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魔法学院の転入生と禁書秘録  作者: V-CO
第一章 魔法学院で大いに活躍したい

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第一章 23 『自ら墓穴を掘る』

 今、ティスができるのは、エリーナが自分の意図を理解してくれることを祈りながら、ルースの絶え間ない攻撃をかわしつつ、左腕の防御を維持することだけだった。


 ティスがルースの剣撃を防げているのは、左腕全体に付着させた氷の鎧のおかげだ。今やその左腕の防御はひび割れだらけで、この調子ではそう長くは持たないだろう。


 このまま消耗戦が続けば、ティスが力尽きて倒れるか、魔力病に侵されてルースに心臓を貫かれるかのどちらかだった。


 先ほどの魔法攻撃から明らかなように、正攻法の魔法ではルースを止められない。それにルースがティスに詠唱の隙を与えるはずもない。反撃できるのは、正しいタイミングを見極めた時だけだ。


(頼む……俺の命はお前に託した。)


 一方、エリーナは……


 エリーナはジェイロスの治療を続けながら、手のひらから温かい緑色の光を放ちつつ、この件について考えを巡らせていた。


 壁の向こうで繰り広げられるティスとルースの戦いを見ながら、エリーナは頭の中で情報を整理していた。


 壁を叩く。規則性がある……


 その時、エリーナは一つのことに気づいた。


 ティスが二度壁を叩いた音には、どちらも共通する特徴があった——どちらも非常に澄んだ音だったのだ。


「まさか……?」


 そうだ。もし本当にこちら側の二人を守るための壁なら、こんなに脆い壁を使うはずがない。なぜならティスの左腕に付着したあの分厚い氷でさえ、ルースの猛攻を防ぎきれていないのだ。ましてやこんなに薄くて脆い壁では話にならない。


 もう一つ、この壁は非常に透明だ。床の魔法の痕跡を見なければ、おそらく誰もここに壁があることに気づかないだろう。


 では、あの数回のノックは、この壁の堅牢さを伝えるためのものだったのか?しかし防御用の壁としては、あまりにも薄く脆すぎる。


 違う。


 エリーナははっと目を見開き、手を伸ばして指先で氷壁の表面に触れた。彼女が想像していたような硬く厚い氷ではなく、ほんの薄い層で、向こう側の空気の冷たさが伝わってくるほどだった。


 そしてこれら全ての兆候が、この氷壁の真の役割を示していた。この壁は自分とジェイロスを守るためのものではなかった。その真の役割は――――


「まだ抵抗するのか?」


 ルースは手にした剣を掲げ、ティスの頭から拳一つ分の距離で止め、その刃先をティスの頭に向けた。


 今やティスは完全に追い詰められていた。彼のシャツは血で半分以上が染まっており、自分の血もあれば、ルースの剣が刻んだ傷からの血もあった。


 しかし彼の目は依然として強く、口の中の鉄錆びた味のする液体を吐き出してから、再び体を起こして立ち上がった。


 おそらく獲物を追い詰める楽しみをまだ味わい尽くしていなかったのだろう、ルースは急いでティスを殺そうとはしなかった。その代わりに軽蔑した目でティスを見下ろし、まるで壊れかけの陶器を鑑賞するかのように、彼がどんな行動に出るのかを探っていた。


