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 「レオ……?ねぇレオ……??レオ聞いてる??」



 『あぁ……。』



 「顔色が悪いけど……もしかして体調悪い……?あの時からしばらく会えなかったし癒し魔法の効力が切れかかってるのかな……?」



 『大丈夫だよ……私は今……別の難題にぶちあたっているんだ……体調が悪いわけじゃないよ……』



 「そうなの?でも、久しぶりだし……やっぱり顔色が気になるし、注入……癒してあげるね!はい。レオの手をちょうだい!」



 アリシアはテーブルの上に自分の両手を拡げ、レオナルドも手を重ねるように促す。レオナルドはそっとアリシア手に自分の手を重ねた。


 アリシアは目を閉じ、自分の癒し魔法を流し込んでいく。力を使うときに七色に光輝いていたアリシアの髪色はここ数年で抑え込めるように努力をしたのだ。

 だから周りから見れば仲良く手を繋いで話をしているようにしかみえない。



 「はい!終了!次は……レオに上げたお守りまだ持っている?」



 レオナルドはうなずき、首に下げていたタッセルを取り出しアリシアに手渡す。そして、最上級の魔力を流し込んであげる。



 「これでしばらくは大丈夫だと思うよ。」



 魔力を注入したタッセルをレオナルドの手のひらに置いた瞬間……アリシアの手をレオナルドが““がしっ””と掴み、放さなかった。



 「レオ?どうしたの?終わったよ?」 



 『全く意識なしか……リアがそんな感じでくるのなら、こちらも全力でいくから覚悟しておいてよ。』



 「へ……???」



 『だからね。リアのことを ““ 好きだ ”” と言っているんだよ。それもかなりね。僕の相手はリアしかありえないし、これから先もリア以外にときめく人なんて現れない。これは確定している。変わることのない事実だから。必ずリアと婚約し婚姻する。二年以内にね。そしてどんな手を使ってでも、全力で振り向かせてあげるから。ここまで言えばわかってくれるよね!』



 「……なっ?!何を……言ってるの??ちょっ……と待ってよ……」



 『で、現段階でリアは僕のこと好きなの?嫌いなの?ハッキリとしといてくれる?』



 「いやいや……そう言うことじゃなくって……」



 『白黒させてくれないと次に進めないだろう?攻略の仕方だって変わってくるだろうし。さぁ!好きか嫌いか……』



「……好きか嫌いかだったら、好きに決まってるでしょう!?」



 『ハハ!やったな!リアから好きをもらえるとは思ってなかったよ。一歩前進だ!』



 「もう!!究極の選択!みたいなことするなんてずるい!私はレオと今の関係の友達がいいのに……好きは好きでも友達の好きだからね!ドロドロのぐちゃぐちゃの愛憎劇とかに巻き込まれる確率高くなるじゃん。」


 「レオも言ってたでしょ。下にいるご令嬢たちが恐いって……ほら見て!!よく下を見て!!!ご令嬢たちのあの鬼のような顔……私に向かって怒ってる!睨み付けてる!!あんたみたいなお子様が王太子殿下を一人占めするな!離れろ近付くなって言ってるの聞いてたでしょ!ほらあのレオに想いを寄せるお姉さま方の鋭い……熱い眼差し見えるでしょう!あんなにも私に敵意丸出しなんだよ!」


 「レオ、目を覚まして。レオの私に対する気持ちも助けた人への感謝の “ 好き ” なんだからね……勘違いして自分の人生終わらせちゃダメだよ。レオわかった?お願いだから私を巻き込まないで……私は自由にお気楽に生きたいんだから……」



アリシアは切実な願いを訴えてはみるが、肝心の王太子殿下さまは聞いてるのか……聞いていないのか……悪い笑顔を浮かべて見つめてくるだけ……であった……





 『『王太子殿下。お呼びでしょうか。』』



 『あぁ。来たか。リア、君に紹介したい人がいるんだ。』


 

