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ドラゴンリング  作者: 半纏ボク
第十章 ブロセリアンドの森
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フランス西部ブロセリアンドの森

 坂井美春伍長はル・アーヴルを抜け、ブロセリアンドの森に着いた。ブロセリアンドの森は、ルテチアから西の場所にある。記録によれば、ドラゴンの脅威に晒されたルテチアから逃れるために、住民の一部がこの地に疎開してきているはずである。しかしながら、生存者の姿を見つけることはできなかった。

 晴れることがない現在の世界では、多くの土地が砂漠化していたが、ブロセリアンドの森一帯にはいまだに緑が多く残っていた。ブロセリアンドの森は、まさしく「伝説の妖精が住んでいそうな森」の代名詞に恥じない深い森となっていた。Polaris MV800バギーのエンジンを切ると静けさが戻り、息を殺した何者かが木の陰に潜み、今まさにひょっこり顔を出すのではないかと想像させられた。「妖精の森」という看板に偽りは無いようである。

 森は広大であったが、一帯には平和な時代に設置されていた「ブロセリアンドの道」というドライブルートの表示があり、道に迷うことはなかった。 坂井伍長は、ドライブルートに沿ってバギーをゆっくりと進めることにした。

 坂井伍長がさらに森の奥に入っていくにつれて緑がさらに濃くなっていくようであり、森の木立というよりは樹海のようになり、風になびくと木々がまるで海原でうねる波のように見えていた。一帯から人類が消え、代わりに鳥がさえずり、泉には魚が泳いでいた。ここにいると、外の世界では人類とドラゴン、さらに、ルシファーとの間で存亡をかけた戦いが行われていることなど忘れてしまいそうであった。

「ここには忘れ去られた自然が残っている。でも、なぜ、こんなところに?」

 ドライブルートは次第に荒れ放題がひどくなり、植物が無造作に行く手を阻むようになっていた。坂井伍長は仕方なくバギーを置いて、歩いて進むことにした。ここは最近に人が踏み込んだ形跡はまったくなかった。だが、よく目を凝らして見ると針葉樹林の根元には、立派に成長した茸が一群となって見えていた。それは、明らかにフェアリー化合物による植物の生長促進効果の影響を受けているように見えた。成長促進効果が、この地では非常に強い影響が出ているようである。

 植物に覆われた周囲をよく見ると、錆びつくまで放置されていた戦車、壊れたランドクルーザー、そんな車両の一部らしき残骸が見えていた。それも一台や二台の数ではなく、かなりの数の車両が森の中に放置されているようであった。どれも腐食が進み、苔や茂で表面のほとんどが覆われていた。その腐食程度はどうみても数十年を経過しているように見えた。あるものはそれ以上の年月が経過しているとしか思えなかった。

 この一帯では、大きな戦闘はなかったはずである。この地域の最後の戦争は第二次世界大戦であり、その時にはランドクルーザーは存在していない。

 坂井伍長は車両用ヘルメットを取って黙祷を捧げると、その中でも特異な装備を搭載しているランドクルーザーに近づいてみた。パラボナアンテナを備えた見たこともない車種であり、なぜこの車両が造られたのか気になったからである。戦闘指揮車と考えられなくもないが、何かが彼女の興味を非常にかき立てるのだ。

 上部の回転砲塔には、後付けでかなりの手が加えられていて、大口径の散弾を連続発射できるようになっていた。このような型のランドクルーザーは見たことも聞いたこともなかった。おまけに、車体全体に対ルシファー用と思われる改装が施してあり、車上に這い上がることを防止する部材が取り付けられているのである。だが、それらは結局役に立たなかったようである。

 トゥーロン安全保障陸軍〈ランドセーブル〉。

 そのランドクルーザーにはそのように書かれていた。

「違う」

 坂井伍長は声を出して反論した。そう、この世界のトゥーロンの安全保障隊にはランドクルーザーは配備されていない。さらに、トゥーロンの安全保障隊には軍規がなく国際法的には陸軍ではない。

