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ドラゴンリング  作者: 半纏ボク
第六章 ドラゴン
85/154

ポートブリッジ統合軍防空戦闘指揮室

「ドラゴンの動きは、どうか?」

 ロイド・フランク・モンゴメリー統合軍参謀本部総長はケイ少佐の作戦に一時は同意したものの、部隊配置を済ませ攻撃の準備を着実に終えていた。

「ドラゴンの集団は、第一防衛ラインから第五防衛ラインまで通過、先頭集団はイエールの上空に到達します」

 操作員がプラネタリウムドームの一部を一時的に見やすい三次元表示にして示した。

「時間切れだ、攻撃を開始する。ケイ少佐はどうやら無駄骨だったようだな。イエールの状況を聞きたい。イエール空港の部隊との無線は確保できているか?」

 フランクリン・シナトラ少将は、モンゴメリー統合軍参謀本部総長にケイ少佐の作戦の失敗の結果を見せつけて、作戦変更を迫るつもりであった。

「良好であります。第一防衛ラインのフローライン中尉との中継をメインスピーカに流します。どうぞ、お話ください」

「私はシナトラ少将である。戦況を報告せよ」

 しばらくの沈黙の間、相手が返事に困っているようにも思える間だった。ドラゴンの大群を相手に劣勢で、その場を繕うために言葉を選んでいるに違いないと誰もが思った。

「閣下、我々は攻撃を受けていません。ドラゴンも未だに見えません」

 じらされて返ってきた答えは、まるで場違いのひょうしぬけした答えとしか言いようがなかった。今度はシナトラ少将が言葉につまった。悪質な冗談を言っていると思ったに違いない。

「閣下、もう一度報告致します。我々は攻撃など受けていません。無線を通しても静かなのがわかっていただけると思います。レーダーの故障かなにかで、空襲というのが間違っているのではないでしょうか」

「どういうことだ?」

 シナトラ少将は操作員がミスをしたのではないかと思ったのだろう。

「そんなはずはありません」

「他の防衛ラインはどうだ」

 さすがにシナトラ少将にも、ただならぬ状況が発生していることに気づいたのだろう。部下に責任をちらつかせることをやめ、積極的に状況の把握に乗り出した。

「第二防衛ラインも戦闘状態でないことを確認。第三、第四防衛ラインも同様。第五防衛ラインも、同じです。攻撃を受けている地上部隊はありません。それどころか、どの部隊もドラゴンの姿さえ確認していません。現在戦闘中なのは海上部隊の地中海艦隊だけです」

「モン・ファロンの火器管制所はどうか? とてもケイ少佐の作戦が効いたとも思えん。ドラゴンは防空戦闘指揮室のここを直接攻撃する気なのかもしれん。油断はするな」

「やはり、戦闘中ではありません。あっ、ちょっと待ってください。ケイ少佐がそこにいるようです。なにかが近くにいると言っています」

「やはり、イエールではなく、トゥーロンの基地本体を直接攻撃する気なのだな。これより、防衛戦に入る。基地の内外からの攻撃で挟み打ちができるかもしれん。ドラゴンの狙いを今までの行動から予測できないか?」

 シナトラ少将は状況把握に成功できたと確信していた。つい言葉に力がこもる。

「変です、ドラゴンの動きに変化がありません」

「それはケイ少佐の作戦が失敗したということだ。改めて報告する必要はない」

「いえ、違うのです。本当に空襲するつもりなら、ドラゴンは旋回しながら高度を落とすはずです。しかし、ドラゴンはここへ飛んできた進路を維持したまま、基地上空をそのまま通り過ぎていきます。降下してくる気配はまったくありません。次々と基地上空を飛び越えていくだけです。今までは数の多さで個体の動きが見えなかったのですが、今でははっきりと断定できます」


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