 話を全然聞いてくれないレオナルドに絶望し、うつむいていた顔をあげた。



 「うん?なに……紹介したい人……??誰?」 



 半分やけくそになりながら見上げた先には……ゲームの攻略対象者がずらりと並んでいた。

 中央にはあの恐ろしい大公子息殿下のセルカーク……一歩下がって立っていたのはセルカーク以外の攻略対象者四人……近衛騎士団長子息アクアジーク、王国騎士団長子息リカルド、魔法騎士団長子息イシード、文部長官子息エリックが真剣な面持ちで立っていた……



 《うわー!眼福!!みんなやっぱりイケメンだわ。あのレオに似た黄色い目、銀の長髪を横で束ねているあの方がセルカーク殿下か。えーっと……あの青い目の人はアクアジーク様でしょ。赤い目のリカルド様にグレーの髪のイシード様……フムフム……グリーンの髪色の人がエリック様……だったよね。まさかこんなに早くお姿を見られるなんて!まぁ……関わりたくはない人達だけどね……イケメンに囲まれているのは悪くない!》



 突如現れたイケメン攻略対象者に見とれ、頬を赤らめてポーッとなりつい呟いてしまっていた。

 


 「……わぁ~本物……イケメンが沢山……イケメンパラダイス……ふふふ!」



 『アリシア嬢。いつも気になっていたのだが、その ““ イケメン ”” とはどういった意味なのだ?』



 レオナルドの口調が先程の砕けた口調ではなくキリッとした口調に変わっていた。それもそのはず……公爵子息達が目の前に勢揃いなのだから……こちらもキリッとしないと。



「……はい。殿下。イケメンとはイケてるメンズの略でして……」



 レオナルドはわからないといった顔で首をかしげ、顎に手をそえている。



 「そうですねぇ……素敵な男性を指し示す言葉でございます。」



 『……素敵な……男性か……ふーん……』



 レオナルドは遠くに並んでいる公爵子息達を見ながら眉間にシワを寄せて何かを考えていた。

 アリシアはしまった!こちらにはない言葉を教えてしまった……と思ったが、まぁ大丈夫だろうなと微笑んで誤魔化してみせる。




 『『失礼致します。グランツ公爵家嫡男クリストファー・グランツが王太子殿下にご挨拶申し上げます。若輩者の私にお声をかけてくださいましたこと感謝申し上げます。そして、至らない妹のアリシアのお相手をつとめて下さり、公爵家を代表し御礼申し上げます。』



 クリスお兄様も遅れて合流し、王太子殿下に丁寧に挨拶をしていた。クリスお兄様を確認出来たことで先程までの重かった気持ちが少し柔いでいく気がした。



 『これは、これは!アリシア嬢の兄上ではないですか。丁寧な挨拶、しかとお受けした。ですが、いずれアリシア嬢と私が婚姻を結べば、私の兄上になられる方なのですから堅苦しい挨拶などやめましょう。私のことはレオナルドと呼んで下さいね。長い付き合いとなるのですから、是非、身内として接していただきたいものです!構いませんよね、アリシア嬢?』



  「!!!!?……!!」



 《レオは……外堀から埋める気だ!!もう!勘弁してよ……》



 ““ クリスお兄様助けて ””と合図を送るが……お兄様の様子がおかしい……なんだかお兄様の目がキラキラしている気がする。



 ………??!そうだった。クリスお兄様はこちらに来てからドラゴンに興味が向いていた。興味がなかったアリシアは話半分で聞いていたから内容までは覚えていないけど……

 ドラゴンについての文献や書物、資料集をかき集めて今日に至るまで読み漁っていたのだ……お兄様の部屋はドラゴンの飾りとか絵などがところ狭しと置いてあった。



 『『ねぇアリィ。知ってた?ドラゴンは昔は存在していたらしいよ。すごいよね。あの広い空を自由に飛んでいたのかな。銀色の体に金色や金に近い黄色の眼を持っていたようだよ。特に金の色を持って生まれたドラゴンは1000年に一度誕生するかしないかの希少種で、誕生すれば、最強の王ドラゴンとして君臨する特別な竜なんだ。このドラゴンレアール国はドラゴンに関係している国なんだって!夢があるよね。いつか会ってみたいな……ドラゴンに……』』



