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『ちょ……アリシア……まっ……待って……まだ話が…………せめて説明してからー……!!!』
《お兄様……何か言ってたな。とりあえず、アモーレの魅力の力を防御できるものをあるだけ持って急いで戻ろう!お兄様に怒られる前に……》
普段優しくて、妹に甘々で仕方がないな~と言いながら何でも許してくれるデレデレなお兄様に、一度だけしこたま怒られたことがある。そのときの恐ろしさといったら……。世界が滅亡すると思わせるほど怖かった。怒らせてはいけない人、現在断トツ1位なのである。だから急ごう!
アリシアは自分のお店のアトリエに転移していたのだった。
攻略対象の公子たちに会ったら渡そうと思っていた物に最上級の保護魔法と無効化の魔力を流していく。虹色に輝き魔力が行き渡り、成功していることを確認してから箱の中にしまっていく。
次はリカルドと子息たちの対処だ!
ここ数年お菓子作りにも力を入れていたアリシアは、次にアトリエに来たら作ろうと思っていたあめ玉の材料を冷温庫の中から取り出した。
たっぷりのグラニュー糖を水で溶き、火にかけて糖蜜を作る。白ザラメを大きめの鍋にどばーっと入れ、糖蜜を少しずつかけながら、くっつかないように菜箸で優しくかき混ぜていく。
本当なら二週間近くかかる作業なのだが、そこは魔法を巧く使い完成形まで一気に持っていく。
アトリエ中が甘ったるい匂いに包まれていた。
完成したのは ““ 金平糖 ”” 星の形がなんとも可愛いらしい。
本来なら作る過程で食品用の着色料などでカラフルに色付けするのだが、この世界には流石にない。今回出来上がったのは白一色。金平糖はカラフルな色が魅力的なのに、このままではその良さが全くない状態である。ただの小さな砂糖の塊が大量にあるだけ。
でも、ここからアモーレ対策をいれてアリシアが最後の仕上げをしていく。
集中が切れないように、大量の金平糖に手のひらをかざす。
「「インヴァリデーション(無効化)!!」」
次の瞬間、アトリエの中はキラキラと虹色の光で覆われていた。大鍋の中を覗くと金平糖が七色に変わっていた。
虹色の金平糖の出来上がり!!
この無効化入り虹色金平糖を薬代わりに配布して、魅力の力に影響された人達に舐めさせれば術が溶けるかもと考えていたのだ。
《そうなんです!あの時夢の中で金平糖で可愛らし~いお菓子の家を作って、大好きな大量の金平糖に埋もれて、金平糖を主食にして金平糖をおかずに食事をする。そして、色々な種類(種族?)の金平糖ちゃんたちとお友達になり、末永~く幸せな暮らしをしていくという夢を見ていました!そこからヒントをもらったんだよね~!》
アリシアの金平糖愛があったからこそ、このスペシャルな無効化入りアモーレ対策金平糖を作り出せたのだと自分自身を褒め称え、満足感が半端ない興奮状態のアリシアだった……
「やったねー!上手く出来たみたい!!これでアモーレの魅力の力が解けるといいな。」
虹色金平糖をお大きめの瓶に詰めていく。8つの瓶にしっかりと納まってキラキラしている。小分けにできるように商品を入れるラッピング用の小さな化粧箱を大量に袋の中にいれて準備はオッケー。あとは皆さんに手伝ってもらっちゃおう!
