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前半は本編49話の続きのお話です。

後半は王太子レオナルドの両親目線のお話になります。

 《…………。一体何が起こっているの……。王太子がレオで……レオが王太子?で?いつの間にか二人きり……?ここはどこ……?何で目の前で極上超絶イケメン完璧冷徹最強王太子殿下さまが笑顔でこちらをみているのかしら……。》



 アリシアはパニックに陥り、何もかもが理解できなかった。いや受け入れたくない事実に目を背けたかった。


 今いる場所は二人きりなのだが、ダンスホールから丸見えの場所であった。下から王太子殿下への黄色い声が聞こえてくる。



 『きゃー!王太子殿下の笑った顔がみられるなんて!なんてお美しいのかしら!』


 『冷徹王太子なんて誰が言ったのかしら!あの微笑みには冷徹の“れ”の字もないじゃない!恐ろしさなんて全くなくってよ。』


 『優しそうな方だしあの笑顔!あんなにも素敵な方だとは思わなくってよ!御近づきになりたいわ~♡』


 『王太子殿下にはご婚約者がまだいらっしゃらなかったわよね!わたくしたちにもチャンスがあるかもしれないわね~!!』


 『ご婚約者がいても関係ないわ!王太子殿下の御目に留まればいいだけのことよ!わたくしたちは王太子妃の座を目指してもバチは当たらないわ!』


 『公爵令嬢のアリシア様と、とても親密そうにされていたわ。先程のダンスで王太子殿下がアリシア様を抱き締めたようにみえたわ!お二人は思い合っているのかもしれないのよ。それに国唯一の公爵令嬢でしょう?立場的にも王太子妃に一番相応しいお方でいらっしゃるようですし……わたくしたちに勝ち目はないかもしれないわよ……』


 『そんなことはないわ!アリシア様はまだ14になったばかりのお方でしょう。王太子殿下とお歳が離れすぎているわ。先程のあれはアリシア様がつまずき転びそうになったのを受け止められただけなのよ!皆様もそのように見えたわよね~!!』



 周りのご令嬢たちも一斉に同調してきゃあきゃあ……わーわー言っていた。ご令嬢たちのパワーはものすごいものがある。私には真似できない。


 と言うか……この場から解放されたい。目の前にいるシルバーの短髪に漆黒の瞳のめちゃくちゃ笑顔の男性……その笑顔が超こわい……


 アリシアはご令嬢たちの黄色い声を聞いたことで段々落ち着きを取り戻していた。



 《レオにはご令嬢たちの声は聞こえていないのかなー結構すごいこと呟いてるのに……》



 レオの顔をチラっと見てみる。ずーーっと笑顔……キラキラオーラが溢れ出ている……

 

 とりあえず、こちらも笑顔で返してみる。


 レオはぱーっと弾けた笑顔をアリシアに向けてくる。



 「……あの……王太子殿下……えっと……私……は……その……」



 『さぁ、リア……いやアリシア!君について聞かせてもらおうかな。もう隠し事はなしだよ!!』



 レオはアリシアの言葉を遮って言う。笑顔がこわい……こわいよー……どうしよう……



 「いえ、王太子殿下……」



 『違う。レオと呼んでくれ。王太子なんて他人行儀な……王太子などと呼ばないでくれ。君と私の仲じゃないか。』



 「……そのような呼び方は出来ません。公の場です。皆様が見ておられます。」



 『大丈夫だ。防音魔法で私たちの会話は聞こえていないよ。あの時のように話していいんだよ。リア!』



 「えっ……でも、周りの声は聞こえていますよ……」



 『まぁ、聞こえるようにしているからね。どこの誰が、何を言ったのか把握しておかないといけない立場だからね!』 



 「ふーん……」《……こわっ!!》

 


 『で!今まで会えなかったのはなぜ?この国の者ではないといってなかった?デビュタントには参加しないと言っていたじゃないか。ひどいなリアは……私はすぐにリアだと気付いたのに……君は私の目を見るまでわからないなんて……友達だと言ってたのに……とても傷付いたよ……』



 「えっ……だって……家のことは絶対に言っちゃダメってパパが……それに……デビュタントには本当に参加しないつもりだったし……でももう準備をしているんだから出なさいって……素敵なドレスも靴も戴いたんだからとか……今日の舞踏会の為にマナーとか色々と訓練?……特訓?させられていて店にも行けなくて……。レオだと気が付かなかったのは……えーっと、怒らないでね。……王太子は冷徹な王子だ……とか近付いちゃ行けないとか……目を見たら命がないとか……聞いちゃって恐かったし……私にも色々あったのよ!今も友達なのは変わらないから!お願い!レオー怒らないで……笑顔がものすご~くこわいよー!!」



 『まあ仕方ないよね。でもこの笑みは本物だよ。心の底から嬉しいんだ。全く怒っていないよ。君に怒る訳がないじゃないか!むしろ……君にまた会えたことに喜びを隠せないくて困っているんだ!』


 『今まで……近寄りがたい威厳のある王太子と言われていたのに……あのご令嬢達を見て!恐ろしいだろう……これからあのご令嬢達に狙われるかと思うと……全部アリシアのせいだよ……。責任取ってくれるよね?!』



 「……はい?!私のせいって……おかしいでしょ!!」



 『いや、アリシアがおもしろ……可愛いのが問題だ!公の場で笑ったことなど一度もなかったのに……アリシアが……リアが……紫の花を……それに葉っぱも……ドレスのポケ………』