 ってなことを、そう言えば言ってたような……



 クリスお兄様は次期公爵としてドラゴンレアール国の建国や竜王伝説などを学んできたからレオや王族の秘密を教えられたのかな。と推測できる。



 《……ん?待って……この間レオに聞いた竜王伝説は直系王族と宰相しか知り得ないことだって言ってなかったっけ……?これ絶対国家機密だよね……それを知ってる私は……どうなるの?レオが竜王伝説の話を私にしたのって……もしかしてわざと?はぁ……逃げ道がなくなっていくじゃん……》


 

 クリスお兄様の様子がおかしいのはレオナルドが原因なんだなと理解した。ドラゴンの血と初代国王の力を受け継いでいる王太子殿下はお兄様にしたら憧れの存在。

 その人が目の前にいて自分と会話をしている。ドラゴンの末裔である王太子殿下から視線をはずそうとせず、熱い眼差しを向けたくなるのもわかる。しかも温かい言葉を掛けられた上に、““ 身内になる ””なんて言われたら心ここにあらず……になってしまうのは仕方がないのだろう。


 

 こんな近くに伏兵が現れるとは……油断した……



 レオナルドに挨拶した後、クリスお兄様はセルカークにも声を掛け挨拶をする。レオナルドに向けた表情以上にセルカークに熱い眼差しを向けていた。容姿からしたら、古代のドラゴンは銀の体に黄色い瞳であるのがほとんどで、残されている絵姿はセルカークの色そのものである。お兄様の部屋に飾ってあるドラゴン関係の物も、まさにその銀色と黄色であった。

 

 セルカークとお兄様はすぐに打ち解け会話を楽しんでいた。アリシアに向けていた恐ろしい睨み付ける表情ではなくて、穏やかに談笑していた。その後、後ろに控える公爵子息達とも和気藹々とされていた。


 アリシアはその様子をジト目で見ていた。

レオナルドがセルカークを近くに呼び寄せ、なにやら二人でこそこそと話始めたのである。しかも目の前に座るアリシアをチラチラと確認しながら……鋭い目付きでアリシアを品定めするように見てくるセルカークに腹ただしく感じていた。



 《失礼な人!さっきからめっちゃ睨んでくる……レオのこと好き過ぎるのもわかるし、女嫌いだということも知ってるから理解は出来る。でもね……自分で言うのもなんだけど一応あなたのだ~いすきなお兄様の命の恩人だからね!私の力が無かったら暴発してこの世にいなかったかもしれないし、このまま冷徹暴君国王陛下になっていたかもしれないんだから!今レオが穏やかに笑っていられるのも、多分……私の光魔法のおかげだと思っている……感謝されるべき存在の私に敵意向けるなんて許せん!……と声を大にして言ってやりたい!》



 心の中でセルカークに噛みついてはみるものの、もちろん彼はとてもヤバ~い方なのだ。死亡フラグが一瞬で立つこと間違いない。下手したらその場で殺られる……だから、口には絶対だせない……セルカークには余計なことは発せず、当たり障りのない笑顔で対応するしかないのだ。我慢だ、耐えるのだアリシア!!


 

 しばらく二人の様子を見ていたら、セルカークの表情が堅いものから柔らかく変化したような気がした。


 先程までの険しい顔から一変……穏やかな表情でこちらをみてくる。レオナルドが命の恩人であると教えてくれたに違いない。もしかしたら……セルカークを味方に出来れば、アリシアの死亡フラグがまたひとつ消え去るのかもしれない!と期待が高まっていく。



 話が終わったのか、セルカークがアリシアに挨拶を述べ始めたのである。



 『『アリシア嬢!あなたが兄様……いえレオナルド王太子殿下の捜されていた方であるとお聞きしました。なんと!そうとも知らず、私は……あなたを睨み付けるなどの愚行を……申し訳ございません。』』



 「い……いえ……お気になさらないで下さいませ。睨み付けるとはなんのことですか?全くわかりませんでしたわ。““ おほほほ…… ”” ……ですからセルカーク殿下、頭を上げて下さいませ。私のような下の者に頭を下げるのは……えっと……私のほうこそご挨拶をせず、座ったままでいるなど失礼致しました。お許し下さい。セルカーク殿下……」 



