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魔法学院の転入生と禁書秘録  作者: V-CO
第一章 魔法学院で大いに活躍したい

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第一章 20 『希望の後で……』

「カルアが連れて行かれたっていうのか?」


「うん……」


 ティスが信じられない様子で言うと、エリーナはうつむいて暗い声で応えた。


 エリーナを救出してから数分後、エリーナは事の経緯を全てティスとジェイロスに話した。


 今、数人は次の計画を立てようとしているところだった。もちろん、ラルフは全身を凍らせられ、頭にはジェイロスが実験室の隅から見つけた廃鉄桶をかぶせられており、まるで現代アート展の奇妙な展示物のようだった。


 しかも意識を失っているため、ラルフには数人の会話は全く聞こえていなかった。


「なぜ彼らはカルアを連れて行ったんだ?」


「分からないが、今はとにかくカルアを救い戻すことが先決だ。」


 ジェイロスは頭を掻きながら、次の対策を考えていた。


 今戦闘能力があるのは、この場にいる三人だけだ。正確には二人だ。エリーナは学生であり、戦闘経験がほとんどないからだ。そしてティスは左腕の傷のため、行動がいくぶん制限されていた。


 エリーナはティスの左腕の傷を見て、心が痛んだ。


「あの、その傷……」


「ああ、これか?大丈夫だ大丈夫。俺みたいな体力自慢は、ちょっと息を整えればすぐに治る。」


 ティスは自分の胸を叩いたが、叩いた後に少しタイミング悪く咳が二度出た。それを見たジェイロスは顔をそらした。おそらくその光景に笑いをこらえていたのだろう。


「でも、お前は大丈夫なのか?」


「私?私も大丈夫……」


 エリーナは自分の首を触った。さっきのことを思い出すと、首に締め付けられた感触が蘇り、背筋が凍る思いがした。


 ティスはエリーナが大丈夫だと聞いて、深く息を吐いた。


「はあ、大丈夫ならまず服をちゃんと着ろよ……さっきから言おうと思ってたんだ。」


「な――、お前の注意力は最初からそこにあったのか!?」


「だってお前が泣きながら抱きついて離さなかったから、俺が言えるわけないだろ?いいから、大丈夫ならさっさと服を直せ。風邪を引いたら大変だぞ。」


「分かったよ……」


 ティスは自分の上着をエリーナの肩にかけた。上着の布地にはまだ彼の体温が残っていたが、肩の部分にある濃い茶色の血痕が彼女の胸を締め付けた。


 エリーナはうつむいて、黙ってボタンを留め始めた。指が微かに震えていた。寒さのせいか、それとも別の理由か。今のエリーナの顔はひどく熱かった。


 上半身は白いインナーシャツだけになったティスは、エリーナの乱れた格好をこれ以上見ないように顔をそらした。


「よし、話は後だ。まずは計画を立てる。」


「それで、お前は何か計画があるのか?」


 ティスは黒ずくめの格好のジェイロスを見て、彼の言葉を待った。


「学院の転送陣はまだ破損したままの状態だ。もし彼らが修理しようとすれば、かなりの手間がかかる。それに布陣の時間を考えれば、半日はかかるだろう――――」


「ちょっと待て、どうして彼らがカルアを学院の転送陣に連れて行くと分かるんだ?」


「来る途中で、あの黒服の男がカルアを連れて学院中庭に向かうのを見たんだ。さらに奥に行けば学院最上階の転送陣だ。明らかに彼らは転送陣を使ってカルアを送り出すつもりだ。」


 ジェイロスはそう言う時、誰にも視線を向けず、地面を見つめながら、頭の中でそのルートをもう一度なぞっているようだった。


 ジェイロスの言葉を聞いて、ティスは顎に手を当て、うつむいて考え込んだ。


 その時、ジェイロスの体から電子音が鳴り響いた。


 何が起こったのか分からないエリーナとティスはその場に立ち尽くした。ジェイロスは体から教師用の通信石を取り出した。


【ジェイロスか?】


「ああ、何かあったのか?」


【学院の方で何か異常が起きているんじゃないか?】


「もちろん。だが、今のところ状況はまだ制御可能な範囲だ。」


 通信石からセリアの声が聞こえてきた。


【今の状況を詳しく説明してくれ。】


「今の状況だけを説明しても、一時的には理解できないだろう。最初から説明するぞ――――」


 …………


 …………


「……とまあ、そういうわけだ。」


【これらは、全て本当なのか?】


「学生の命を軽く見るような真似はしない。」


 ジェイロスは頭を掻きながら、行ったり来たり歩き回っていた。一方ティスは芸術作品にされたラルフの体に変なものがないか調べていた。


「要するに、今は無銘者の連中と遭遇している。だが彼らが本当の黒幕かどうかは定かじゃない。何せこの組織は傭兵の暗殺組織だ。理由もなく学院を襲うような真似はしない。」


【今の学院の状況は?】


「結界は完全に彼らに掌握されていて、通報装置も破壊されている。教室の学生は全員魔法で眠らされていて、二人がここにいて、もう一人は連れて行かれた。」


【無銘者……いったい誰がこんな連中を雇って学院を襲わせたんだ?】


 ジェイロスはしばらく沈黙し、口を開きかけて、結局首を振った。


「分からない。今のところ、さっき片付けた一人と、俺が倒した一人以外に、まだ二、三人いる可能性がある。それに、さっき変装して移動している時に見た感じだと、残りの連中は決してただの見掛け倒しじゃない。」


