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56話目です。
後半はクリストファーside。どうぞお楽しみ下さい★
《*チル友→一緒にいるとくつろげる友達》
(『あたし気付いちゃった~♪アモを好きになる方法~♪へへっ!』)
《《……えっ?!!どういうことなの?!》》
(『まさか、こんなんで攻略できちゃうなんてアモ神ってる!男子には秒で効くけど、女子にはかかんないみたい……つーうか嫌われるってマジつらたん。ここでも女子のチル友ほしかったのになー。とりまスパダリゲットに全力注ごう★』)
『はい!君もアモちゃんラブになぁ~れ♡』
『そこのイケメンめがね君もアモに夢中~♡♡』
『この辺の男子は攻略完了~ほぼアモの虜だね♪』
『あとはあちらのスパダリ陽キャのあの人達を攻略しに行けば七髪学園編に突入!アモハーレムが始まっちゃうね♡えへへへへ♡♡』
アモーレを観察していてわかったことがある。魅力の力の発動条件……
それは対象に触れることだとわかった。アモーレの近くにいる子息たちにさりげなくボディタッチを繰り返していたのだ。
その後、魅力の石を含んだブローチが妖しくピンク色に光だし、アモーレを見つめる瞳がトロンと熱を帯びていく。
正気が失われ、ピンク色の小さな可愛いハートマークが首筋に現れてくる。
そのハートマークはこの会場のほとんどの子息の首筋にあった。すでに多くの子息たちがアモーレの魔の手にやられてしまっているようだ……
一方、ご令嬢達はアモーレに触れられた瞬間、敵意を剥き出しにしてアモーレに突っ掛かっていく姿がみられた。そのご令嬢の首筋には赤黒いばつ印が一つ……
その印の有無でアモーレの魅力の力にかかってしまっている子息、令嬢を判断することができた。
男性に触れると魅力の石が発動し、女性に触れると悪役令嬢化するのだろう。
発動条件に気が付いたアリシアは、この緊急事態の終息に向けて動き出した。
出来るだけ早くアモーレの魅力の石を無効化しなくては……と彼女のブローチに触れようと手を伸ばしてみたのだが……
突然、アモーレはレオナルドたち目掛けて走り出した。
アリシアの行き場の失った右手と体はバランスを崩し、その場にペタりと座りこんでしまったのである。
なんとか立ち上がろうと力を込めるが、気持ちが焦り、手にも足にも体にも力が入らず立ち上がることは出来なかった。
アリシアはアモーレの魅力の力に惑わされている大勢のご子息達に囲まれ、冷ややかな……冷たい目線を向けられていた。
危害を与える存在と認識したのだろうかアリシアを牽制し、睨み付け、その場は威圧感に包まれていたのである。
手を差し伸べてくれる正常な人は誰もいなかった……
アリシアはこの状況に絶望感しかない。
おかしくなった子息達を無効化してあげたいのだが、アリシアを射る複数の視線に体の震えが止まらず力が入らない……動くことが出来なかったのである。
それでもアモーレを止めなくては……と顔をあげて彼女が走っていった方に目をやる。
『『キャ~~~~★★わ♡た♡し♡を♡う♡け♡と♡め♡て~~♡♡』』
レオナルド目掛けて突進していったではないか!