「さぁ、戻ろう!!」
レオナルドの執務室に残された攻略対象者の方々は……
アリシアが親指をぐっと立て、満面の笑顔を浮かべ、突然消えたことに唖然としていた。
『もう!アリィはいつもそうなんだからー!!思い立ったら即行動するのはやめてって言ってるのにーー!』
とクリストファーがアリシアに向け文句ともとれる言葉を口にして嘆いていた。しかしながら、もう既にアリシアは姿を消していたあとだった……
公子たちは呆然と立ち尽くし、アリシアが消えた場所を見つめていた。
『…………』
『…………』
『…………』
『…………』
『『……クリス?……アリシアは一体……何処へ行ったのだ?』』
『……申し訳ありません。わかりません。しかし、必要なものをとってくると言っておりましたし、戻ってくると思いますので……お待ちいただけますか……』
レオナルドは、クリストファーがアリシア相手であるとあのように砕けた口調、態度を見せるのかと思っていた。人間味があり、年相応で可愛げがあると感じていた。
そして、アリシアの突拍子のない行動に常に驚かせられながらも、泣いたり、笑ったりと忙しく百面相を浮かべる彼女は、実に “ リア ” らしいと吹き出し笑いそうになるのを必死にこらえるのだった。
緊張感のあるこの場で皆にわかられないように眉間に皺を寄せながら無表情を作りクリストファーに頷いた。
““ コンコンコン ””
執務室の扉をノックする音が聞こえてきた。
『『誰だ。』』
『リカルド・フィリップスでございます。遅ればせながら参上いたしました。』
『『入れ。』』
『失礼いたします。』
『先ほどは失礼いたしました。遅くなり申し訳ございません。私の愛しい女性をお送りさせていただく許可をしていただけたことに感謝申し上げます。』
『……なっ!まだそんな戯言を……!!リカルド目を覚ませ。あの女の魔力に溺れるなどお前らしくない!!リカル…………』
『アクアジーク、待て。何を言っても無駄だろう。リカルドと二人で話がしたい。皆は隣の控え室にて待つように。』
『……しかし……正気でないリカルドと二人になど出来ません。私を側においてください。』
セルカークは心配になり声を掛けた。
リカルドは国最高の武人と言っても過言ではない。剣術であれば、レオナルドと同等の力を持っている。今までの練習や試合に於いて、セルカークは剣術でリカルドに一度も勝ったことがない。そのような経験から、魅力の力を受けているリカルドと二人にするのは危ないと判断したのだった。
『セルカーク……心配ない。大丈夫だ。下がりなさい。』
『…………レオ兄さま。』
セルカークは俯いた。
『それでしたら私の立ち会いをお許し下さい。私はあの女の力のことは誰よりも詳しく知っております。王太子殿下の力となれるでしょう。それに、お二人で話をされている最中にアリシアが戻ってくるかもしれませんし……リカルド殿の姿を見たら……またパニックを起こしかねませんし……』
『『……そうだな。クリスに頼むことにしよう。』』
『皆様方ご安心下さい。何かあれば殿下を必ずお守り致しますしますから。』
セルカークを安心させるように穏やかに微笑む。人たらしのクリストファーだからできる微笑みスキルである。
『わかりました。クリス……殿下を頼みましたよ。何かあればすぐにお呼び下さい。それでは失礼いたします。』
セルカークが一礼し、みんながそれに続く。そして、隣接する控え室に下がっていった。
『『さて、リカルド。自分の身に何が起こっているかわかっているか?』』
『いえ。私はいつも通りです。なにも問題はございません。』
『『そうか……ならば、あの娘のことはどう思っている。』』
『あの娘とは……アモーレ嬢のことでございますか。』
レオナルドは頷く。リカルドは不思議そうな表情をしていた。
『アモーレ嬢はとても素晴らしい女性です。私が出会った中で一番思いやりがあり優しく、自分は平民出であるからこそ人々に寄り添い他人のために力を尽くそうと力を注ぎ懸命に頑張っているご令嬢なのです。
何より可愛らしく私の全身全霊をかけ護って差し上げたいと思える特別な人です。いずれは妻に迎えたいと考えております。
男爵令嬢なので、身分差はありますが、必ずや父上初め家族を説得し婚姻を結べるようにいたします。
近々、アモーレ嬢を王太子殿下にご紹介いたしますね。殿下のお力添えがあれば婚姻も可能になるかもしれません。
宜しくお願い申し上げます。』
リカルドはキリッと立ち上がり深く頭を下げ、アモーレとのことを願い出た。
レオナルドはリカルドの締まらない表情と言葉にどうしたら良いものかと頭を抱えた。
クリストファーを見るとこちらも困った顔で顎に手をおき、何かを考えていた。
しばらく間、沈黙が続く……
すると……
扉の近くが淡くひかり空間が歪んでいく……次の瞬間、アリシアが沢山の荷物を抱え、レオナルドの執務室に戻ってきたのだった。
いち早く反応したのはリカルドだった。
『曲者か!!』
「えっ……?……リカルド様……??」
リカルドに気がつき声を掛けようとしたのだか、いかんせん持っている荷物が重すぎて、まず初めに、持っていた物を端の方に置きに行こうと歩き出そうとしていたら……
『……私のアモーレ嬢を苦しめる悪女め!!なぜ殿下の執務室に!許せん!覚悟しろー!!!』
と言いながら、リカルドが剣を抜く。
アリシア目掛けて勢いよく飛び出し、切りかかってきたのだ。
「「……うそ!!イヤ。……やだ……やめて……殺さ……な……助け……て…………」」
次の60話は、59話内で出てきたアリシアをしこたま怒りつけた ““ クリストファーの激怒 ”” を書きたいと考えています。
お楽しみに~★★




