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魔法学院の転入生と禁書秘録  作者: V-CO
第一章 魔法学院で大いに活躍したい

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第一章 19 『一縷の希望』

 その時、影のような男が突然ドアの端を掴み、ラルフもその行動に驚いた。


「ちっ、何をするつもりだ?俺は言っただろ――」


「お前が探している奴を、連れてきた。」


 全身黒ずくめの男が突然口を開き、ラルフの言葉を遮った。


 ラルフの表情には一瞬の驚きが走ったが、すぐにまた落ち着きを取り戻し、全てを掌握しているかのような笑みを浮かべた。


「ふん、彼を連れてきたのか。よくやった、よくやった。」


 ラルフは象徴的に拍手をして、男の報告を褒めた。


 最後の希望までもが捕らえられた。


 エリーナの顔色は完全に血の気を失い、まるで魂を抜かれたかのようだった。


「しかし……計画では、お前はもう一人と後片付けを処理しているはずだ。なぜ彼をここに連れてきた?」


「……」


 全身黒ずくめの男が突然震えた。


「それに、あの時お前はなぜ返事をしなかった?それとも……お前には別の狙いがあるのか?」


 ラルフの笑みが少しずつ消えていき、拍手していた手も空中で止まった。その目は次第に鋭くなり、目の前の男をじっと見つめた。


「計画に必要だからだ。」


「ああ、計画に必要だからか。分かった分かった。それでは――」


 ラルフが窓の外を指さした。


「窓の外のあのクズも、お前の計画に必要なのか?」


「――!」


 ラルフが指さした先には、窓の外の突起部分に立つティスがいた。ティスは壁に張り付いており、中からは外の様子が全く見えない。


 その言葉を聞いて、ティスの額に冷や汗が滲んだ。彼はさっきの二人の計画を思い出していた。


 ――一分前――


 ジェイロスとティスは廊下を実験室に向かって走っていた。


「待て、ティス!」


 後ろを走っていたジェイロスが彼を呼び止めた。


「ちっ、何だよ!エリーナが危ないんだ!用事は後だ!」


「三十秒だけ、聞け。」


 ジェイロスの焦った様子を見て、ティスは歯を食いしばり、振り返って彼の話を待った。


「よく聞け。お前がどんな能力を持っているかは知らないが、これからの計画はほぼ全てお前にかかっている。」


「計画?今そんなことを考えてる暇があるのか?」


「説明している時間はない。二つの案がある:一つは、俺がこの格好で奴を引きつけ、お前がエリーナを救出する。その後は本気でやることになるだろうが、とにかく学生の安全を優先しろ。二つ目は、もし計画が失敗したら、その場で奴を気絶させて縛り上げろ。」


 ジェイロスの計画を聞いて、ティスの表情には迷いが浮かんだ。


「もし奴がエリーナを人質に脅してきたら、計画は厄介になる。だから何かあったら、素早く奴を抑え込むんだ。」


 そう言って、ジェイロスは一人で魔法実験室の扉の方へ歩いていった。


 ティスはその場で数秒考え込み、自分の計画を思いついた。


 魔法実験室は二階にある。正面から入らずにエリーナを救い出す方法は、あの窓だけだった。


 ――現在――


 窓の外の突起部分に立つティスは冷や汗をかいた。


(――バレた?ありえない……)


 自分は音を一切立てていないのに、ラルフはどうやって自分の位置を特定したのか?


「……」


 ティスは何もせず、その場に立ち尽くして事態の推移を待った。


 ジェイロスもその場に立ち、何の意見も述べなかった。しかし彼の視線は時折ラルフと窓の外を往復していた。ただ、仮面で覆われているため、ラルフにはその視線の動きは見えなかった。


「ははは、冗談だよ冗談。雰囲気が重すぎて、どうも落ち着かないからな。」


 ラルフは先ほどの真剣な態度を一変させ、また狂ったような態度に戻った。


 その言葉を聞いて、ジェイロスは少し安堵した。


「ただし――」


 ラルフの手がゆっくりと上がり、ジェイロスを指さした。


「――俺の記憶では、お前は話せないはずだろ?」


「――!」


 ジェイロスは思わず目を見開いた。


「俺を騙せると思ったのか?通話に応答がなかった時から、俺は疑い始めてたんだ。あの奴は指で通信器を叩いて応答する。だが今回は全く反応がなかった。明らかに何かがおかしい。違うか?ジェイロス先生。」


