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ドラゴンリング  作者: 半纏ボク
第七章 セリア・ケイの憂鬱
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ポートブリッジ統合軍海上部隊事務局

 テロによる小爆弾による被害はあったものの、爆発自身は廊下であったため、MLAのオフィスも多少の影響を受けたが、資料が床に散らかっただけで目立った被害は見当たらなかった。しかしながら、セキュリティドアが破損しており、開けっ放しの状態で、立ち入り禁止のテープが貼られていた。

 セリア・ケイ少佐が病院から事務局に戻ってくると、室内の照明が消されていて静まりかえっていた。彼女はいつものように紺のダブルコートの上着を脱ぎかけたが思いとどまった。室内が寒いからである。いつもなら朝から機械を冷やすファンの騒々しい音にうんざりさせられるのだが、妙なもので無ければ無いで気になるものなのだ。

 それにしても、これだけ散らかってしまったのだから、和田継矢中尉が片づけにいてもよさそうである。ケイ少佐は、嫌な予感を感じた。姉さん的存在であるため、駄目な弟同然の和田中尉のことに結構気を配っているのかもしれない。

 ケイ少佐は携帯電話が受信していたメールを確認した。システムの重大な障害やセキュリティ事故に関するインシデントが発生すると自動で彼女の携帯電話に通報される仕組みがあるのである。

 トラブルの通報メールはない。しかし、セキュリティ上の1件の通報メールが気になった。アルテア・アルテミス少尉が市庁舎の地下工事用通路の地図をダウンロードしたログが残っていたのである。市庁舎は重要施設であるため、誰かが参照すると、その履歴が残るのである。そもそもアルテミス少尉には、重要施設の参照権限がないはずである。MLAが市庁舎のネットワークの設計に関係していたことがあったため、工事関連の資料が保存されているのは不思議ではないが、どうして昔の資料がこのような時期にアクセス権がないはずの人から参照があったのか考えると、あまりにも不自然であった。しかも、市庁舎といえば、今まさに安全保障隊が占拠している場所である。

 ケイ少佐は、きゅっと唇をかみしめた。あまりにも不自然である。不自然すぎて自分の知らないところで何か良からぬことが進行しつつある気配を感じたのだ。性格的に和田中尉からなにかすることは考えられない。

「前にも、こんなことがあったわね。あれは和田中尉ではなくてアルテミス少尉だったけれど、突然にいなくなって、確かERC 90装甲車を事務局の車庫に持ち込んだ時だったわ。あの時に書いた私の始末書の事は今でもはっきりと覚えているわ」

彼女は、しばらく考えていたが、電話を取ると交換手を呼び出した。市庁舎の地下工事用通路と聞けば、ケイ少佐でも何が起きようとしているのか想像がついた。

「憲兵隊のアルテア・アルテミス少尉に」

 しばらくして、交換手から返事があった。

「申し訳ありません。アルテミス少尉は不在ですので、代理の者が出ます」

 回線が切りかわるノイズが聞こえてくる。

「憲兵隊のミランダ少尉です。ご用はなんでしょうか?」

「アルテミス少尉は?」

「あいすみません。アルテミス少尉は今日は休暇をとると連絡がありました。兵舎の方にもいないようですが、なにか急用でしょうか?」

「連絡が入ったのは何時の頃かしら?」

「記録によると、ついさっきの連絡です。間違いはありません」

「ありがとう。もう、いいわ」

「やっぱりね。こんなことをするのは、アルテミス少尉ぐらいよ。まったく、MLAまで巻き込んで、いったい、どういうつもりかしら?」

 大きくため息をもらすと、もう一度交換手を呼び出すと、今度は陸上部隊司令部につなげた。

「マールス・グラディウス少尉に至急に伝言をお願いします。『また出番がきた』と……」


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