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 『『アリシアが死ぬだと……?!どう言うことだ!クリストファー、アリシアに何があったのか説明しろ!』』



 『はい……ですが、今はこの場からいち早く去らねばなりません。なんらかの強い力により正気を失っている者が多数おります。おそらく……リカルド殿もそのおひとりかと。

 現在影響を受けておられない、セルカーク殿下、アクアジーク殿、イシード殿そしてエリック殿と共に、この場をお離れ下さい。

 ……アリシアに関してですが、この力の影響を受け、命を落とす可能性があります。殿下……全てをお話ししたら……アリシアを……妹を助けて下さいますか……』



 『『あぁ……わかった。』』


 

 レオナルドは表情が強ばり、護るようにアリシアを包み込む。



 アリシアを横抱きにし立ち上がると同時に国王陛下に合図を送っていた。

 国王陛下もこの場の様子がおかしいことに気付きいたようだ。国王陛下が対処するようにと宰相や側近達に指示を出しているのがみえる。

 その様子をレオナルドが確認すると国王陛下に向け、力強く頷く。



 『『皆、行くぞ!!』』



 『『『『  はっ! 』』』』



 しかし、リカルドはなかなか反応しない。

 まだ、アモーレと見つめ合ったままである。



 『『リカルド!!』』


 『『リカルド!来い!聞こえないのか!!』』

 



 『……はい王太子殿下……。ですが……私はこちらのご令嬢をお送りしてからでないと……後程、合流致します。どうかお許しください……。』



 (やはり、クリスの言った通りリカルドはダメが……)


 レオナルドはリカルドの表情や様子を注視する。

 隣にいるアモーレは不気味な笑みを浮かべリカルドにぴったりとくっついていた。

 レオナルドはこの女がこの件に関係しているのではないかと思っていた。

 しかし、目の前にいるアモーレからは魔力が感じ取れないし、どのようにリカルドを操っているのか検討もつかない。証拠がなければ咎めることも罰することもできないのがこの国の法律なのである。


 

 あの曲がったことが嫌いな王族第一主義者のリカルドがレオナルドの命令に従わなかったことに公子達は驚きを隠せない。



 『リカルド!おまえは何を言っているんだ!王太子殿下の命令に背くというのか!!しっかりしろ!お前らしくないぞ!!』



 小さい時から年齢が近いことから仲が良く、弟のような親友のような存在のリカルドをアクアジークが叱責する。

 王族のためなら自分の命をかけることを厭わない真面目なリカルドの信じられない言動に腹を立てる。リカルドを諭そうといつも穏やかなアクアジークの口調が荒くなっていた。



 『あぁ……自分でも殿下の命令は絶対だとわかっているんだ。頭では解ってはいるんだが、どうしても彼女と離れたくない。体が……心が……拒否している。胸が締め付けられるぐらい苦しくなるんだ。だからすまない……彼女を無事に送り届けるまでは……一緒に行くことは出来ない!許してくれ……』



 『!!お前、いい加減にしろよ!目を覚ませ!!そんな女よりもレオナルド殿下を護るのが我々の務めだろう!自分の立場を考えろ!おい、リカルド!!』



 『『アクアジーク、もういい、止めろ。』』



 『ですが……』



 レオナルドは横に首を振り、アクアジークの発言を遮る。

 アクアジークはその場で放心したように項垂れた。


 


 『『リカルド、執務室に必ず来い。出来るだけ早急にだぞ。わかったな。』』


 

 『……畏まりました。王太子殿下……必ず……』


 

 レオナルドは、一番安全だと判断した王族の居住区に繋がる通路に向かって歩きだす。リカルドを除く公子様方を引き連れて足早に下がっていった。

 

 



 (『あ~あ。みんないっちゃった~攻略まだなのになぁ。まぁ、ゆっくり攻略していくのもありだよね!それにアモのリカルドさまに紹介してもらえばいいっか♪』)



 『ねぇ~リカルドさま♡♡アモのお願い聞いてくれるよね★』



 アモーレは絡みつくようにリカルドの腕に自分の手を回し、恋人繋ぎをしながらリカルドの鍛えらた腹筋をツンツンしおねだりする。

 リカルドは頬を染め頷いた。



 (『そういえば、あの隠キャの王太子に姫抱っこされてた女はだれなの?みたことないんだけどーあんな子ゲームに出てきた~?いたっけ?』)



