トゥーロン市内警察本部
フランス共和国の警察活動は、都市圏は国家警察、地方部は国家憲兵隊が担当となっていたため、トゥーロン・イエールは国家警察を引き継いだ組織がそのまま警察業務を担当していた。早い話、発生した場所によって、基地内は国家憲兵隊、基地外は国家警察の担当となっていた。
警察本部はパリとブーシュ=デュ=ローヌ県にのみ設置されていたため、ルシファーの脅威に対するコミューン閉鎖政策以降、ここトゥーロンには警察本部がなかった。警察本部不在の体制では不都合があったため、もともと設置されていたトゥーロンの地方支部局を警察本部として昇格させていた。
セリア・ケイ少佐は、ルシファーとの戦いが終わった翌日の夕方には、帰りたい気持ちを抑えてトゥーロンの警察本部を訪問していた。彼女は警察本部前で安全保障隊の車両を見かけたので、昨晩の肝心な時に一人も見かけなかったことを思い出し、「仕事をしなさいよ」と言いたい気分になった。安全保障隊は警察本部前で何をするでもなくこちらを見ているだけであり、気色悪いので関わりあうのを避けて、本来の目的を果たすべく警察署長に面会を求めた。
彼女が壊した高射砲塔の施設は統合軍の施設であるため、トゥーロン市から責任を問われないが、昨晩のルシファー事件は原則基地外で発生しているためにトゥーロン市内を管轄する国家警察の事案となる。国家警察に事情を説明するとともに、今後の対応について調整しておく必要があると考えていた。このため自ら出向いたのである。
本心では誰かに代わって欲しいところではあったが、あれだけの大立ち回りを起こしたという事実もあったし、なによりも本音としてはルシファーという脅威が現実のものとなったことについて警察幹部に再度説明しておきたかったのである。今回の事案が発生した現場におけるルシファーの防疫処置を完全にやり遂げて欲しいという強い思いがあったからである。本心を言えば自分が念を押さなくても国家警察だけできちんとやって欲しかったのであるが、きちんと確認するのも自分の責務のひとつだからと諦めるしかなかった。