レオナルドは眉をひそめ、さらりとアモーレを避けてみせた。
アリシアは、アモーレがレオナルドに触れられなかったことに安心し、《良かった……》と小さなため息が漏れていた。
しかし、安心したのも束の間……レオナルドの後ろに控えていたリカルドが咄嗟にアモーレを受け止めてしまっていたのである。
リカルドの表情がみるみるうちに変わっていく。
アモーレを見つめる瞳は熱を帯び、身体中を真っ赤に染め、全身からピンクのオーラが溢れ、首筋にハートマーク。
そして、アモーレを優しく抱きかかえながらリカルドが甘い口調、甘い表情で話掛けていたのだった。
『可愛らしいお嬢様……お怪我は御座いませんか。私はリカルド・フィリップスと申します。以後お見知りおきを……』
アモーレもリカルドの鍛えられた肉体美に優しくホールドされ満更でもないような顔を浮かべてニヤついている。二人は周りの目を気にすることなく、いつまでも見つめ合い二人だけのあま~い世界の中にいた。
アモーレは『わたしはヒロイン!赤い瞳の王子様♡ゲットしちゃった♡♡』と呟きながら、力強いガッツポーズをしていた……
その二人のやり取りを見ながら、アリシアは““死・死・死””の文字が頭をよぎる。
リカルドがアモーレに陥落。アリシアの死亡フラグが、今、まさに一つ立ってしまったのである。
唯一の救いはレオナルドが落とされなかったことである。
レオナルドルートは未攻略の為、どのようにエンドを迎えるのかわからない。
国王陛下たちを除いて、国内最高位の王太子、レオナルドがアモーレの魅力の石の力に惑わされていたらと思うとゾッとする。
今は魅力の石の力で自分を見失っているリカルドをどのように無効化したらいいのか……
剣の腕が達人級のリカルドに近付くのはとてつもなく危険である。
正気でないリカルドに敵認定されたのならば、瞬殺されるかもしれない……
「死にたくない……………」アリシアは小さく呟いていた。
その小さなアリシアの呟きを拾ってくれたのが、レオナルドとクリスお兄様だった。
アリシアが青白い顔で座り込んでいるのを目の当たりにし、慌て駆け寄ってきてくれたのだ。
『アリシア!!どうしたのだ!大丈夫か、何があった!!』
アリシアはゲーム内の死の情景を思い出していた。
自分の“死”へのカウントダウンとバッドエンドの恐怖で身震いが止まらない……。
レオナルドとクリスお兄様の声に張り詰めていたアリシアの心がガタガタと崩壊していった……ほろほろと大粒の涙が溢れ、頬をつたっていく……
『……アリィどうしたの?……何がそんなにアリィを苦しめているの……ほら、お兄様に話してごらん。ゆっくりで大丈夫だから……』
クリスお兄様がアリシアを落ち着かせようと、優しい声音で話掛ける。
「…………お兄様……私……あの娘……の…………無効……化……でき……出来なかった……リカルド様も……あの娘の力の影響を……どうしたらいい……の……もうわからない……。私……このままでは……死……殺されてしまうかもしれない……クリスお兄様と……アルお兄様も……私のせいで……死んでしまうわ………どうしたらいいの……たすけ……て……お願い……死にたくない……………」
『…………死……無効化……あの娘……まさか!……アリィが言っていた予知のことか……』
クリスお兄様は何かに気付きアリシアを見る。アリシアは泣くのを我慢しお兄様の瞳をしっかりと見て小さく頷いた。
『アリシア、わかった。私が何とかするから安心しなさい。大丈夫。大丈夫だよ。アリシアは誰にも殺させない。守るから……絶対に守るからね、大丈夫だよ……』
クリスお兄様はアリシアの背中を温かい手でポンポンと叩き、頭を優しく撫でてくれた。
『少し休もうね……』というクリスお兄様の優しい声が聞こえた瞬間……睡魔がアリシアに襲いかかる。
ガクンと体の力が抜けて深い眠りについていたのであった……
【 ……数年前~現在…… クリストファーside 】
クリスはアリシアが光魔法を発動したあの頃のことを思い出していた。アリシアの意識が朦朧とするなか、切羽詰まる言葉を発した時のことが頭をよぎった。
「殺さないで……死にたくない……私は何もしていない……あの娘に……意地悪なんてしていないのに……お願い……お願いだから……私を殺さないで……助けて……助けて下さい……お兄様達を……殺さないで……お願い……」
アリシアの精神が不安定だった数年前に少しだけ教えてくれた話だ。今後起こるであろうアリシアの死や両親、私達兄の死について怯えるように話をしてくれたのだった。
とある娘が自身の持つ禁止された魔法で周りの者を陥落させていく話だ。
他国に留学したアリシアがその娘を虐めたと疑われ、悪役令嬢と呼ばれ国中から嫌われ、いわれもない罪を着せられ殺されてしまう。アリシアの最後は必ず死が訪れることが決まっていた……
しかし、死を迎えてもまた新な人生が始まっていく。
