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ドラゴンリング  作者: 半纏ボク
第六章 ドラゴン
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上空警戒中の早期警戒機E-2ホークアイ

 夜の闇が近づく中、航空母艦〈ジャンヌ・ダルク〉から発艦したE-2Cホークアイ早期警戒機は、トゥーロン・イエール上空の定期巡回コースを航行していた。早期警戒機とは機体に全方向を監視できるレーダーを装備し、空中から管制等を行う航空機のことである。E-2Cホークアイ早期警戒機は、背面に大型の円盤型レドームを搭載しており、その特徴的な外観から、誰にでもすぐに判別できる機体である。その性能は半径四百六十キロメートル内の航空機やミサイルなどを探知できる能力があるとされている。しかしながら、現在の任務は接近する恐れのあるドラゴンの警戒が重たる任務になっていた。ドラゴンがその気になれば地上スレスレを飛行することも可能であるため、その場合には水平線の影になり発見が遅れることが危惧される。このため、高空から監視を行い、目標の早期発見に努めているのである。

 天空は夜の闇へと次第に支配されながらも、E-2Cホークアイ早期警戒機の機内はいつものように最低限の明かりによって維持されていた。乗員はパイロット2名のほか、管制官3名が乗り込んでいる。たった今、機上警戒管制官が異常に気づいたところであった。

「ディスプレイを見ろよ」

 最初に気づいたのは、機上警戒管制官のケニー・エルノー少尉であった。ディスプレイの端に染みのようなものが現れたのは、わずか数秒前であった。それはノイズのように最初はぼやけていたが次第にはっきりと確認できる程になった。そのノイズのようなレーダー反応は、ディスプレイにぎりぎり映っているイタリア半島西側やコルス島、サルデーニャ島の上空からディスプレイの中央に向かって広がろうとしていた。

「こっちのディスプレイも同じだな」

 機上兵器管制官のピエール・ベルリオーズ中尉は狼狽してディスプレイからかぶりをふった。

「ディスプレイに雨雲が映っているのかな。同調や感度を変えてみろよ」

 同僚の助言を受けて、エルノー少尉はダイヤル式のスイッチを左右に何度も回してみたが、レーダー反応は依然としてそこにあった。

「対地速度は?」

 ベルリオーズ中尉も写し出されたディスプレイをのぞき込みながら尋ねた。

「そうだな、えーと、あれ結構遅いな。だいたい、時速百キロから二百キロの間くらいかな。それから、地上数百メートルのところを移動しているようだ」

「移動速度が時速百キロから二百キロで、高度が数百メートルだって! それは間違いなく生き物だ。それがなんだってこんなに雲のように反応するのだ?」

「まさか! そんなことがあるわけない」

 ベルリオーズ中尉とエルノー少尉が自分たちの結論の事の重大さに顔を見合わせた。だが、その結論を下したのは人間だけではなかった。突然に状況表示装置のスクリーンが赤色にかわり、サブウィンドウを開いて情報を表示した。それによると、測定不可能な程に広域な熱源を南から南東の方向に探知したのである。なにものかの飛来をつげているのだ。そのなにものかはレーダーに反応するほどの大きな生物と言えばドラゴンしかありえない。すると、機内の各署のコンピュータのスクリーンが次々とブルーからレッドにかわって警告を示し始めた。

「スクリーンが全部レッド警報になったぞ。コンピュータがデフコン2を発動している。デフコン2なんて、未だかつてなかったのに……」

 ベルリオーズ中尉が大声をあげた。必死の訴えだった。デフコン2の意味は、最高度に準じる防衛準備状態を示すものであり、レベルが1つあがっただけで戦争状態の意味となる。状況に気づいた早期警戒機乗組員の押し殺した叫び声や、ののしり声が聞こえた。

「防空戦闘指揮室に報告。それから、地中海艦隊に護衛機を要請しろ。我々だけでは手にあまる大物だぞ」

 ただちに機長にも状況が伝えられ、全員が持ち場に戻るとともに、コンピュータは統合軍の防空戦闘指揮室に警報を送り始めた。


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