76 【~レオナルドside★NO.2~母と息子の内緒話~】
可愛らしい鈴の音を鳴らすような声が聴こえてくる。
私の私室にアリシアがいる。
しばらくの間、彼女の声を聞いていようか。そっと近づき驚いた表情をみるのもまた楽しそうだ。
開いていた扉に寄り掛かるように存在を消して様子を伺う。
「「……白薔薇の間は……未来の妃殿下の部屋ではありませんか。私が使うのはおかしいと思います!!」」
真っ赤な顔で無理無理!と必死に訴えている姿も愛らしい。
たが、こんなにも嫌がることはないじゃないか。
少しは意識してくれていると思っていたのだが……意識しているからこその否定もあり得るな。
どちらにしろ逃がすものか。君以外の女性はこちらこそ無理だから……。
『『……残念ながら、それは出来ないよリア。』』
微笑を浮かべながら声を掛けていた。我ながら凄みのある笑みがでてしまったと感じている。
アリシアは驚いた表情で固まって動かない。
あぁ。なんと可愛らしい。
同じく凄みのある微笑みを浮かべている母上が『こちらに来なさい』と声を掛けた。
目は笑っておらず、『一体何をしていたの!遅いじゃない!!あなたまだまだね。』とお怒りを通り越し呆れているように見える。
側に歩み寄ると防音魔法で会話を遮った。
『頼んだ手続きは問題なく終わったのかしら?』
『『はい、母上。一部妨害はありましたが滞りなく済ませました。』
『そう。その妨害とやらはなんとなく察したわ。
今はアリシアちゃんよ。あなたのことに一切興味がなさそうね。この部屋にもいたくないみたいだし油断したら逃げ出しちゃうわ。
私は決めたの!愛義娘になる子は可愛いアリシアちゃんだけ。他の娘はいらないわ。
いまこの時を逃せば我が家のお嫁さんには来てくれないわね。領地へ下がってしまうか……別の地に身を隠してしまうか……素敵な殿方がアリシアちゃんをあっという間にかっさらって居なくなってしまうかよ。
此度の舞踏会で我が国の上位貴族、他国の王族や貴族がアリシアちゃんに興味を示して狙っているのよ。
グランツ家の美しき公爵令嬢。ドラゴンレアール国の最高位のご令嬢の地位。謎多きエメラドーナ国両陛下の姪の立場でしょう?あちらの国と縁を結びたい者は多いのよ。家柄も容姿も性格も全てがパーフェクト。歳もまだ若いから世継ぎの誕生にも問題はないでしょう?アリシアちゃんに似た孫を……と望む者はきっと多いわ。(わたくしも欲しい……)まだ14の歳であの美しさなのよ。どのような成長を遂げるのか共に過ごしていくなんて贅沢すぎるわ。息子の妻に迎え入れたいと野心を剥き出しにしていたわ。お嫁さんとして最高の女性よ?現在この世で一番魅力的な花嫁候補でしょうね。
もたもたしていたらアリシアちゃんは手に入らなくってよ!!』
(本当はエリザベスの愛娘ちゃん♡……未熟者のあなたにはまだ教えてあげないわ★
愛に恋に翻弄されて悩んで、悩んで苦しむといいわ~
思い通りにいかないのが恋愛なのよ。
冷徹息子からようやく人間になれる日が来るかもしれないのね。母としては息子成長は喜ばしいことだわ!)
『まぁ、あのピンク頭の娘のおかげで子息方の気持ちはアリシアちゃんに向かわなかったみたいだけれど。
でも皆がまともになったらどうかしら?あの天使なアリシアちゃんを欲しがってしまうわ。
それもあっていち早く婚約を結びたかったのだけれど保留のままでしょう?唯一を手に入れられないあなたは破滅。王国もあなたの代で滅んでしまうわ。
出会ってすぐに異性として興味を持ってもらえないなんて……意中の女性を手に入れられないだなんて……もっとあなたの魅力を前面にお出しなさいな!
あなた本当に私の息子なのかしら?
大切なものを手にいれるための知略、外堀を完璧に埋め逃げ場を潰していく手法をあれほど教えてきたはずよ。のらりくらりと……父親似ね。そのうちゲジゲジ眉毛も似てきちゃうわよ?』
『『……母上は相変わらず手厳しい。父上もその知略に引っ掛かったお一人ですからね。お気の毒に……
まぁ、私は母上似であると思いますよ。父上のように純粋培養なところは微塵もありませんから。
……しかしあの眉になるのだけは身が滅んでも嫌ですね。
そうならない為にもじわりじわりと私に夢中にさせる手筈です。これも計画なので心配なさらず安心していて下さい。
恋や愛の駆け引きは存分に楽しめと母上が小さな頃からおっしゃっていたこと。おかげさまで常時この胸の高鳴りが止みません。生きているとはこのようなことかと喜びしかないのです。
彼女を手放すつもりは毛頭ありませんのでご安心を。 私の唯一はアリシアだけです。彼女を手に入れられなければ破滅ですからね。私も。この世も。母上も……
執着心の強さと腹黒さは母上譲りなので問題ないでしょう?
あなたの息子を信じて温かく見守っていて下さい。必ずや母上の愛しの娘の地位を献上致しますから。』』
『まぁ、失礼しちゃうわ。私も純粋なところはほんのすこ~~しはあるはずよ。きっと……
でもいいわ。私のためにも頑張って頂戴な。それにあなたが楽しそうだからゆるすわ。しっかりおやりなさいな。』
(……。わたくしに余裕をみせるなんて100万年早いわよ。いつまでも変わらないあの冷静な表情を崩してみたくなったわね。そうねー。……そうなると強力なライバルが必要だわ。
誰かイイ人いないかしら?
……フフ♡フフフフフ♡
あらあらあら~居るじゃないの!適任者が!!障害があれば、それが高ければ高いほど恋の炎は燃え上がるものよ!
初めてあの子の焦る顔が拝めるかもしれないわ~早速手配しなくっちゃ♪)
今後起こるであろう““アリシアちゃん争奪戦””を頭の中で思い描きながら、ローズマリー・ドラゴンレアール36歳、この国の最強王妃は瞳をギラギラとさせ悪い顔で美しく微笑んでいるのだった。
母上が何か企んでそうだが……私のすべきことはただ一つ。
彼女が学園入学した後も隣に私がいないと落ち着かないぐらいに夢中にさせることだ。
レオナルドの脳内はアリシア攻略で忙しい。一つ一つ逃げ場を失くしていけば、自分の元に落ちることを間違いないと確信している。
母上と同じ悪い笑みが溢れ出てしまってたことで、アリシアの逃げ場が完全に失われていく。
彼女は今晩からこの部屋で夜を過ごす。朝目覚めたら一番最初に挨拶を交わそう。そして、一緒に食事を摂り、庭園を散歩し一日中そばにいよう!溜まった公務は夜やればいい。
この10日で私たちの関係を変えて、二人の間の厚い壁を取り除こう、そしてアリシアの心を手に入れるんだ。
味わったことのない激しい胸の高鳴りに気分が高揚していく。
さぁ、作戦を実行していくのみだ。