何度も……何度も……死んでは生き返えり、繰り返される運命。そして、毎回違う方法で色々な人たちから残虐に処刑されるてしまう。自分のせいで大好きな兄たちも巻き込まれ殺される……そんな場面を何度も見てきたのだと言う。
だから……現世ではそうならないように考えて、考えて……最善を見つけ出し、精一杯生きていくしかない。
まるで、自身が経験してきた事柄かのように苦悶の表情を浮かべ辛そうに話してくれたのだった。
光魔法発動後、アリシアに求婚し妻に迎えたいと言う者が増えた。父上は国内外から寄せられる縁談を断った。
日に日に増す、強烈な求婚がアリシアを悩ませていく。口を紡ぎ、笑顔が消え、自室に閉じ籠る日々……精神を病んでしまう可能性があったアリシアを護るために、アリシアに関する全ての事柄を遮断した。
それに不満を持ったエメラドーナの反国王派が現国王を亡きものにし、特別な力を持つアリシアを手にいれるために謀反を企てた。
その謀反とは……
視察に向かった父上、母上そして兄上が馬車で移動中に何者かに襲撃を受けるというのだ。
仕向けられた敵の数が多く、兄上達だけでは攻撃を防ぐことは出来ずやられてしまう。
重症を負った兄上を助けるために、母上が最後の力を振り絞り転移魔法で王宮に転移させた。
その後、父上達は命を奪われ、母上のおかげで一命をとりとめた兄上と私で反国王派を一掃した。というもの……
アリシアの予知の助言を元に、護衛の配置を変え、影を使い護衛の数を増やした。更に、父上達と襲われるであろう馬車にあらかじめ、保護魔法と危険時には転移出来るように最大限の対策をしたのだった。
アリシアの予知した通りに事件が起き、対策していたおかげで、父上達は命を落とすとことは無かった。
この出来事があってからアリシアの予知の力は本物であると感じた。
更に、アリシアが一番恐れている女が14歳の時に留学した国で現れると言うのだ。
全ての人を惑わし、陥落させる魔性の女……まさかこのドラゴンレアール国に現れるとは思ってもみなかった……
アリシアを留学させないために、一緒にドラゴンレアール国に連れてきたのだが……裏目に出てしまった……私の失態だ。
だからあのとき……嫌だと言ったのか……
そんな女がこの会場にいると言うのならば、早急にアリシアを避難させ安全を守ることが最優先である。
状況からしてあのピンク頭の娘がアリシアの言っていた女だろう。
魔性の女には見えないが、なんらかの強い魔法を操っているのだろうか……?あの女が?力があるようには見えない……
元は平民の娘と言っていたな。魔力はないはずなのだが……
知らない言葉を操っていたのも気になる。あの女はいったい何者なんだ……。
アリシアも言っていたが、リカルド殿の表情を見る限りあの女に心を奪われてしまったようだ……
この場にいる子息連中もおそらく……
レオナルド王太子、セルカーク殿下、リカルド殿以外の公子方達は正常のようだ。あの女の力の影響を受けていないようにみえる。良かった……。
あの女が何をするかわからないこの状況はとても危険だ。
いち早くこの場から避難していただかなければならないな。
そして……アリシアの精神状態が心配である。
今は私の力で眠らせているが、目を覚ましたら……また先程のように取り乱してしまうのではなかろうか……四年前のようになってしまうかもしれない。
アリシアを救う方法……アリシアを助けてくれる存在かもしれない方……。
……レオナルド王太子殿下……
王太子殿下はアリシアを好いてくれているように見えた。
竜の力を受け継ぐ殿下が私たちの味方になってくれれば心強い。あの女の力を抑え込むことが出来るかもしれない。
協力を求めてもよいだろうか……
そのように考えていると、レオナルド王太子殿下からお声が掛かる。漆黒の瞳が焦りを訴えていた。
『アリシアが死ぬだと……?!どう言うことだ!クリストファー、アリシアに何があったのか説明しろ!』と強い語尾で私に問う。
私はアリシアの目尻に残った涙を拭いてあげた。
その涙のついた自分の親指を見て、私は決心した。そして、私は真っ直ぐ殿下の瞳を見て話し始めた。
まずはこの場からいち早く立ち去ること。
リカルド殿や会場にいる子息たちがが悪い力に犯されていること。
そして、今後アリシアに振りかかる死に纏わること。
アリシアを助けるために力を貸していただきたいと願い出たのであった。
レオナルド王太子殿下の表情が強ばり、護るようにアリシアを包み込み、『わかった……』と一言だけおっしゃって、アリシアを横抱きにし立ち上がると同時に国王陛下に合図を送っていた。
王太子殿下は、一番安全だと判断した王族の居住区に繋がる通路に向かって歩きだす。リカルド殿を除く公子様方を引き連れて足早に下がっていった。
私は、微かに残るアリシアの涙を握りしめる。
何がなんでも大切な妹を守り抜いて、アリシアを苦しめている運命とやらを抹消してやるのだと新たに気持ちを整え、勢いよく立ち上がる。
そして、ピンクの髪のいけ好かない女、アリシアを苦しめる存在……アモーレ・ピアニッシモを睨み付けその場を立ち去った。