「!!?……いやー!!うそでしょ……見てたの……お願い……それ以上言わないでーーーやめてーー」



 レオナルドは口を開けて大笑い……アリシアはまさかの紫の花をちょこっと拝借していた姿を見られていた恥ずかしさから全身真っ赤っかになりテーブルに突っ伏す。

 そのアリシアの行動にまたまたレオナルドが笑い出す……



 下から見ていた貴族たちは驚きを隠せない。話し声は聞こえないが、あの冷徹王太子殿下が屈託のない笑みを浮かべ、談笑している姿を一度も目にしたことがなかったのだ。


 もちろん、王族席にいるレオナルドの保護者たちも初めてみる息子の笑顔に驚きを隠せない。



 『それで、婚約の話は進めてもいいんだよね。私は早速発表したいけど……今しても構わないよ!』



 「えっ?婚約??婚約は私が16歳になるまでしないよ。その約束で婚約の予約?みたいなのには承諾したけど……」



 『ん?予約……?』



 「そう。婚約の仮予約ね。だって私はまだ14だよ。やりたいこともいっぱいあるし……自由に生きてみたいし……まだ何事にも縛られたくない!レオもわかるでしょ!婚約をしたら最後だよ。レオに好きな人が出来た時に好きでもない婚約者が隣にいたら、ぜーったい後悔するはずだよ。だから、婚約はしない方向で!二年後のことなんて誰も予想がつかないんだし!ね!」



 『いやいや……僕は……私の相手はリアしかいないと思っている……他の令嬢を好きになるなんてあり得ないし……婚約しても自由はあるよ……リアを縛りつけるつもりはないし……。あれ……?この間、別れる時に見せてくれたあの表情は……私に対して違う感情が芽生えたからではなかったの……?顔も耳も体中を赤く火照らして……僕の勘違い……だったの……』



 「あー……あの時は恋とか愛ではなくて小さい頃に助けてくれた恩人…… “ 憧れの人 ” に対するもので、再会した喜びからあんな風になったみたいなのよ!危なく、これが恋!!って勘違いするところだったのよ!あとから冷静に考えてみたらなんか違うなって思って……まぁ、一種の刷り込みみたいなものよね!」



 「私は、未だに恋とか愛とかはわからないし、わからなくても楽しく生きていけるかなって!なんか大人の恋や愛って増悪が渦巻く、ドロドロの泥沼愛憎劇って感じで危険そうで重そうだし……子供の私にはまだまだ早いよね!」



「あ~良かった!王太子殿下がレオで本当に良かった~!レオじゃなかったら私は今どうなっていたか……死亡フラグまっしぐらだったよ。本当にありがとう!レオ!最強王太子殿下が友達なら凄く心強い!ずっと私と仲良くしてね!」



 『『………はぁー………うそだろ……。なんてことだ……。』』



 アリシアはレオに友情の笑みを浮かべ、レオナルドはアリシアの鈍感力に完全にノックアウト。どのように攻略すればいいのかわからなくなっていたのである。






 ~~・~~・~レオナルド保護者side~・~~・~~





  『『ねぇあなた……どうしましょう……わたくし……とてもこわいわ……』』


 『『あの笑顔の子は私たちの息子……レオよね……?』』



 『そうじゃなかったら一体誰だというのだ!』



 『『だって……レオは笑わない男よ……わたくしのお腹の中で表情を捨てて鉄仮面を被って産まれてきた子のはずなのよ……』』



 『おまえは……何を言うかと思えば……そんな訳が……ない……』



 『『いいえ!!!見てちょうだい!!あなたはレオが笑っているところをご覧になったことがあって?!』



 『『わたくしは一度もないわ!』』



 『いやー……私もないが……しかし……笑ったことが無いなどあり得んだろう……現に……公務の際に笑みを浮かべているだろう。』



 『『公務の時の笑みはあれはあの子が身に付けた高度な演技なのよ。今はちがうわ!あんなにも……口を開けて……大笑いしている姿は……』』


 『『そうよ!そうだわ!!もしかしたら……あそこにいる男は、あの子の仮面を被った偽者よ……!もしくは闇魔法の暴発……』』



 『いやいやいや……あの子の髪色を見ろ。王家の色を持った美しい銀髪ではないか。それに君譲りの宝石のような漆黒の瞳。その瞳の中にはキラキラと金色が輝いているではないか。きみが金箔みたいで素敵だと言っていた瞳だぞ。あの整った顔は私たちの良いところを全て引き継いだ美しさではないか……私たちの息子で間違いない!!おかしなことを言うでない!』



 『『そうよね……あなた譲りのゲジゲジ眉毛に分厚い唇ではなくって本当に……本当に心の底からよかったと思うわ!高い鼻筋とふさふさの髪だけはあなたに感謝よ!!そうね!あそこにいる子はあなたの……ではなくて私に似ているわ!あの子は私の愛する息子、レオナルド本人だわ!!』』


 『『本物のレオで良かったわ~!あの子の悪の鉄仮面を外させ、人間の美しい子にしてくれたアリシアちゃんに感謝しなくてわね!やっぱり、レオのお嫁さんはアリシアちゃんで決まりね!アリシアちゃんをゲットできたら、私たち家族は未来永劫幸せに暮らせるわ~!さぁ、あなた!国王陛下としてしっかりと任務を全うするのよ!必ずやアリシアちゃんを説得してきてちょうだい。私の可愛い娘にしてくださいね!あと二年も待つなんて考えられないわ!お願いよ、期待してるわ!国内最高権力者としてしっかり頼むわよ!!!』』


 

 『……………。はぁ……お前は……流石この国の最強……国母だな……君には勝てんよ……国王陛下として君の願いが叶うように精一杯……頑張るよ……』



 レオナルドのお父ちