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魔法学院の転入生と禁書秘録  作者: V-CO
第一章 魔法学院で大いに活躍したい

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第一章 22 『氷の舞曲と剣の葬送詩』

 四つの残像が同時にティスに向かって突進した。ティスの瞳孔が急速に収縮し、その一瞬でどれが実体かを見極めようとした——しかし残像の間には全く差異がなく、動作、速度、さらには呼吸のリズムまで完全に一致していた。


 廊下は三人が並んで通れるかどうかの狭さで、ティスの活動範囲は極限まで圧縮されていた。四つの残像が異なる方向から同時に突きを放ち、彼にはほとんど逃げ場がなかった。


 この豪雨のような猛攻に対し、ティスは受動的に防御せざるを得なかった。


 左からの突き、右からの突き。剣先が空気を裂く鋭い音が、ティスの耳元で炸裂した。


 ティスは左腕に付着した氷の鎧を盾にして、次々と襲い来る突きを辛うじて受け止めた。防御するたびに、氷の表面に細かいひび割れが増えていった。


「くそっ、やっぱりこうなるか——!」


 ティスは四方八方から襲い来る攻撃に警戒しながら、体を捻って回避し、氷で覆った左腕で直接受け止めた。鋭い刃が氷の表面をかすめ、細かい氷の破片が四方に飛び散った。


 しかしこれは応急措置に過ぎなかった。左肩の傷が自由な動きを妨げ、彼は防御に徹することを強いられていた。


 ルースは余裕の表情で、執拗に様々な方向から突きを放ち、ティスの行動範囲を狭め続けた。


「ちっ、しつこい——!」


 ティスは苛立たしげに舌打ちし、頭の中で次の対策を考え始めた。


 氷壁の向こう側では、エリーナがまだジェイロスの治療を続けていた。


「早く起きて……ジェイロス先生。」


 エリーナは傷の状態に合わせて魔力を調整しながら、ジェイロスが意識を取り戻すことを祈っていた。


 しかしジェイロスは依然として意識を失ったままだった。


 氷壁の外からは慌ただしい足音、剣が空気を切る音、そしてティスの抑えたうめき声が聞こえてきた。音が響くたびに、エリーナの肩が無意識に縮こまった。


「やっぱり……私が邪魔だったのかな……」


 さっきまでの出来事を思い出し、エリーナの心は再び揺れ始めた。


 ティスは「よくやった」と言ったが、それは慰めに過ぎなかった。もし自分があんなに弱くなければ、ティスは傷つくこともなかったかもしれない。


 そもそも、なぜティスがルースに狙われ、こんなに苦戦しているのか?


 なぜジェイロス先生がこんな大怪我を負って意識を失っているのか?


 それは、自分を助けに来たからではないのか?


 それに、ティスの能力は敵に完全に見抜かれていた。結局、全ては自分のせいだった。


「……」


 氷壁の向こうでは剣光が舞い、こちらは守られた場所だった。


 戦いの様子を見て、エリーナにできるのはジェイロスの治療を続け、彼の早期の回復を祈ることだけだった。


 その時、ティスが氷壁のそばまで後退し、再び壁を叩いた。


「……?」


 今の状況で、ティスにこんな余計なことをする余裕はなかった。


 戦いが始まる前にも、彼は同じように壁を叩いていた。


 こちらで起きているのはエリーナだけだ。ティスは何かを伝えようとして、この方法で信号を送っているのだ。


 エリーナはこの異例の行動の意味を考えた。


 廊下に再び剣先が空気を裂く音が響いた。左からの突き、右からの突き、正面からの突き——次々とティスの眼前をかすめていった。


 ティスは四方八方からの攻撃を避けながら、ルースに向かって拳を振るった。


「はあっ——!」


 予想通り、拳はルースの体をすり抜けた。


 四方向からの攻撃が同時に襲い、ティスは明らかに押されていた。左肩の傷も加わり、彼の息は荒くなり、全身に汗が滲んでいた。


 ルースは表情を変えず、泰然自若としてティスの体力を消耗させ続けた。


「くそっ……」


 もし相手が魔法で動かされる四本の剣なら、まだ対策を考えられたかもしれない。しかしティスが直面しているのは、一人の男が生み出した四つの分身——思想も連携も完璧な剣術の達人だ。反撃どころか、これらの攻撃を辛うじて耐え凌ぐのがやっとだった。


 その時、ティスは目の前の四つの幻影が三つになったことに気づいた。


「しまった——!」


 いつの間にか、一つの幻影がティスの背後に現れていた。


 幻影はティスの一瞬の隙を捉え、剣を構えてまっすぐに彼の心臓を突こうとした。


 ティスの体はその瞬間に反応し、腰を左に強く捻った。刃は心臓の端をかすめて刺さり、右側腹部を貫通した。


 剣先が背中から抜ける冷たい感触を感じた。


「ぐっ——!」


 ティスは即座に後方へ跳び、ルースとの距離を取った。


 幸い肺は傷ついていなかった。もし肺を貫かれていれば、今頃命はなかっただろう。


 ルースの四つの分身は剣をティスに向け、彼を包囲した。


「ちっ、やっぱりそういうことか。」


 そうだった。ルース本人の剣技はそれほど卓越しているわけではなかった。一流ではあるが、突出しているわけではない。本当に厄介なのはあの剣そのものだった。おそらく何らかの手段で、敵を自動追尾する能力が付与されているのだろう。


「その通りだ。剣士として、剣そのものが信頼できなければ、結局は素人のままだ。どんなに技術が優れていても、枝で剣と戦うことはできない。この剣は、俺が殺した者から奪ったものだ。何本あったか……数十本だろう。この一本が一番使いやすい。」