 ランドクルーザーの中をハッチからのぞいてみる。内部には戦闘服を着たままの白骨化した遺体が残されていた。しかし、その遺体はどれも不自然な骨の形状になっていて、戦闘服からはみ出していた。まるで元の形が分からないまま骨を継ぎ足して、ひとつの生き物を創ってしまったようなでたらめな配置になっていた。これはまず間違いなくルシファーに寄宿された時に行われる組織の再生と融合の結果であり、ルシファーが動きやすいように寄宿者の身体を改変したための結果に違いない。

 坂井伍長がバギーに戻ろうとしかけた時、突然、鳥たちが何かに怯えるように一斉に飛び立った。どこか遠くから金属が擦れるような鋭い音が聞こえてきた。鳥たちはその耳障りな音に驚いたのである。

 耳を澄ますと、さらに、もう一回、聞こえた。歯ぎしりのような音であり、何かが地面の上で身体を這わせているような音が混ざっていた。そして子供の悲鳴が聞こえた。人間の子供が近くで襲われようとしているように思えた。

 人が残っていたなんて! そんなことを考える前に、坂井伍長は音のする方角へ、とっくに走り出していた。彼女は気がつかなかったのであるが、閉めたハッチの震動で死体のひとつの首にかけられていた認識票が床に落ちた。それには『坂井美春少尉』と書かれてあったのである。

 森を突き抜け、視界が広がると、そこにはヒュドラーがいた。少なくともヒュドラーとしか言いようがない。人間ほどある巨大な蛇のような生き物で複数の頭を持っている。伝説上ではヒュドラーには九つの頭がなければいけないのであるが、フェアリーリングから来た巨大な蛇を最初に見た人間が驚きのあまりに、この生き物にこの名前をつけてしまったのである。ヒュドラーは、今まで知られているどのドラゴン系の種族にも当てはまらないため、ドラゴン系亜生物とされている。亜生物とはいっても出来損ないのドラゴンという意味ではなく、ヒュドラーはドラゴンの祖先の生物から分化した正真正銘の個別種族であり、毒をもつゆえに始末が悪い個体である。

 ヒュドラーは木に登って逃げようとする少女を追いかけていた。しかし、ヒュドラーは木に登ることができないために、くやしそうに歯を擦りあわせて威嚇するのが精一杯であった。所詮は単なる大きいだけの蛇に過ぎないために、知能は低いのである。

 ヒュドラーは少女に気をとられていて、幸い坂井伍長には気づいていなかった。坂井伍長は銃を構えると、ヒュドラーに狙いを定めた。ヒュドラーの心臓がどこにあるのか長い胴体では区別がつかない。脳を狙うにしても、非常に小さく、かつ、身動きが激しすぎる。彼女は思うように狙いが定まらなかった。

 その時である。上空から黒い物体が飛んで来ると、ヒュドラーは忽然と姿を消えてしまった。ヒュドラーを凌ぐ敵の出現に、坂井伍長は慌てて上空の黒い物体に銃の狙いを定めようとした。

「お願い、撃たないで!」

 少女が坂井伍長に向かって叫んだ。それは自分のことを『撃たないで』と言っているのではなくて、上空の黒い物体に向かって『撃たないで』と言っていることは、坂井伍長にも理解できた。

「わかったわ」

 坂井伍長は素直に従った。少なくとも人間を襲う気配を見せていなかったのである。正確に表現するのであれば、黒い物体は坂井伍長が眼中になかったというのが正しい表現である。

「あれは?」

 坂井伍長が空を見上げながら聞いた。

「友達よ」

 坂井伍長は、ゆっくりと上空を見た。先ほどの黒い物体には翼があり、その長い口ばしにはヒュドラーのちぎれた頭部が見えている。おそらく、体長は十メートルくらいはあるのだろうが、その生物は始めて見るものであった。フェアリーリングから出現した生物に違いないことだけは想像がついた。