 『王太子さまと一緒にいたあの女の子はだぁれ?知ってるなら教えてほしいな♡』



 『あの方は、グランツ公爵のご息女アリシア様ですよ。お美しい方ですよね。レオナルド王太子殿下の想い人のようです。ご婚約の話もでているとか。近い将来王太子妃として殿下のお隣に立たれ、ゆくゆくは国母となられる方ですよ。』



 (『はぁー?!あのイケメン王太子の婚約者?公爵令嬢?そんなキャラ出てきてないんだけど!あの隠キャはアモの一番に決めたのにー。あーそっか。隠キャルートにおねえ突入したことないんだったわ。だからわかんなかったんだよ。

 ……!!!そゆこと!?乙ゲー特有のいじめ役!あの公爵令嬢はアモに婚約者をとられて怒り爆発しちゃう隠キャルートの悪役令嬢なんだよ~!

 さ・ら・に♪隣国の悪役王女も加わって学園スタート!本編スターティン!になるのかも~★

 今はまだ王太子さまはあの子にぞっこんラブきゅんかもしんないけど、アモに夢中にさせちゃうんだから!悪役公爵令嬢から奪って幸せにしてあげるね。待ってて王太子さま♡ふふ♡

 王太子さまとアモが結ばれたら、アモは王妃になっちゃうじゃん!えへへ♡アモーレ王妃か~♪♪いい響き!イケメンに囲まれて過ごす女子の憧れごちで~す★』)



 『リカルドさま。私も王太子さまにご挨拶したいの。リカルドさまは今から執務室?って所に行くのよね~♡アモちゃんも一緒に行ってもいい?連れてってくれる~?』



 『……それは出来ませんよ。王太子殿下が下がられた場所は王族の居住区ですよ。許可のない者は入ること許されていません。たとえ、友人や顔見知りであっても……。だから今日は帰りましょうか。君の屋敷まで送っていきますよ。』



 『えー。アモちゃんも行きたかったのに~。どうしてもダメなの~?』



 『次の機会に王太子殿下に必ず君を紹介しますよ。愛しのアモーレの願いですからね。さぁ、お手をどうぞお嬢様♡』



 リカルドはアモーレに眩しい甘々な笑顔を向けている。そのイケメンの笑みにアモーレはメロメロ。リカルドの男らしい手に自分の手を添える。そして、満足気に鼻歌を奏でながら屋敷に戻って行ったのだった。





 一方、執務室にて………



 アリシアを執務室に備え付けられているエンジ色のカウチソファーに横にさせ上等なクリーム色の膝掛けを優しくかけてあげる。うっすらと残る涙の跡にレオナルドは眉間に皺を寄せた。



 『レオナルド殿下、何が起こっているのですか。リカルドの様子もおかしいようですし……傍にいたあの女は一体……』



 『『私もよくわからん。クリストファーが来るのを待とう。その前に、セルカーク!あの女の素性はわかったのか。』』



 『はい。ご報告いたします。あの女はピアニッシモ男爵の義理の娘のようです。正妻を1ヶ月前に事故で失くし、愛人として囲っていた娼婦を後妻に迎えたようです。その連れ子が先ほどの女、アモーレ・ピアニッシモです。厳格な性格であった男爵も愛人を囲うようになってから様子がおかしくなったと周囲から距離を取られるようになったそうです。

 また、正妻の事故もおかしな点が多くあり、現在も捜査が続いているとのことです。

 平民出の親子なので魔力はないはずなのですが不思議な力を持ち合わせているようです。二人に関わった者は必ずと言っていいほど精神を病み、激情に駆られ冷静さを失い、彼女らに全身全霊を尽くし、自我を崩壊させているようなのです。リカルド態度もあの女の力に侵されていると推測されます。しかし、その人を惑わす力をどのように発動させているのかは不明です。

 現在わかっていることは以上ですが、男爵家に我が機関の者を忍ばせましたので新たな情報が入り次第ご報告させていただきます。』 



 『『そうか。』』



 『失礼いたします。遅れて申し訳ございません。』



 『『あぁ、来たか。早速だが話を聞かせてもらおう。』』



 クリストファーはアリシアがすやすやと穏やかに寝息をたてている様子を確認すると、レオナルドたちの方に向き直り話を始めた。



 『まずあの場の異常に関してですが、アモーレ・ピアニッシモの仕業で間違いありません。魅力の力と呼ばれる力を何らかの方法で発動させているのだと思われます。自身に好意を向けさせ、陥落させるといった禁止された魔力です。