「この野郎……」


 ティスは完全に押され、戦局は徐々にルースの方へ傾いていた。


 確かに、ルースが魔法で操る剣であれば、まだ対処できたかもしれない。しかし自動追尾の剣に加えて、彼自身の信じられないほどの速度が加われば、手のつけようがなかった。


「意外だな。お前が無詠唱で氷魔法を使えるとは。」


 先ほどティスが氷壁を作り出した様子から、ルースはこの異常性に気づいていた。魔法の原則に従えば、無詠唱は威力の低下を招く。しかも無詠唱で威力を維持できる者はごく稀であり、ましてや学生がそれを身につけているとは思えなかった。


 しかしルースがそう言ったのは、単なる感慨に過ぎなかった。彼は確信していた——ティスはすぐにこの剣の下に倒れるだろうと。


「ここまでだ。」


 四つの寒光がティスに向かって放たれた。


 目標はティス本人に設定されていた。つまり、これからの全ての攻撃はティスを追いかけてくるということだ。


「ちっ——!」


 ティスの目は四本の剣を捉え、頭の中で瞬時に対策を練った。


 左腕の氷の鎧を盾に、ティスはそのうちの二本に向かって拳を振るい、同時に左側へ回避した。


 この一手は功を奏し、ティスはルースの背後に回り込むことに成功した。


 ティスは確信した。今こそルースを攻撃する絶好のチャンスだと。


「《氷の蒼牙よ、冷気を奔らせ——》」


 ティスは左手を挙げ、魔法の詠唱を始めた。


 左腕は負傷しているが、魔法の発動には影響しない。ティスが詠唱しているのは黒魔法【氷結霜刃】——軍用級魔法だ。放たれた氷の刃は敵を襲い、同時に周囲の温度を下げて敵の動きを鈍らせる。


 この狭い廊下でこの一撃を食らえば、逃げ場はない。ティスは三節詠唱を選び、確実に命中させつつ威力を最大化することを狙った。


「《放て——》」


 詠唱がまさに完了しようとした瞬間——


「《散》。」


 ルースは剣先をティスに向け、たった一言で詠唱を終えた。


 刹那のうちに、ティスの手に凝縮されていた魔力が「ふうっ」という音と共に蒸発し消え去った。まるで見えない手で握り潰されたかのように、彼の掌の中で無力な冷気の塊となって炸裂し、左手にはわずかな魔法の残滓だけが残された。


「な——?」


 黒魔法の派生【解魔呪】——他の黒魔法に対抗する最もシンプルな手段だ。相手の呪文を予測し、自身の魔力で干渉することで、強制的に詠唱を失敗させ、全ての効果を無効化する。


 魔法が解除されると同時に、周囲に漂っていた冷気も消え去り、廊下は元の状態に戻った。


「遅すぎる。」


「くそっ、ふざけるな——!」


 ティスは後方へ跳び、襲い来る四つの剣光を避けた。


「まさか三節詠唱で俺に対抗しようとはな。頭は大丈夫か?」


 ルースの剣が素早く突き出された。


 ティスは避けきれず、左腰を剣先に貫かれた。刃先から血が飛び散った。よろめきながら数歩後退し、ティスは右手で左腰の傷を押さえた。温かく粘性のある血が指の間から滲み出た。傷はそれほど深くはないが、動きに影響を与えるには十分だった。


「ぐっ——!」


「諦めろ。お前と俺の差は大きすぎる。早く降参すれば、命だけは助けてやってもいい。ただし、俺たちと一緒に来てもらうがな。」


 ルースは傷だらけのティスを軽蔑した目で見下した。


 傷だらけのティスとは対照的に、ルースには一つの傷もなく、ほこりすらほとんどついていなかった。


 しかもルースの速度は全く衰えていなかった。この驚異的な持久力に、ティスの心臓は大きく跳ねた。


(この野郎、やっぱりただ者じゃない。)


 ティスは心の中で呟きながら、次の一手を考えていた。


 このままでは、ルースの速度が落ちるまで持ちこたえられそうになかった。今のところ、敵の速度に衰えの兆しは全くなかった。ジェイロスが目を覚ますのを待つことも、おそらく不可能だろう。


「五分って、こんなにも長いんだな。」


 ティスは後方へ跳び、ルースと一定の距離を保って対峙した。


 ルースは悠然とティスに向かって歩み寄った。手にした剣は、まるでティスの魂を刈り取ろうとするかのように構えられていた。


「だが、俺の下でここまで生き延びたのは、お前が初めてだ。」


「ああ、光栄に思う……だが、お前みたいなクズに殺されるつもりはない。」


「口だけは達者だな。次にどうするか、もう分かっているんだろう?」


「もちろん、よく分かっている……」


 そう言って、ティスは再び左手をルースに向けた。


 ルースは平然とした表情で、手にした西洋剣を握りしめ、微塵の緊張も見せなかった。


 おそらく相手がティスだからこそ、ルースは最初から最後まで攻撃魔法を一度も使わなかった。


 もし相手が他の誰かだったなら、彼はとっくに様々な魔法の強化を施し、制御魔法で相手の動きを封じ、容赦なく滅多刺しにしていただろう。しかもルースが今までに見せた能力は、高速移動による分身と、敵を自動追尾する西洋剣だけだ。


 それ以外にどんな実力を持っているのかは、まだ不明だった。


 ただ、魔法を使わなくても、彼はこの戦いに絶対の自信を持っていた。


 ティスがこれからどれだけの苦しみを味わうかは明らかだった。そしてルースは、おそらく実力の三割も出していなかった。


(くそっ……まずいことになった。)

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