「……ふふふ。」


「死の間際で、まだ笑う余裕があるのか?」


 突然笑い出したティスを見て、ルースは手にした剣を強く握りしめた。


「もちろん、もうすぐ終わるからな。」


「その結果には異論はない。何せお前はすぐに俺が連れて行くことになる。そして――――」


「俺が言ってるのは、お前の任務が終わるって話じゃない。」


 その言葉に、ルースの目に一瞬の戸惑いが走った。


「言っただろ?お前はもう瀕死の状態だ。間もなく俺に心臓を貫かれる。それに付け加えると、その後お前の遺言すら、奴らには聞こえないだろう。」


 ルースは自分の背後を指さした。そこには壁の向こう側のエリーナとジェイロスがいる。


「はは、言うのは簡単だな。俺がまだ隠し玉を持ってるとは思わないのか?」


「お前の唯一の能力は魔法の停止だろ?それ以外に何か隠し玉があるなら、遠慮なく出してみろ。いちいち探り当てる手間を省かせてくれ。そんな暇はない。」


「お前って本当に面白くないやつだな。」


 そう言って、ルースは剣先をティスの額に当てた。一滴の血が刃先の当たった位置から伝って落ちた。


 ルースは完全に見下すような態度で、その視線はティスの体のあちこちを無造作に這わせた。


 二人の間の気温は氷点下まで下がったかのようだった。


「……警告しておく。変な真似をするな。さもなければ今すぐお前を送ってやる。」


「お?別に構わないだろ。どうせもうお前の手のひらの中なんだ。死ぬ前に少し話させてくれてもいいじゃないか。」


「馬鹿を言うな。お前が何を考えているか分からない。」


「ああ、そうだな。分かった分かった。それならもう言うことはない。」


 ティスは目を上げ、勝ちを確信したような目でルースを見た。


 ルースはその視線に戸惑い、微かに眉をひそめた。


「なぜなら……俺の目的は達成されたからだ。」


「……目的?何の目的だ?」


 ルースの問いに、ティスは答えず、左手を上げて親指で自分の首をなぞった。


「……」


 自分が侮辱されたと感じたのか、ルースの顔には珍しく怒りの表情が浮かび、眉がひそめられた。


「たかが虫けらが、死の間際になってこの上なく不遜な態度を取るとはな――――!」


 そう言って、ルースは剣を掲げてティスの頭を刺そうとした。ティスの命を直接奪うつもりだった。


 その時、背後から誰かが呪文を唱える声が聞こえた。


「《風よ、荒れ狂え》――――!」


 ルースが驚きの声を上げるのと同時に、背後から硝子が割れるような音が聞こえた。


 振り返ると、無数の氷の棘が自分に向かって襲い来るのが見えた。


「何――――!?」


 そして彼はティスの脳を貫こうとしていた剣を引き戻し、振り返ってこれらの厄介な氷の棘を処理せざるを得なかった。


 突然の出来事で準備ができていなかったルースは、高速の剣技でほとんどの氷の棘を打ち砕いたものの、一本の氷の棘が彼の脇腹をかすめ、血が瞬時に衣を染めた。


 廊下に剣光が閃き、氷の破片が飛び散る。破片が地面に落ちるその瞬間、ルースは氷壁の残骸の後ろに立つ者を見た。


「くそっ――――!この野郎!」


 ルースは歯を食いしばって言った。その口調には怒りが満ちていた。


 そこに立っていたのはエリーナだった。今のエリーナは両手を前方に伸ばし、掌には淡い緑色の魔法の光がまだ残っていた。風系魔法の余韻だった。


「よかった……間に合った。」


 エリーナは気づかれないうちに風系魔法の呪文詠唱を完了させていた。そして突然の中断を防ぐため、自分が一度も使ったことのない一節詠唱を選んだ。威力はさほど大きくはなかったが、ルースに少なからずの損害を与えることはできた。


 ルースには三つの誤算があった。第一に、彼はエリーナの臆病な性格を知っていたため、まさか彼女がこのタイミングで自分に向かって魔法を放つ勇気があるとは思わなかったこと。第二に、彼女に一節詠唱の実力があることを知らなかったこと。


 そして第三の誤算は、壁がまさかこんな用途に使われるとは全く思わなかったことだ。


「うおおおおおおおお――――!」


 ティスは好機と見るや、氷の棘に刺されるリスクを冒して、猛然とルースに向かって突進した。


「しまった、《瞬》――――!」


 そう言って、ルースは自分の剣に加速魔法を付与し、元々速い剣撃をさらに避け難くした。


「遅い!」


 言い終えると同時に、ティスは自分の固有魔法【寒氷時域】を発動し、ルースの加速魔法を停止させた。


 一瞬にして、周囲の空気から微かな凍る音が聞こえてきた。ルースの剣は加速魔法の媒介として、ティスの能力によって空中に停止させられた。ルースはもはや剣を引き戻して防御する間もなかった。あるいは、引き戻せなかった。


 ティスは一本の氷の棘を掴み、そして……


「…………」


 時間がこの瞬間に停止したかのようだった。


 次の瞬間、ティスは氷の棘をルースの心臓に深く突き刺した。氷の棘が皮肉を貫き、肋骨の間を通り抜け、心臓に突き刺さる瞬間のあの抵抗感、そして最後は崩れ落ちるような通暢感。


 血が氷の棘に伝って流れ落ち、床に滴った。


 ルースは全く動かず、何の反撃もできなかった。あるいは、もう反撃のしようがなかった。


 心臓を貫かれ、彼の命はカウントダウンを始めていた。


「ぷごっ――――」


 血を吐き出した後、ルースは自分にもう抵抗の余地がないことを理解した。この光景を見て、ルースは手にした剣を下ろした。彼もまた卑劣な人間ではない。魔法使いとしての戦いにおいて、自分は目の前の男に完全に負けたのだ。