  ““魅力”” が関わっているのではないかと思われます。

 魔力の強いリカルド殿や貴族子息を操る力は相当強力な力であると言えるでしょう。

 魅力の力について記されたものは数少なく、世の中に深く浸透されていません。私もこの力のことを調べてから初めてとても危険な魔力であると感じ身震いしました。

 魅力の力は、太古のあずまの国に現れた力のようです。東国の魔女と呼ばれた3人の母娘たちだけが使えた力で、人を惑わし、狂わせてしまうということから、魔女狩りを受け処刑されています。自我を失わさせ、従わせる。力に充てられた者は周囲の状況の判断が出来なくなり、精神を崩壊させていきます。一国を操ることも簡単にできてしまうような強大な力なのです。

 現在はその力を受け継いでいる者はいないはずです。全世界にも禁止魔法として登録されているはずなのですが……状況から言って、おそらく母親も同じ力を持っているのではないかと考えられます。なぜあの母娘がそのような力を使えるのか……

 ……アリシアならばこの力に関して詳しく知っているようなのですが……あのように時折発作を起こしてしまうのです。ですから、話をしてくれるかどうか……』



 『『魅力の力か……なるほどな。禁止魔法か……厄介だな。その力をアリシアが詳しく知っているのか……確かに先ほどのアリシアはいつもとは様子が違っていた。何かに怯え、苦しみに支配されているような、そんな顔をしていた。苦痛を取り除くことができるのなら助けてあげたい。力になりたい。

 ………だが、アリシアは何故あの女の力のことを知っていたんだ?接点がないだろう。初めて会う女ではないのか?』』



 『本日、初めて会ったようです。殿下もご存知の通りアリシアにもまた不思議な力があります。

 子供の頃になりますが、アモーレ・ピアニッシモについて予知をしていました。一度だけですが、私に事の詳細を話してくれたのです。

 その予知によりますと、あの女の力の影響で巻き込まれたアリシアは必ず命を落とします。それもとても残虐な方法で……

 申し上げ難いのですが、セルカーク殿下を初め、私を除く四公爵家のご子息様方がアモーレの力により大いに影響を受けてしまい、妹の死に深く関わってしまうのだとか。リカルド殿のようにあの女を崇拝し、愛しい存在として扱い始めると、アリシアは邪魔な存在と認識され、排除対象者になり殺害されてしまうのです。』



 『なんだと!?私たちがアリシア嬢に手をかけるということなのか?私は絶対にそのようなことはしない。神に誓える!』



 セルカークがクリストファーに猛烈に抗議をする。



 『はい。今の殿下ならばそうでありましょう。アリシアをどうこうしようという考えはないでしょう。

 しかしながら、あの女の力は思いの外、手がつけられず強大なものなのです。魅力の力に充てられてしまえば、自我はなくなり、躊躇うことなく意図も簡単にアリシアを抹殺、殺害することでしょう。』


 

 『なっ!!』



 『セルカーク殿下もリカルド殿の様子をご覧になったでしょう。王太子殿下のご命令であっても聞けなくなってしまう。それがあの女の魅力の力なのです。』



 セルカークは伏し目がちに視線をおろす。



 『ですが、今はまだあの女の力に影響を受けておられないですよね。あの女の力の対策が打てるということでもあります。新参者の私の話は信じられないかもしれませんが、どうか……どうか、アリシアを、妹を助けるために皆様の力をお借りしたいのです。お願いいたします……。』



 クリストファーは深く頭を下げてお願いする。本来なら隣国の第二王子であるクリストファーのほうが立場は上なのだ。

 レオナルド王太子殿下と同等の地位にあるはずだったのだ。今まで頭を下げるということはなかったであろう。

 だが、今は違う。この国の公爵子息という立場である。クリストファーには立場があろうがなかろうが関係ないのだ。可愛いアリシアが助かるためならばどんなことでもやってのける自信も覚悟もある。更に深く深く頭を下げていた。




 『『クリストファー、頭をあげなさい。アリシアは死なせない。もちろんも協力も惜しまない。安心しろ。まずは、リカルドをどうするかだな……』』

 



 「「……んっ…………んんっん……」」



 レオナルドの協力を得られ、セルカークも公爵子息達も真剣な眼差しでクリストファーに頷くと同時にアリシアは目を覚ました……


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