 少女は木から降りると、手を振って上空の生物に挨拶をしている。すると、その生物は東の空に飛び去ってしまった。

「あなた、誰?」

 少女は不躾な質問をしてきた。人間が減ってしまい、人付き合いが少なくなってしまった影響であろう。

 坂井伍長は気にもせず、少女をじっくりと見た。まだ、年端もいかない少女であった。しかし、その少女は必要以上に大きな剣を腰にぶら下げている。どうやら、敵意は持っていないようであるが、いつでも、剣を抜けるように間合いをとることだけは忘れていない。

「私は、坂井美春。怪しいものではないわ。ルテチアから来たの」

 坂井伍長は警戒を解くつもりで怪しくないと言ってはみたが、少女は別に怯えてはいなかった。

「何しに来たの? あなたは、兵隊の服を着ているわ。それに、銃も持っている」

 少女は淡々とした口調である。敵意というよりは無関心を装っている。

「兵隊の服は動きまわるのに都合がいいし、銃は身を守るためのものよ」

 坂井伍長は率直に答えたつもりであった。

「なにしに来たの?」

 少女はあいかわらず淡々とした口調である。

「ここにドラゴン・タラスクが戻っているはずよ? 傷を負っていたように見えたわ。戻ってこれたのかしら?」

「名前は知らないけれども、年をとったドラゴンなら戻ってきているわ。でも怪我をしているのではなくて、もう歳だから古い傷がひどく疼くのよ。構わないで、そっとしてあげて」

 そういえば、ルテチアに残っていた4天王のドラゴンはいずれも古老であり、最盛期を過ぎていたように考えられていた。それゆえに今回のドラゴンの大移動が産卵目的であったとしたら、古老の彼らには、もはや関係ないことなのであろう。古傷は勲章のようなもの、その疼きに苦しみながらも、終焉までの残された短い人生を、気高く、気品に満ちた生き方を選ぶ。あるドラゴンは強敵との戦いに命の最期の灯を輝かせ、あるドラゴンは自分を見つめ直すかのように静かに最後の時を待つ。ドラゴンといえども、その心は人間と共通するものがあるように思えた。

「分かったわ。ドラゴン・タラスクが戻ってこれたことが確認できたから、これ以上に奥へは進まないようにするわ」

 坂井伍長は素直に少女に従った。その言動に少女は、何か感じるものがあったようである。その無関心な表情に変化が見えた。

「会わせたい人がいるわ」

 その少女は、それだけ言うと剣から手を離して歩きだした。少女には坂井伍長が黙っていても後をついてくることが分かっているようで、振り返りもしないで林の中をかなり早いペースで歩いていた。おそらく、坂井伍長の足音が少女の足音に比べて騒々しいので、振り返る必要もなかったのであろう。しばらく進むと、少女は立ち止まって坂井伍長を待った。そして、やっとのことで彼女が追いつくと、黙ったまま先を指差した。

 指差した方向には、木立の合間に建物の一部らしきものが見えた。かなり昔に建てられていたため、壁という壁は植物の蔦によって覆われてしまっていた。建物は小さな造りであるが手入れはいき届いていた。近づくにつれて、その建物がかつての小さな教会であることがわかった。

 教会には小さな風車があり、風に吹かれる度に、水を井戸からくみあげて、水路に流し込んでいた。水路の先には、小さいが見事な麦畑が広がっているのが見える。

 ふと足元を見ると、大きな岩が道を遮るように埋まっていた。フランスでは非常に違和感があるが、日本では珍しくもないしめ縄による結界が張られていた。不浄のものが外から教会の方へ入らないようにしているのであろう。さらに道端には、見たこともない神が祭られていた。この神は、人間ではなくドラゴンのような生き物を模ったものに見えた。同一視されがちであるが、これはドラゴンではなく、龍である。お供えがあり、今でも誰かが手入れをしているらしい。やはりフランスでは非常に違和感があるが、日本では珍しくもない道祖神のように見えた。深い自然と薄暗い中で、それらは神秘的、畏敬的、侵さざるものに見えた。

