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ドラゴンリング  作者: 半纏ボク
第四章 イエール旧キャンプ場
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トゥーロン市最東端イエール旧キャンプ場

 トゥーロン・イエール市内の雰囲気は以前とはすっかり変わってしまった。市内の中心部に安全保守隊の兵科部隊が進駐する一方で、辺境部であるキャンプ場は依然として混乱の極致にあった。一度燃え上がった避難民の怒りは自然に消え去ることがなく、あちらこちらの街の隅でくすぶり続けていた。普段ならば静けさを取り戻す時刻であるにもかかわらず、今日に限っては街角という街角に避難民があふれたままだった。

 キャンプ場の閉鎖に抗議して、いくつかの騒動が発生し続け、市内全体を巻き込み至るところに多くの傷が残されていた。まず、キャンプ場の避難民たちのいくつかのグループは、市内の中心部の片隅に身をおいたまま決して元の場所に戻ろうとはしなかった。一部はバリケードを築いて建物に閉じ篭る集団も現れた。兵科部隊が治安維持に乗り出したことを知った避難民たちが、安全保障隊の装甲車を通さないために築いたものである。その数は時間と共に、確実に増えていた。

 何度か安全保障隊がバリケード撤去を試みようとしたことがあった。その安全保障隊と避難民の衝突の結果は散々たるものであった。安全保障隊は催涙弾で避難民を蹴散らしながらブルドーザーで強攻しようとしたのである。ところが避難民が黙ってやられているわけがない。どこからともなく火炎びんや石が飛んできて、安全保障隊を苦しめていた。やっとのことでバリケードを撤去しても、その間にも他の場所で数ヶ所のバリケードが新たに築かれてしまうのである。

 双方に相当な数の負傷者が出ていた。負傷者の多くはキャンプ場の避難民であり、道路という道路は血と油のにおいが染みつき、あちらこちらで煙があがっていた。このイタチごっこに最初に、音をあげたのは安全保障隊の方であった。今では、バリケードを間に挟んでにらみあいが続いていた。そもそもキャンプ場には、治安回復のために満足な兵員が配置されていなかったのである。

 そんな中で避難民の代表であるビンセント・マクネアーは統合軍の動向が気になっていた。統合軍の工兵部隊や衛生部隊がキャンプ場内の駐屯地に残り続け、安全保障隊が好き勝手しないように対峙している。彼らは何も言わないがキャンプ場の盾になってくれているのだ。

 トゥーロン鎮守府から引き継いだ組織である海上部隊事務局が兵站にも熱心であるため、どの部隊も海上部隊事務局の依頼で動いているに過ぎないはずであるが、油断はできない。情報機関直属の人間が工兵部隊や衛生部隊の中に紛れている可能性もある。依然としてキャンプ場の管理はトゥーロン市によって運営されているし、今回の大暴動でさえもポートブリッジ統合軍には影響がないのであるから、そこまで熱心になる理由はないはずである。なにかしら作為があるように感じられた。避難民の不穏な動きを監視し、大勢の避難民が基地の方へ流れてくる事態を防ぎたいのかもしれない。

 マクネアーはできるだけ早く海上部隊事務局に出向いて話をする必要を感じていた。良心を持つ人たちが残っているのであれば、まだ希望はあるかもしれない。


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