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ドラゴンリング  作者: 半纏ボク
第三章 ルシファー
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ポートブリッジ統合軍海上部隊事務局

「リトビノフ市長に電話がつながりました。」

 タチアナ・ベルテンス准尉がセリア・ケイ少佐に割り込んできた。

「ポートブリッジ統合軍事務局へ、回線が混乱しているようだ。安全保障隊と連係を取りたいのだが、まだ何も言ってこない。そちらは何か聞いていないか?」

「安全保障隊は話になりません。相変わらずにこちらの指示をまったく聞こうとしません」

「安全保障隊に黙ったまま軍事行動を起こすのは、あとあと問題にならないだろうか? それに市内で軍事行動を起こすには、統合軍の装備では強力すぎるのではないか? そもそもトゥーロンの治安維持は安全保障隊が管轄なのだ。問題は彼らに任せるべきだと思う」

「軍事行動ではありません。私たちが行うのは、憲兵隊による防疫行動です。それも緊急の作業です。どこで何をしているのかわからないような安全保障隊ではあてになりません。しかも、それを確認している時間もありません。それでは遅すぎるのです。今確実に行動している私であれば、ただちに憲兵隊の治安介入部隊(GIGN)を出動させることができます。ですから、そちらに行って防疫行動を実施することを今すぐに承認してください」

「あとで問題にならんだろうか?」

「その手の気遣いは無用です、市長殿。現在、私が本件の責任者を務めていますので、全責任は私、少佐のセリア・ケイが取ります。それに私は本件と酷似する英仏海峡トンネルで発生した戦闘事案の経験者でもあります」

 電話越しであったが、緊急事態にもかかわらず怯まずに対応するケイ少佐の言動が市長にも凛々しく感じ取れた。

「ああ、貴方がその時に陸軍の部隊を助けた少女だったのか。わかった。サント・ミュス病院の封鎖を継続し、関係者の隔離を完了させよう。現在、警察特別介入部隊(RAID)が病院内を調査しているが、事情がわからない。貴方が直接に行動しようとしていることの詳しい説明を聞きたい」

 ニキータ・リトビノフ市長の少女発言に、ケイ少佐は自分が小娘として軽く見られていることを感じ取った。しかしながら、彼女はそんな表情は一切に見せることなく、仕事に集中する姿勢を見せた。

「ルシファーです。サント・ミュス病院に運び込まれたアルバート・ワイマン伍長という男性に寄宿している恐れがあります。まず間違いありません。幸運にも芽胞状態の時に運び込まれたのでしょう。芽胞状態の時は活動を休止しています。しかし、いつかは発芽して移動体に変異し、積極的に捕食を始めます。どちらにしても危険なことにかわりはありません。活動を開始する前の今が最期のチャンスなのです。ですから、事態がおさまるまで病院を封鎖していて欲しいのです」

 リトビノフ市長から血の気がひいていくのが見てとれる。リトビノフ市長であれば、ルシファーの存在を知っているのである。人類を滅亡の危機に陥れている本当の敵であることを知っているのである。

「今までは、たまたま運がよかっただけということなのか……、わかった」

 今日のリトビノフ市長は簡潔に話したがりたいらしい。

「あらかじめ覚悟をしてもらいたいのですが、サント・ミュス病院の封鎖の解除の期限についての約束はできません。それどころか、事態がおさまるかどうかも保証できません」

 リトビノフ市長には行政を維持する責任があった。市長は安全保障隊よりも統合軍のセリア・ケイ少佐のほうが、話が通じやすいと考えた。ルシファーが相手では、今は頼れるものに頼るしか方法が無いからである。

「万一を考慮し、副市長他、行政関係の権限を持つ主要な人物は、ポートブリッジ統合軍の基地に避難させてもらえないだろうか?」

 セリア・ケイ少佐は市長の言っていることは正論と思ったが、彼女の権限ではどうにもならなかった。

「憲兵隊が既に基地のゲートを封鎖しています。誰一人として、こちらに入ることはできません。それは私にもどうしようもありません」


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