 ラルフの口調は冷たく尖っていた。


 ジェイロスの瞳孔が微かに縮んだ。その時、彼は自分が大きな過ちを犯したことに気づいた、重要なポイントを見逃していたのだ。


 あの男の喉は確かに傷ついていた、これは致命的な情報ミスだった、しかし今は後悔している暇はない。もう正体が露見した以上、正面から行くしかない。


「どうした?正体がバレて言葉も出ないのか?それとも、この服を着て俺たちに加わりたいのか?言いたくはないが、お前が来るなら歓迎するぞ~」


 もう正体が露見した以上、ジェイロスもこれ以上偽装を続ける必要はなかった。


「おい、俺が何を持ってきたか知ってるか?」


「はあ?何だ?」


「もちろん――――」


 言い終わる前に、ジェイロスは素早く滑り込むように前に出て、一撃をラルフの顔面に叩き込んだ。


 ラルフは痛みで後退し、鼻を触ると、手が血で濡れていた。


「くそっ、この野郎!」


「よそ見をするなよ。左、右、左、下――!」


 ジェイロスは突進して連続で拳を放った。しかも口で言う方向と実際に拳を振る方向が一致しておらず、ラルフのリズムを完全に狂わせた。


「くそっ、このめちゃくちゃな拳法は何だ!」


 ラルフの眉間の皺は深くなり、その余裕は完全に消え去った。左拳を防ごうとすると、ジェイロスの右拳が肋骨に突き刺さった。上段を避けようとすると、下からアッパーが正確に顎を捉えた。この男の拳の軌道には全く論理がなかった。


