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魔法学院の転入生と禁書秘録  作者: V-CO
第一章 魔法学院で大いに活躍したい

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第一章 24 『心からの疑問』

 …………


 …………


 ティスには、生まれた時の記憶がなかった。


 両親のこと、自分の出自、自分にいったい何があったのか――何一つとして知らなかった。


 セリアの指導の下、当時十二歳だったティスはようやく自分の生活を持つようになった。名前、住まい、同僚……まるで最初から軍人だったかのように。軍の命令を受け、単調な仕事を繰り返す。殺戮、異端魔法使いの粛清、悪の組織の壊滅。


 全ての原因は、彼が完全に心を閉ざすきっかけとなったあの作戦にあった。


 その作戦で、彼は一つの事実を知った。自分の能力は人を殺すためにしか使えないのだと。人を救いたければ、まず殺さなければならない。


 自分の能力で他人を癒せると思っていたのに、実際はその死を加速させていた。それが原因で、ティスは魔法に対してある種の恐怖を抱くようになった。


 自分の手で再び血を拭ってはいけない血を拭ってしまうのではないか。自分のせいでまた誰かが理不尽に死んでしまうのではないか――そう怖がるようになった。


 どうしてそうなったのか? 彼にはわからなかった。


 なぜ自分を殺そうとする者がいるのか? 彼にはわからなかった。


 なぜ自分の生い立ちが謎なのか? 彼にはわからなかった。


 なぜ……


 ティスの心には、疑問だけが残されていた。


 …………


 …………


「う……ん……」


 ティスの意識が、泥沼の底からゆっくりと浮かび上がってくるように戻ってきた。


「ここは……どこだ……?」


 目を開けると、まず目に飛び込んできたのは見慣れない真っ白な天井だった。午後の日差しが高い窓から斜めに差し込み、壁に柔らかな白い光影を落としていた。空気中には薬と消毒液の匂いが漂っている。おそらく学院の保健室だろう。


 体中が痛む。しかし、痛みを感じるということは、まだ生きているということだ。


「……起きたか?」


 ジェイロスが横向きに寝ていた。だいぶ回復したようだが、顔にはまだ覇気がなく、目もうつろだった。


「よくもまあ、無事だったな……胸に四つの穴が開いてたんだぞ……全部、急所は外れてたが。」


 ティスはすぐに自分の傷を確認した。胸には包帯がぐるぐる巻きで、一部は血に染まっている。だが幸い、出血はとりあえず止まっていた。


「これは……?」


 ティスが戸惑っていると、ジェイロスが説明した。


「感謝するなら隣のエリーナにしろよ。あいつが必死に二人をここまで引っ張ってきたんだ。」


 その時になって、ティスは自分の右手がしっかりと握られていることに気づいた。その力は強く、少し痛むほどだった。握っているのはエリーナだった。


 エリーナはベッドのそばに跪き、上半身をベッドの縁に預け、両手で彼の手を離さず握りしめていた――まるで彼が逃げてしまうのが怖いかのように。


 顔や髪には血が飛び散っていて、元々白くて可愛らしかった顔は酷く汚れていた。おそらく彼の手当てをしているときに飛び散ったものだろう。


 そして今のエリーナは、額に脂汗を浮かべ、顔色も青白く、ひどく疲れ切っていて、やつれ果てていた。


「魔力病……か?」


 あまり顔色の良くないエリーナを見て、ティスは楽観できない状況を推測した。


「長時間の治療による魔力の消耗……それに、慣れない一節詠唱を無理に使った反動で魔力が溢れたんだ。彼女の魔力がお前の回復を待って持ったのは、もう限界だったんだろう。」