【ティスはそばにいるのか?】


「もちろん。言いたいことがあるなら遠慮なく言え。彼は今ここにいる。」


 その言葉に、ティスは振り返ってジェイロスのそばに歩み寄り、通信器を受け取った。


「どうした、セリア?」


【傷は大丈夫なのか?左肩貫通傷だ。聞いただけでも大した傷だぞ。】


「一時的に凍らせてある。使うのに少し苦労するが、何とか動かせる。後でしっかり療養すれば戻るだろう。」


【そうか。だが、本当に大丈夫なのか?】


「そんなことを考えている暇はない。人を救えるならそれでいい。それに今はそんな話をしている場合じゃない。そっちで怪しい動きをしている人物を調べられるか?特に講師や学生で、実力が高い奴だ。」


【分からない。今はここを離れるのが難しい。ましてやそんなことを調べる余裕はない。】


「じゃあ帝都に状況を説明して調査を開始させろ。それで連中に応援を要請しろ!」


【それは難しい。それに考えてみろ。もし彼らが調査を始めて、学院に救援が到着するまでに、半日以上は軽くかかるぞ?】


「しかし学生たちはいつ命を落とすか分からないんだ!別の転送陣で戻ってくることはできないのか?」


【もちろんそれが学生の命に関わることだと分かっている。まずは落ち着け。一番近いのは学院の転送陣だが、彼らが真っ先に占拠しているはずだ。それ以外の転送陣は学院から遠く離れている。だから今の私にはどうすることもできない。だが出来る限りの調査はする。ただし過度な期待はするな。】


「……」


 セリアに一語で言い当てられ、ティスは言葉を失った。


 学院の転送陣以外に、軍が使える単方向転送陣がある。それは帝都に危機が発生した時のための専用の転送陣であり、戻ることはできない。


 他の転送陣は週末のため使用できなかったり、アスラント学院のように定期点検中だったりする。もし他の場所に転送申請を出しても、時間が全く足りないだろう。


 そして罪悪感に苛まれたティスは頭を抱えてため息をつき、その事実を受け入れた。


「すまなかった。」


【気にするな。この状況なら誰でも焦るものだ。よし、通信をジェイロスに戻してくれ。】


 そう言って、ティスは通信器をジェイロスに渡した。


【ジェイロス、エリーナとティスの二人を隠れられる場所に避難させろ。あまり無鉄砲な行動はするな。何せあの連中はまだティスを狙っている。】


「ああ、分かった。」


【……それと、最後に一つ言っておく。絶対に死ぬな。】


「ははは、お前がそこまで気にかけてくれるのは珍しいな。」


【総じて言えば、お前たち三人に言っているんだ。】


「分かった。これで終わりにしよう。」


 ジェイロスは通信を切り、通信器をポケットにしまった。ついでに頭の黒い仮面も外し、長く息を吐いた。


「……息苦しかった。本当に学院長に残業代を申請しなければならないな。」


「同感だ。だが……ん?」


 ティスはエリーナの視線が自分たちに向いていることに気づき、不思議そうに尋ねた。


「どうした?」


「何でもない……ただ……ちょっと意外だった。」


「意外?」


「てっきり……お前は冷たい人間だと思ってた。」


「そう言われるとさすがに傷つくけどな……」


 ティスは口ではそう言いながらも、顔をそらしてエリーナの視線を避けた。


「……全部、私のせいだ。」


「ん?」


「全部……私が弱いから……カルアが……私を守るために……あんな風に……やっぱり……魔法は……良くないものだ……うっ……」


 そう言って、エリーナの目はまた赤くなった。


 さっきのことを思い出すと、エリーナはひどく罪悪感を感じ、心の中に押し込めていた千の思いが溢れ出そうになっていた。涙も止められずに流れ落ちた。


 ティスはそっと手をエリーナの頭の上に置いた。


「……?」


「大丈夫だ。だからこそ、ますます元気を出さなければな。」


 ティスがそう言う時、彼の顔には普段は絶対に見せない優しい笑顔が浮かんでいた。その繊細な微笑みと温かい手のひらに、エリーナはまばたきをして、驚きを隠せなかった。


「正直なところ、魔法があるからこそ世界は正しく機能しているんだ。確かに魔法には暗い側面もある。しかし確固たる信念を持てば、魔法は常に光の側面であり続ける。それに、お前はよくやった。家名を汚すような真似はしなかった。」


「で、でも……」


「こんな状況なら誰だってそう思うさ。でもそういう風に見ると、カルアには本当に心の通った友人がいるんだな。だからこそ今は、どうやって友人を救い出すかを考えるべきだろ?」


 ティスは首をかしげてエリーナを見た。エリーナは何と言っていいのか分からず戸惑っていた。


「さて、邪魔をしてすまないが、今は恋愛話をしている時じゃない。今重要なのは次の行動だ。」


 二人のやり取りを見ていたジェイロスがついに我慢できずに口を開いた。その表情には少し気まずそうな色もあった。


「若いっていいなあ。俺の過ぎ去った青春を思い出すと、心が痛む。うう~」


「実際、お前はそんなに年寄りでもないだろ……」


 大げさに胸を押さえて悲しそうな仕草をするジェイロスを見て、ティスは仕方なくツッコミを入れた。しかしジェイロスが振り返って仮面を整える一瞬、その目の奥に一瞬の複雑な感情がよぎった。


 その時、ラルフの頭の上の鉄桶が微かに震えた。それに気づいたティスの視線がラルフの頭上に注がれた。


「……ん?」


 異変を察知したティスはゆっくりと全身を凍らせたラルフに近づいていった。


「どうした?」


 突然緊張したティスを見て、ジェイロスが心配そうに尋ねた。


 ティスは足音をひそめ、背を低くしてその氷像のような男に近づいた。右手をわずかに上げ、指先に細かい氷の結晶を凝縮させた。

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