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トゥーロン郊外モン・ファロン
和田継矢中尉は電話を切ると、一言を話す時間さえ惜しんで、坂井美春の腕を引いて、自分が乗ってきたMIGHTY BOY軽トラックに押し込んだ。彼の顔は今まで見たことがない程恐い表情である。
「この車を使って、まっすぐ家に帰っておとなしくしていてください。鍵は必ず掛けてなにがあっても外には出ないように……。それから、いつでも市内を出られるような準備だけはしておいてください。本当は送ってあげたいのだけれど、すぐに基地に戻らなければならなくなりました。さっきの相談の続きは、必ずあとでしますよ」
和田中尉はそう言い切ると、MIGHTY BOY軽トラックのドアを閉めてしまった。
「ちょっと、待って。いったい、どういうこと? ワイマン伍長になにか関係があることなの? それなら、私も行くわ。私にも関係あることですもの」
「駄目だ。危険すぎる。二度も奇跡はおきないと考えたほうがいい。これはそんな生易しいことではない」
「でも……」
坂井は力の限り抗議しようとしたが、和田中尉は迎えに来た憲兵隊の緊急車両に乗り込んでいた。




