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ドラゴンリング  作者: 半纏ボク
第二章 トゥーロン・イエール
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トゥーロン市内市庁舎

 新しい世界でも、トゥーロン・イエールにとって最大の負担であるイエール旧キャンプ場が、幸にも不幸にも、さまざまな動きの中心となっていた。トゥーロン市長のミカエル・リトビノフは、最近になって旧キャンプ場で頻繁に発生する騒動について、何らかの政治的な対策を行う必要に迫られていた。

 しかしながら、市長に何かの有効な対策があるわけでもない。問題が大きすぎるのである。それだけに、市長にとっては簡単に効果が期待できる力に頼りがちで、安全保障隊の指揮官であるルドルフ・フォン・シュバイツァー参謀本部長官が唯一の頼れる人物であった。

「旧キャンプ場に戒厳令を発令して、完全武装した戦闘部隊で警備させるべきです。これは戦争なのです。武器の使用を許可いただければ、旧キャンプ場に再び平静を取り戻すことも可能です」

 市長は今までにもシュバイツァー参謀本部長官の要求をいくつものんできた経緯があった。結果的に安全保障隊の力を増長させるものであったが、これもキャンプ場問題を解決させるためには仕方がないと考えていた。

「それはあまりにも危険が大きい賭けだな。これ以上に問題は大きくならんだろうか? それが心配なのだ。キャンプ場はあれでいてビンセント・マクネアーという指導者によって制御可能なのだ。必要以上に刺激し指導者が失脚することにでもなれば、一部の過激な連中が表に出てこないとも限らない。ゲリラ化しようものならテロ行為に走るだろう。そうなっては市民にも危害が加わるようになる。これぞとばかりに政府が無能だと言う連中が現れるだろう」

「そのような弱腰では、なめられるだけです。最初に我々の力を見せつけておかなければ、図々しい奴らはますます増長するだけです。そうなっては手遅れです」

「だが、ポートブリッジ統合軍は武器や装備を提供してくれんよ。それどころか、安全保障隊の最近の動きに神経をとがらせ、弾薬や駐屯地の提供を中止すると勧告しているのだ。はたして我々だけで対処できるだろうか?」

「それは安全保障理事会の協定に違反することになるはずですが……」

「ポートブリッジ統合軍参謀本部は、今朝、安全保障理事会から脱退したのだよ。もう、安全保障隊に対してなんの義務も責任もない。これからは、統合軍憲兵隊が独自に行動するそうだ」

「それは、策略だ」

 シュバイツァー参謀本部長官は歯ぎしりする程に強く毒づいた。

「だが、どうにもならん。どうやら、港湾憲兵隊のポーロ・モラン大佐の意見らしい。もっとも、効果的な戦法だよ。前からキャンプ場の人権について問題にしていたのだが、ポートブリッジ統合軍参謀本部は安全保障理事会の行動については関心を示さなくなっていたから、彼の強い意見にそれほど反対は起きなかったそうだ。はっきりいって、今の安全保障隊の力では避難民を押さえることはできないだろう」

「これは心外です。我々の力を見くびらないでいただきたい。私に二十四時間ください。必ずや避難民どもを黙らせてみせます」

「そう言ってくれるのを待っていたのだよ。だがね、市民から絶対に負傷者が出たり、私有財産に被害が出たり、そんなことがないように頼むよ」

 市長にとっては次の選挙の人気が一番大切である。キャンプ場問題が解決できれば、次回当選は、まず確実に保証されると考えたのだ。失敗しても責任をシュバイツァー参謀本部長官に押しつければすむと計算したのだ。

「それは、わかっています。市長殿」

 だが、その時、愛敬をふりまく参謀本部長官の頭の中には、市長が思いもよらぬ野心的な計画が秘められていた。彼が危険な野心家だったことを市長は見抜けなかったのである。


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