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ドラゴンリング  作者: 半纏ボク
第六章 ドラゴン
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ポートブリッジ統合軍防空戦闘指揮室

 地上に落下したドラゴンは、最期の時を大人しく受け入れ、夜明け前には穏やかな表情で息を引き取っていた。まるでドラゴンが生と死の概念を理解し、死というものが厳粛なものであることを知っているような死にかたであった。

 一夜がやっとのことで明け、最後までドラゴンを見守っていた統合軍の兵士たちのほとんどが、兵舎に引き上げていくのが見られた。依然として空襲警報体制下であり、対空車両がトゥーロン市街地の重要箇所で警戒にあたっている。シナトラ少将指揮下の部隊の半分は戦闘態勢のまま待機中であった。

 セリア・ケイ少佐は、ドラゴンの移動は単なる偶然ではなく、この世界を揺るがす何かが起きようとしていることを感じていた。それを見とどける必要があることを直感していた。防空戦闘指揮室に戻ったケイ少佐は、ロイド・フランク・モンゴメリー統合軍参謀本部総長に戦闘詳細を報告する中で、陸海空、および、憲兵隊の四部隊総力によるドラゴン追撃戦による殲滅作戦が計画されることを知らされた。

 ドラゴンの最終目的地と予想されるフェアリーリング周辺が戦場となる見込みであった。そこは現在の混乱の始まりの地であり、またケイ少佐の故郷でもあるオランダ王国のベームスター干拓地であった。

 ケイ少佐はなにか落ち着かない気持ちになった。フェアリーリングは今でも異質な生き物をこちらの世界に招いているのかもしれない。ドラゴンを根絶やしにするという作戦には積極的に参加する気はないが、フェアリーリング周辺が戦場となるのであれば、フェアリーリングこそ第一目標にして無力化するための作戦が必要なのではないかと考えた。であれば、自分も参加しなければいけない。まるで忘れ物を取りに戻るような感じで、その気持ちが強く感じるのが、自分でもよくわかった。逃げてばかりでは駄目なこと、過去を清算しなければならないことを彼女なりにきちんと考えると、自分がなさなければならないことはひとつであった。

「自分も作戦に参加させてください」

 ケイ少佐はその場でモンゴメリー統合軍参謀本部総長に直訴した。

「立派な心構えであるが、どうやって戦うつもりなのだ」

 わがままを言う子供をたしなめるような口調であった。モンゴメリー統合軍参謀本部総長の言うとおりである。ケイ少佐は海上部隊の所属であり、参加可能な艦船も限られているため、普段は陸上勤務しかしていないのであれば、乗れる艦がないのである。ゲスト扱いで作戦に観戦参加するのでは意味はない。自分の意思で自由に動く必要がある。陸上部隊も、ほぼ全力で作戦に参加するために、予備車両が海上部隊の自分にまわってくることはない。

 でも、使える車両に心当たりがあった。まるで、このために今まで物事が進んでいるような不思議な縁を感じた。

「参加可能な車両なら、あります」

 ケイ少佐は明瞭に答えながら敬礼すると、さっそく準備にとりかかることにした。彼女が事務局へ戻ると目の前に坂井美春が現れた。

「ケイさん、私は再び軍に志願します」

 ケイ少佐の驚きは言うまでもない。坂井美春には勝てない戦いのことを知っているのだから、志願する理由などなにひとつないのだ。和田継矢中尉が一度誘ったことを聞いているが、その時にはきっぱりと断られている。

「本気なの?」

 ケイ少佐は疲れを見せないで坂井の方に向いた。

「もちろん、本気です。でも、誤解しないでください。本気というのは本当に考えた末の結果なのです。一時の感情とか、気まぐれとか、そんなものでは決してないつもりです。なんていっていいのか、よく自分でもわかりません。でもルシファーの存在がどうしても許せないのです。命の尊厳さを何とも思わない生命体に、私達の同胞の命が蝕われていくのが許せないのです」

 坂井の気持ちはケイ少佐にも通じた。

「そういう話なら、わかったわ」

 ケイ少佐はサムズアップして、よく考えたわね、と褒めたたえた。坂井はケイ少佐のそんな仕草が普段の行動と合わなかったので、戸惑った表情を見せた。

「あ、これ? サラ……、妹のサラが、こういう時はいつも、サムズアップしたのよ。ちょっと、真似したくなっちゃった」

 ケイ少佐は心から坂井の復帰を心から歓迎しているようであったが、妹の名前が出ると、どこか悲しそうな表情を見せていた。


(第七章へ続く)

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