 ジェイロスが横から疲れた口調で説明した。


「……」


 その言葉を聞いて、ティスは思わず呆然とした。


 魔力病――ティスはもちろんその症状を知っていた。魔法使いが長期間魔法を使い続けると、体内の魔力がどんどん消費されていく。


 過度に魔力を消費した後、適切に休養を取らなかったり、薬を使わなかったりすると、軽ければ失神、重ければショック状態や死に至ることさえある。


 どうやらエリーナは、白魔法【治療】を長時間使い続けたせいで、まさにその瀬戸際に立たされていた。


「で、どうするつもりだ?」


「まずは魔力病の症状を治す……もちろん、お前も含めてな。お前の症状は彼女よりももっと重症だ。自分で鏡を見てみればわかる。」


 そう言って、ジェイロスはゆっくりと体を起こし、薬が並んでいる棚の方へ歩いていった。


「ちょっと待て……お前の体はもう大丈夫なのか?」


「問題があったら目を覚ましてないよ。こんなところでわけもわからず死ぬのはごめんだからな。」


「ふざけるなよ……お前、ちゃんと弔慰金を受け取るつもりだったくせに。」


「はは……今日は無理だな。」


 ティスと軽く言葉を交わした後、ジェイロスは棚の上の材料を選び始めた。


「悪いな、シルビアさん。いくつか材料を借りるぞ。」


 ジェイロスが材料を選んでいる間に、ティスもゆっくりと体を起こした。


 その物音を聞いたのか、ティスの隣に跪いていたエリーナもその時目を覚ました。


「ん……」


 エリーナがゆっくりと目を開け、目を覚ましたティスを見た。


「え……? 起きたの……?」


「ああ……見ての通りだ。」


 ティスが目を覚ましたのを確認すると、エリーナの目には涙が浮かんだ。


「……バカ。」


 エリーナの声は少し震えていた。


「どうしてそんな無茶をしたのよ……何かあったら、どうするつもりだったの……」


「大丈夫だって。ほら、今こうして生きてるだろ。」


 ティスは無理に笑顔を作り、エリーナにあまり心配をかけないようにした。


「そんなの危なすぎるでしょ! 何かあったら、あんたはもうこの世にいなかったんだからね!」


「気にしない気にしない。俺の体は今でもこんなに元気なんだから――――いててて……」


 ティスはそう言うが、胸からわずかに滲み出た血が彼の体調を如実に物語っていた。どうやらさっき体を起こした時に傷口を動かしてしまったらしい。


 エリーナの表情が一瞬で引き締まった。ティスの胸の包帯にじわじわと広がる血の跡を見て、エリーナは慌てて手を当てた。


「傷がまた開いちゃったんじゃない? 早く横になって、今治療するから!」


 エリーナがまた白魔法【治療】でティスを治療しようとした時、ティスは彼女を遮った。


「おいおい、自分で鏡を見てみろよ。今のお前の顔色はひどく悪い。もう軽度の魔力病の症状が出てるんだぞ。このまま続けたら、お前の方が先にやられちゃうよ。」


 その言葉に、エリーナは思わず固まった。


 確かにその通りだった。今のエリーナの症状はティスとほとんど変わらなかった。しかしティスは軍人上がりで、体力もエリーナを何段階も上回っている。エリーナはただの学生だ。どんなに魔力があっても、こんなに無理をすれば持たない。


「私の魔力が尽きる前に、あんたが失血死しちゃうよ! 心配しないで、お願いだから、あんたは今すぐ横になって!」


「でも……」


「大丈夫だよ。ジェイロス先生が薬を調合してくれてるし、私は魔力不足で倒れたりしないから。」


 エリーナがそう言うのを聞いても、ティスはまだ気が引けていた。


「安心しろ。ジェイロスのスペシャル薬はもうすぐできる。二人分な。今はとにかく、ティス、お前はおとなしく治療を受けるのが先決だ。」


 ジェイロスの声が薬棚の方から聞こえてきた。同時に、乳鉢から魔晶石が砕ける軽やかな音と、何かの薬草の苦い香りが室内に漂ってきた。


「わかった。じゃあ、頼む。」


 そう言って、ティスはおとなしくベッドに横になった。エリーナは再び彼の胸に手を当て、治療術でティスの治療を続けた。


 しかし、ティスはまだ少し不安だった。もしさっきの物音が敵に聞かれていたら、相手はおそらくこちらに向かってくるだろう……自分だったら、こんな好機を逃したりしない。


「ところで……よく俺の考えてることがわかったな?」


「あの事? もう、どうやらあんたの考えは簡単に見抜かれちゃったみたいね。」


 エリーナはため息をついた。しかしその間も、彼女の治療の手は止めなかった。


「あの時から気づいてたの。もし私とジェイロス先生を守るためだけだったら、あんな半透明で、見るからに脆そうな氷の壁を作ったりしない。なぜかって? 多分、私に戦況をちゃんと見させようとしてくれたからでしょ?」


 エリーナの説明を聞いて、ティスは微かに目を見開いた。


「はは……賢いな。さすが優秀な学生代表だ……頭の回転が速くて、柔軟だ。」


「それで、態度がでかいって言いたいの?」


「勝手にまとめるなよ……」


「わかった。」


 二人の間に、短い沈黙が訪れた。


 ティスにまだふざける余裕があるのを見て、エリーナはようやく少し安心した。それもティスの体調がまだ良好だということの証拠だからだ。しかし、重傷は専門家の手当てが必要で、エリーナの応急処置だけでは不十分だった。


「正直に言うと……死ぬ覚悟はできてたんだ……」


 ティスの声が突然低くなった。


「どうしたの? さっきは私のこと賢いって言ったくせに、結局死ぬ覚悟だったって言うの?」


「だって……できたけど……それなのに……」


「……?」


「ちゃんと……助けたのに……なのに……」


「……ティス?」


 その時のティスは目が虚ろで、声もぼんやりしていた。聞いている者が頭を抱えるような言葉をぼんやりと口にしていた。エリーナの顔には不安の色が広がった。


「どうして……俺だけが……こんな風に……」


「……」


「どうして……俺は……」


 エリーナが気づいた時には、ティスはもう深い眠りに落ちていた。上下に動く胸が彼の状態を物語っている。


 エリーナは彼のうわごとから何かを掴もうとした――それらの断片的な言葉は、まるで自分が経験したことのない何かを描いているようだった。しかしどの言葉も半分欠けていて、彼女は完全な絵を組み立てることができなかった。


「ティス……」


 エリーナにはわからなかった。


 ティスと過ごしたこの短い期間、ただ彼の身分が非常に特殊で、もしかしたら帝国軍の魔導士と関係があるかもしれないと感じていただけだった。


 何しろティスは魔法使い専門の固有魔法を習得し、魔法の知識にも精通している。ただ、魔法に対してだけはある種の拒絶反応を示しているように見えた。嫌悪とも、恐怖ともつかない感情を。


「ティス……か?」


 エリーナはまだ彼の胸に手を当て、その手のひらからは優しい光が放たれていた。同時に、ティスという人物と、彼に関するいくつかのことを考えていた。


 ティスの独り言を聞いて、ジェイロスの手の動きも止まった。乳鉢の上に乳棒が浮いたまま、まるで時間が凍りついたかのように、粉を砕く姿勢を保っていた。


 部屋は長い沈黙に包まれた。


 やがて乳棒が再び下ろされ、沈黙の中で薬草を砕く音が、規則正しく、単調に響き続けた。

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