 恐い……恐い……やっぱり恐い。あの笑顔が更に恐い……何を考えているのかわからない微笑を浮かべてる……挨拶をしながらセルカークの瞳が鋭くが反応していたの見逃さなかった。まだ見定めが完了していないとみる。アリシアは席から立ち上がるとセルカークに対して深く頭を下げ許しを乞う。第一印象は大事。第一印象はとっても大事と自分に言い聞かせていた。 



 『アリシア嬢、セルカークは私の弟のような存在なのです。』



 《えぇ……知っていますよ……恐ろしい人だということもね。》



 『ですから、これからはあなたの弟であると思って下さって構いませんよ。そんな他人行儀ではなく、仲良くしてくれるとわたしも嬉しくそしてありがたいのですが……私たちは家族になるのですから。』



 「はい?弟……」



 『『そうです。私のことは弟であるとお思い下さい。アリシア嬢のことは ““ 姉様 ”” とお呼び致します!』』

 


 《いやいやあり得ないでしょう。3つも上の大公子息様が私を姉様と呼ぶ?って?……私年下なんだけど。絶対!姉様っておかしいから。セルカークのあの顔……常に穏やかな笑みを浮かべているはずだよ。さっさも私を睨み付けながらも、しっかり口角は上がっていた。今は笑みはなく真剣な表情でいる……まさか。本気で言ってるんじゃないの?だったら余計ヤバいよ。明日から社交界の笑い者になっちゃうよ……やめて欲しい。ほんと勘弁……》



 「セルカーク殿下はご冗談がお上手ですね。私の方が年下なのですから姉様は恥ずかしいですわ。ですから、私のことは““アリィ””とお呼び下さい。」

 


 『『……アリィ?』』



 「えぇ。仲の良い方や家族に呼ばれてる愛称でございます。セルカーク殿下がよろしければなのですが……」

 


 アリシアのことを姉様と呼ぶ大公子息。ゲーム内とは違うセルカークの態度。そしてアリシアに対して敵意は見られない。


 これはチャンスかもしれない。仲良くなれれば、友達になれば死ぬ確率がぐーんと低下する。なんとしてもこのビックチャンスをものにしなければと気持ちが焦る。


 セルカークとの距離を徐々に詰めながら「アリィとお呼び下さい。」と再度お願いしてみる。


 そう。アリシアの特技、上目遣いに瞳を潤ませ見つける。ついでに後ろに控えている公子様たちにも訴えかけるように「是非、皆様も私のことはアリィとお呼び下さいませ。お友達になって頂きたいですわ!」お目パチパチ。さぁ!どうだ!!



 『『……はい。アリィと……呼ばせていただきますね……』』



 気が付けば、セルカークの真ん前に陣取り手を握ってお願いしていた。アリシアは必死すぎる訴えに我を忘れ、セルカークに近寄り過ぎたと反省する。


 でも結果オーライ!セルカークからアリィ呼びいただきました~!ゲーム内では話すことも近付くこともなくセルカークに殺されまくっていたアリシアなのだ。今回は友達ポジションをゲット出来たことで死亡フラグ回避に繋がるかも。


 あとは他の攻略対象者からもアリィと呼んで貰えばさらに生き残る可能性が高くなる。セルカークと手を繋いだまま、後ろにいる公子達にもう一度お願いする。


 なかなか返事をくれない真面目な公子達に、しびれを切らし、クリスお兄様を使うことにした。



 「お兄様……皆さんにもアリィと呼んでもらってもよろしいですよね?」



 『『えぇ。妹のことはアリィと呼び、仲良くして下さい。私共々宜しくお願い致します。そして……私のことはクリスとお呼び下さい。』』



 ……お兄様……自分のことをぶっ混んできたな。クリスって呼んでほしかったんかーい!特に竜の血が流れている御二人に……

 

 だが、お兄様の一言で公子達が頷いてくれたのだ。よかった~!!