「何ものかを寄せ付けないための結界……。教会としめ縄の組み合わせはありえないから、しめ縄の結界は教会を護るためのものではないわね」

 坂井伍長は、じっとその道祖神を見つめた。恐ろしい形相の神を見ていると、何か恐ろしいものから身を護るために置かれたのではないかと、そんな気がしてきた。それは、よっぽど恐ろしいものであったに違いない。

「なぜ、ドラゴンを崇めているの? それに、さっき空を飛んでいた生き物はなんなの?」

 坂井伍長は少女に聞いてみた。

「崇めているわけではないわ。湖のドラゴンは私たちを守ってくれる友達よ」

 少女は、それだけ言うと、再び進み始めた。

「こっちよ」

 森を抜けると、大きな木立に隠れていたかつての教会がその姿を完全に現し、坂井伍長も少女の後を追うように中へ入った。旧トレオラントゥク教会、小さい教会であったが、壁画がとても見事であった。その壁画は、最近造り直されたようであった。最初は、絵が意味していることが分からなかったが、坂井伍長はその意味に気づいた時、背筋がぞっと寒くなる思いであった。

 ドラゴンに生贄に捧げられる人たちが描かれていたのである。まるで、中世の物語の挿絵を見ている気分であった。中世ならいざ知らず、現代においてこんな時代錯誤の話を誰が描いたというのか?

「グリフィスおばあさん。この人がフェアリーの踊り場にいたの」

 薄暗い教会の一室にいたのは、光りを失った老婆がいた。坂井伍長がくるまでは、彼女は黙々と糸を紡いでいたようである。

 部屋の壁には、4枚の写真が飾られていたが、5枚目が飾られていたと思われる位置には四角の日焼けしなかった跡が壁にくっきりと残されていた。これらの写真がコティングリー妖精事件の写真であることに坂井伍長は気づいた。十年前のドラゴンが出現した際に、TV番組でドラゴンとフェアリーリングに関する報道で、何度も映し出されていたため記憶に残っていた。

 コティングリー妖精事件とは、コティングリー村に住む二人の従姉妹が撮ったという妖精の写真の真偽をめぐって起きた論争や騒動のことである。当時は、多くの人が妖精の実在する証拠としてこの写真を見たが、4枚の写真は二人による捏造であったことが後に告白されている。しかし、最後の5枚目の写真だけは本物であるという主張を従姉妹は変えることはなかったとされている。

「よく、こんな所まで来られたの。客人が来られるのは、はて、何年ぶりのことじゃったかな?」

 糸紡ぎの手を休めながら、老婆が口を開いた。

「私はドラゴン・タラスクに会うためにここまで来ました」

 坂井伍長が何を言わなくても老婆は分かっているようであった。何か、禁断の場所の入り口で待ち続ける魔女といった雰囲気である。

「何も言わんでも分かっておる。帰らずの谷に行きたいんじゃろ。だが、悪いことは言わん。あそこには行かないほうがいい」

 老婆は迷うことなく断言している。

「どうしてなの? それに壁画はなんなの? 何か、知っているのだったら教えて欲しいの」

 坂井伍長は聞き返した。

「ほんに、おぬしはまっすぐな心の持ち主じゃ。じゃが、どうして壁画のことを聞きなさる」

 老婆は坂井伍長を試すような口調であった。

「ドラゴンに生贄を捧げるなんて、間違っているわ」

 坂井伍長は感情的な口振りである。

「生贄? あらあら、どの物語のことかの? 壁画のことを言っているのであれば、見た目だけで判断してはならぬ。生贄ではなく、不治の病に冒された者であったとしたら?」

「不治の病?」

 坂井伍長は、あることが頭に浮かんだ。しかし、それを口にするにはまだ早すぎる。

「ずいぶん昔に、ルテチアから逃れてきた者がここで村を造った。ところが、すぐに奇病が流行り始めた。多くの犠牲者が出たが原因すら分からず、村の者は流行を止めることすらできなかった」

