斬撃だけで、空間を斬り裂く事が出来ると言っているようなもんだが。


それ以上に驚いたのは、俺の周りが全員この世界でも戦闘力だけを言えば最高峰の奴等という事実だった。



(此奴ら人間じゃねぇ……!)



まぁ、五人とも白虎族だの玄武族、麒麟族って見た目だけは人間に近いだけの神獣族だが。



「まぁ、S級にもピンキリはありますが。ただ、此処50年はS級入りした奴は聞いた事がないっすね。B級の上に越えられない壁としてA級連中が存在する感じっす。魔力の研鑽自体出来る奴は限られてくるんで」



「そう、なんですね…私は恵まれていますね」


「才能に、すか?」


「いえ、環境に、です。こうして丁寧に教えてくれる貴女達が居たからこそ短期間で成長出来ていると思いますので」


「アンナ様…へへ、なんかむず痒いっすねぇ」


自惚れを咎めるような視線から一変してデレデレと身体をくねらせるハク。

肩書きや個人が持つには強過ぎる力が邪魔をして周りは此奴を正しく見れてないんじゃないか?と、思う。


少なくとも、俺には真っ直ぐで面倒見の良い姉ちゃん、そう見えてならなかった。

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