 『はい。そこまで。アリシア!セルカークの手を離しなさい!それに私はアリシアからアリィと呼ぶ許可は得ていないぞ!』



 レオナルドから強めの指摘を受ける。顔が恐い……目が据わっているのは気のせいかな……アリィ呼びはスルーしちゃえ……



 「まぁ……なんと言うことを……!セルカーク殿下、勝手に触れてしまい申し訳ございません。」



 お詫びをして握っていた手を離そうとしたら、セルカークがぎゅっとアリシアの手を握り返してきたのだ。そして……



 『『いや、いいんだ。アリシ…… アリィ……私のこともルークと愛称で呼んで欲しいです……』』



 「えぇ。喜んで!!」



 レオナルドの咳払いでセルカークとアリシアは手を離した。



 セルカークは自分の両手をガン見し茫然としている。近くで拝見して思ったのだが、セルカークは顔色が悪く手が信じられない位冷たかった。しかし、今は全身が赤みを帯びていて顔色も悪くない。なんだったのだろう。気のせいかな……


 この時は無意識に溢れていたアリシアの光魔法の力でセルカークの体調不良を癒してあげていたとは知らなかったのである。


 セルカークもまた、竜の血が入った王族であり、20歳前であったことから力の安定がまだ終わっていなかったのであった。

 レオナルド程ではないが、体調が優れない日が多かったようである。自分はいつか安定するとわかっていた為、自身のことは後回しに考えていたのだろう。健気だね……


 

 そんなこととは露知らず、アリシアはレオナルドに促され席に戻った。『僕もアリィって呼ぶ許可をして……』と言われた。「まぁいいよ」っと答えたらレオナルドは破顔した。そんなヤキモチ焼きのレオナルドが可愛く見えてアリシアは温かい気持ちになった。



 《このままみんなと楽しくいい感じで進められればいいのに……アモーレさえ現れなければ私は死なないしみんなもおかしくならないのにな……彼女はいつ現れるのかな……現れないでほしいな……》




 《はっ!!!思い出してしまったわ……デビュタントイベント!!》



 ““ ドキドキ♡ドッキン♡ドッキング!気になるあの子が現れた!素敵な出会いは突然に…… ””



 《変なキャッチフレーズだったのよ……確か……アモーレは遅れて会場入りするんだった……間違って高位貴族が紹介された上の扉から入ってきちゃうんだよ。それから……そのことを他の貴族やご令嬢から非難され続けて……颯爽と現れたセルカークと公子達がアモーレを庇って本編スタート……あぁ……始まってしまう……》



 《でも、まだアモーレが登場していないよね。攻略対象者は全員この場所に集まっているし、ゲームと少し違う流れになってきてるようだし……それにあのピンクの髪と瞳は珍しい色だし目立つからどこにいるかすぐわかる……まだ来ていないのか。もう会場にいるのか。それともイベントが起こらず終わるのか……》



 二階から会場を眺めてアモーレがいないか確かめる。



 《いないみたい……でも彼女は必ず現れる……そんな予感がする。本編スタートしちゃうだろうな。そうなる前に逃げなくちゃ……アモーレとはやっぱり関わりを持ちたくない。アリシアと関わりがでてくるのは学園に入学してからだから……まだ大丈夫……だと思う。ひとまず、不測の事態に備えて会場から出ることにした方がよさそうだね。》



 他に情報がないかと頭をフル回転させるが、思い出せず……大丈夫だと自分に言い聞かせて心の安定を図る。しかしアリシアはアモーレのことを考えれば考えるほど、追い詰められプチパニックを起こし掛けていた。



 アリシアの様子がおかしいと気がついたレオナルドが声を掛けようてしたときのこと……



   ““ バタン! ””



 大きな音を立て扉が開かれる……アリシア達が勢揃いしていたスペースにピンクの髪をなびかせながらアモーレ・ピアニッシモが突入してきたのである。



 《あぁ……やっぱり避けられなかったか……本編始まっちゃうんだな……私……死ぬかも……》



 アリシアの頭の中には ““ 七髪 ”“ のオープニング曲が大音量で流れているのであった。


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