 老婆は静かに話し続けた。

「その時のことだった。ドラゴンが現れたのだ。おぬしがいう『ドラゴン・タラスク』だ。最初は恐ろしさのあまり村の若者が武器を持って戦おうとしたのだが、大した武器もなくドラゴンから身を守ることなど叶わぬことだった。だが、ドラゴンは村を襲うことなどしなかった。奇病の犠牲者だけを選んで喰って去ってしまわれたのだ。そのおかげで、はやり奇病が治まったのだ。それは奇跡としかいいようがなかった。誰もが神の啓示と信じた。こんな小さな村では、それがどんなことを意味するか、お嬢さんには分かるかね」

 坂井伍長にはすぐ分かった。

「それ以来、ドラゴンを祭るようになったのね。そして、再び、病気に冒された者が現れるとドラゴンに捧げるようになったのね」

 坂井伍長は言った。

「そのとおり。今では村もなくなってしまったが、その信仰の痕跡だけが残っておる」

 老婆は、坂井伍長に当てられたことがいかにも嬉しそうであった。

「もうひとつだけ、確かめたいことがあるわ。不治の病って、人が人でなくなり、その……、変に思われるかもしれねいれども、身体がバラバラになったり、逆にくっついたりしてしまうのでしょう?」

 坂井伍長には、既に分かったような気がした。しかし、焦ってはいけない。

「そう、その病に冒された者どもの亡霊がさ迷い続けているのが帰らずの谷じゃ」

「ドラゴンがルシファーに犯された人間を喰っていたのだわ」

 坂井伍長は考えてみた。ドラゴンは、なぜ他の村の人たちには手をつけなかったのであろうか? まだ、結論は出すには早い。しかし、今まで漠然としていたパズルが次第にあるべき場所に収まりつつあるのは感じられた。まだまだ、秘密がありそうね。

「帰らずの谷に行くには、どうすればいいの?」

 坂井伍長は、帰らずの谷に強い興味を持った。そこには他の秘密も隠されているに違いないと、行く必要があると確信していた。

「帰らずの谷で、一夜を過ごしてはならぬ。あそこには病で倒れた者どもの亡霊がさ迷い続けていて、恐ろしい夢にうなされる。それは、まことに恐ろしい夢……」

 老婆が言った。

「恐ろしい夢ってなんのこと?」

 坂井伍長が聞きかえした。

「そう。自分が病に冒されて死んでいく不吉な夢なのだ。だが、夢の中に現れる自分は、確かに自分なのだが、決して自分ではない」

「どういうこと」

「私にも分からぬ。誰にも、分からぬこと。いや、待て、ジンなら知っているかもしれぬ」

「ジン? 何者なの?」

「帰らずの谷に住む者じゃが、本名は知らぬ。帰らずの谷の謎を解くとかいっていたが、もう十年も住みついているようだ。会ってみるつもりか?」

「もちろんよ」

 坂井伍長は自身に満ちた口調で言った。

「気をつけていくがいい。ジンのところまでは、フランシスに連れていかせよう。おねしは、優しい子だが意志は強いようだ。帰らずの谷の亡霊にも負けることもないだろう。だが、忘れるではないぞ。夢の悲しみに喰われてはならぬことを……」

 老婆は、それだけ言うと先ほどの少女を呼んだ。

「よいか、この人をジンの所へ連れていっておくれ。フランシスは、すぐに帰ってくるのだよ」

 フランシスは、黙って坂井伍長の服を引っ張った。

「ついて来いというのね」

 坂井伍長は、もう一度、少女について歩き始めた。


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