 おそらくルースは心残りだったかもしれないが、それでも静かにその事実を受け入れた。


「正直なところ、お前と一度しっかり話してみたかった。何せお前はあのクズどもとは違うからな。」


 ルースを殺したことに対して、ティスは何の感情の動きもなく、むしろ少しの喪失感を覚えていた。


「ふん……そうか……そういうことか……」


 ルースの的外れな返答に、ティスは戸惑った。ルースはティスの目を見つめながら、独り言のように呟き続けた。


「正直なところ……彼らがなぜお前を連れて行こうとしているのか、分かった気がする。」


「……?」


「帝国監察団……今は首席行動組と呼ばれているんだったか。数年前、突然現れた異能の人物がいて、その特異な能力でいくつもの邪悪な組織を次々と壊滅させた。彼を見た者は皆、全身が震え、血液さえも凍りつくようだと……多くの魔法使いがその名を聞いて震え上がった。」


「……」


「二年前……俺たちにも同じ任務が届いていた……あの人物もお前だろう?ティス・セシス……いや、【氷霜】と言うべきか。」


 その言葉を聞いて、ティスの瞳孔が急激に収縮した。そしてその反応を見て、ルースはますます自分の考えを確信した。


「何が言いたい?お前たちは何のために来た?」


 ティスは手にした氷の棘を強く握りしめ、その目も鋭くなった。自分の手が氷の棘で傷ついていることにも気づかなかった。


「はは……覚えておけ……いつか必ず……」


 言葉を言い終える前に、ルースの呼吸は途絶えた。


「……おい、おい!」


 息絶えたルースに、ティスは試しに二度声をかけたが、応えは静寂だけだった。


 ティスはその場に立ち尽くし、氷の棘を握っていた手を微かに緩めた。ルースが最後に残した言葉をどう理解すればいいのか分からなかった。


「……」


 ゆっくりとルースのそばを離れると、ルースの体も壁に沿って滑り落ち、動かずに地面に倒れた。


 その時、ティスの体調を心配したエリーナが駆け寄ってきた。


「ティス、大丈夫……?」


「ああ、大きな問題はない。まだ息はできている。」


 ティスは地面に倒れたルースを見て、何とも言えない違和感を覚えた。


 エリーナは息絶えたルースを見て、心臓が一瞬止まった。


「彼は……」


「息はない。もうどうしようもない。」


「そうなんだ……」


 なぜか、今のティスを見ていると、エリーナは彼に対して恐怖を感じた。


 しかしすぐにティスは普段の怠けた態度に戻り、周囲の重苦しい空気が少し和らいだ。


「しかし、よく俺の意図を理解してくれたな。危うく命を落とすところだった。よくやった。」


「そ、そんなことないよ……」


「そうだそうだ、ジェイロスはどうなった?」


「傷はほとんど治まった。もうすぐ意識を取り戻すはずだ。でも……本当に大丈夫なの?」


「俺は何の問題もないさ。何せ左腕の防御はある。この防御は絶対に揺るがない。」


 そう言って、ティスは自分の左腕を掲げて二人に見せた。


 しかしエリーナはそれを見て、さらに近づいて左腕に付着した氷をじっくりと観察した。


「ねえ、これって――――」


 言い終わる前に、ティスの体が突然硬直した。彼の体に異様な感覚と、言葉にできない痛み——骨の髄までえぐられるような痛みが走った。


 腕を引っ込めた後、ティスは半信半疑でそれを見た。すると、これほど堅固だった防御に、ぽつぽつと穴が開いているのを発見した。


 気づいた時には、ティスの胸から大量の血が溢れ出し、瞬時に服を染めていた。


「ぷごっ――――」


 ティスは大量の血を吐き出し、それが目の前の床に飛び散った。暗紅色の血が灰白色の石の表面で異様に目立った。


 一瞬にして、ティスは周囲の世界が暗転したように感じた。


 その時、彼は思い出した。さっきのルースの剣速はある程度の速度に達していて、左腕の防御を一瞬で貫き、ティスの胸を刺していたことを。


 つまり、ルースは「ほとんど」ティスを刺したのではなく、すでにティスを刺していたのだ。


「くそっ……計算違いだったか……」


 ティスは目の前が真っ暗になり、地面に倒れた。


 かすかに誰かが絶叫しながら自分の名前を呼んでいるのが聞こえたが、何を言っているのかは聞き取れなかった。体内の血が傷口から絶え間なく流れ出し、ティスの意識も次第に消え去っていった。


 完全に意識を失う直前、何かが彼を強く抱きしめる感触があった。まるで彼が暗闇の奥へ沈むのを止めようとするかのように。しかしそれも無駄だった。


 徐々に、ティスの意識は闇に包まれていった……

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