ポートブリッジ統合軍海上部隊事務局
ポートブリッジ統合軍の航空部隊の基地を兼ねるイエール空港は、安全保障隊によって半分が不法に占拠されているため、航空部隊としての基地機能を発揮することができない状態が続いていた。イエール幹線道路の待ち伏せ攻撃が安全保障隊による仕業らしいという噂が広まるとともに、イエール空港では安全保障隊と統合軍との間に緊張の糸が張り詰めるようになった。必然的に二つの勢力は対立を深め、一発触発の睨みあいとなっていた。
証拠がないためとポーロ・モラン大佐自らの自粛を求める要請に、直接に衝突することだけは避けられていた。それは彼が憲兵隊の中では信頼さていたからこそ実現された仮の平和であった。しかしながら、そのガラスのような平和がくずれさるのは時間の問題であった。
さらにドラゴン襲来時に航空部隊が出撃できなかった問題は、ポートブリッジ統合軍参謀本部に大きな衝撃となって受け止められていた。ポートブリッジ統合軍参謀本部は、ドラゴン追撃戦の実行に先立って、航空部隊を正常化させる必要が急務であった。このため、イエール空港の機能回復を最優先事項と認識し、奪回作戦を発動することとなった。ドラゴン来襲のため待機していた地上部隊にそのまま出動命令が発令され、基地内の各部署にも作戦支援命令が発令された。
セリア・ケイ少佐は 海上部隊事務局に戻ってきていたため、海上部隊事務局にて作戦参加の要請を聞くことになってしまった。
「ケイ少佐、イエール空港の奪回作戦が発令されました。ただちに戦闘指揮室に出頭しましょう。統合参謀本部からの出頭要請です」
呆然と立ち尽くす彼女に、気が利かないマールス・グラディウス少尉が声をかけた。グラディウス少尉は、モン・ファロン火器管制所から用もないのに付いてきていたのである。
「私は気分が悪いわ。誰か他の者にやってもらうわ……」
「拒否されるというのですか? そんなことをしたら少佐の経歴に傷が残ってしまいます。自分は少佐のルシファー追撃戦をともに戦い、その行動力に感服しています。ここはその才能を生かすべく出頭するべきだと思います。武勲を立てることができれば今度は昇進も間違いないでしょう」
グラディウス少尉はおせっかいでもあるようだった。いわゆる脳筋状態なのである。いつものこととはいえ、それがケイ少佐の意志とは真逆のことなので、気分を害してしまった。「それがなんだというの? 基地奪回は海上部隊所属の私の仕事ではないはずよ」
ケイ少佐はやりきれない思いにきびすを返すと、そのまま帰ってしまった。というのも戦闘前提の奪還作戦で、グラディウス少尉は事務局にどうしろというのであろうか? 彼女は大きくため息をついてしまった。