「ああ、もちろんジェイロス先生の☆ハッピーハッピーパンチ☆だよ。一発食らえば誰でも超ハッピーになれる!死にたいほどハッピーにな――!」


 ラルフはジェイロスの言葉に次々と惑わされ、何とかその攻撃を凌いでいた。


「このクソ野郎――――!」


 ラルフは隙を見てジェイロスの腹部に一発入れ、距離を取ると、手を挙げてジェイロスを狙った。


 それを見たエリーナは、慌ててジェイロスに向かって叫んだ。


「ジェイロス先生、避けて!」


 しかしジェイロスはただその場に立ち、ラルフを睨みつけていた。ラルフは勝ちを確信したような笑みを浮かべ、指をジェイロスに向けた。


「代わりにティスによろしく伝えろ!《クリア》――!」


 ラルフが呪文を唱えると、エリーナの心に一瞬灯った希望の火も再び消え去った。


 しかし、予想に反して、血肉が飛び散るような光景はなかった。ジェイロスは無傷で、しっかりとそこに立っていた。


 ラルフは目を見開いた。


「何だ?」


「うん?」


「くそっ、《クリア》――!《クリア》――!」


 ラルフはさらに二度呪文を唱えたが、結果は同じだった。


「無駄だ。お前の魔法は俺には効かない。」


 そう言って、ジェイロスはポケットから懐中時計を取り出し、ラルフに向かって投げた。ラルフは反射的にその懐中時計を受け止めた。


「ま、まさか、お前……もう固有魔法の域に達しているのか?」


「まあ……確かに固有魔法は持っている。」


「このクズが、もうそこまで行っているのか?まさか時間系か空間系か?」


「違うよ。」


 ジェイロスが否定すると、ラルフは固まった。


「じゃあ、さっきこれを投げたのはどういう意味だ!」


「うん、もちろんお前の注意を引くためだ。」


「な――」


 言い終わる前に、ラルフの足元から刺すような冷気が立ち上った。氷の結晶が地面から湧き上がり、まるで生き物のように彼の脚を這い上がった。


 その時、彼はようやく気づいた。ジェイロスの一連の攻撃と、自分が後退した数歩によって、彼はすでに窓際に立っていたことを。


 つまり――


「――!」


 ラルフが振り返ると、窓の外に立つティスの姿があった。


 エリーナもティスの姿を見て、驚きで目を見開いた。


 今やラルフは反撃する間もなく、頭部以外の全身が氷で覆われていた。


「よっ、よくやったな!氷の少年。」


 ジェイロスが窓に向かって言った。


 窓の外のティスは拳で窓ガラスを粉砕し、破片が日差しの中で細かな光を反射した。片手で窓枠を支え、身を翻して室内に飛び込み、着地時に膝を軽く曲げて衝撃を吸収した。


 そして立ち上がり、肩に付いたガラスの破片を払い、左腕の氷層にひびが入っていないか確認した。


「しかし、まさかお前にそんな能力があったとはな。俺はもう弔慰金の準備をしてたぞ。」


「ふん、俺は本来、世界を救う時にこの切り札を出すつもりだったんだ。」


「でも今も世界を救ってるようなものだろ。」


 二人の会話を聞いて、氷の彫刻と化したラルフが怒鳴った。


「お前たち、いったい何をしたんだ、このクズども!」


 ここに氷の彫刻がいることに気づいて、ティスはゆっくりとラルフの方へ歩いていった。


「簡単な話だ。これが俺の固有魔法だ。」


「何だって?」


「遠距離魔法停止。お前がどう詠唱しようと、俺が能力を発動すれば、全ての魔法は無効化される。まあ、『無効化』と言うより『停止』と言った方が正確だな。」


 そう言って、ティスはラルフからジェイロスの懐中時計を奪い返し、振り返ってジェイロスに投げ返した。


 エリーナはその場に跪いたまま、ティスの説明を聞いていた。涙がまだ頬に残っている。彼女の視線はティスに注がれていた。いつもだらしなくて、いつも自分を怒らせるあの男が、今は割れたガラスと氷の欠片の間に立っていた。


「馬鹿げてる!魔法を停止できるなんて能力、聞いたことがない!」


「それは俺に会ったことがなかったからだ。今会ったんだから、分かっただろ?」


「くそっ――――!いつかこの氷を破って、お前たち全員を殺してやる!そしてその死体を細かく切り刻んで、犬の餌にしてやる!」


 ラルフは歯を食いしばったが、今は身動き一つ取れなかった。


 ジェイロスはそれを聞いて、ゆっくりとため息をつき、ラルフの前に歩み寄った。


「よし、気をつけておくよ。でも今はちょっと静かにしてもらえるか?」


「な――?」


 言葉が終わる前に、一撃の重い拳が正確にラルフの顎に決まった。ラルフの頭は大きく横に傾き、完全に意識を失った。


「……やっと静かになった。」


 ジェイロスは拳を振った。


 ティスはラルフの言葉の攻撃には全く気にせず、振り返ってエリーナの方へ歩み寄り、彼女にかけられた魔法の拘束を解き始めた。


「悪い、少し遅れたな。それとも、ちょうど良かったか?」


「……」


 エリーナは一言も発さず、まださっきの出来事を消化しているようだった。


「よし、解けた。」


 魔法の拘束が解け、エリーナの手足も自由になった。


「お前がこんなに惨めな姿を見せるのは初めてだな。それに――」


「――」


 ティスがいつものようにエリーナをからかおうとしたその時、エリーナが突然飛びついてきた。両腕で彼をぎゅっと抱きしめ、全身が震えていた。ティスはその勢いで後ろに倒れ込み、後頭部を床にぶつけて鈍い音が響いた。


「おい、何だよ!痛いだろ!」


「……やっぱり。」


「あ?何が?」


「やっぱり……魔法とか……本当に怖い……」


 エリーナは泣きながら言った。その様子を見て、どんなに無神経な人間でもこれ以上からかうことはできなかった。


「怖い……本当に怖かった……私……私……うっ……」


 エリーナは途切れ途切れに言葉を紡ぎ、涙が止めどなく溢れ落ちた。彼女はもう感情を抑えきれず、顔をティスの胸に埋めて声を潜めて泣いた。


 ティスの両手は空中で止まったまま、どこに置けばいいのか分からなかった。しかしやがて地面に置き、エリーナが自分の胸の上で泣くままに任せた。


「おいおい、お前たち、イチャイチャするなら場所を選べよな?俺はまだ独身なんだぞ……」


 ジェイロスは抱き合う二人を見て、心からの不平を漏らした。しかしそう言いながらも、彼は黙って背を向け、その口元は思わずわずかに上がっていた。


 魔法実験室内には、エリーナの断続的な嗚咽だけが残されていた。

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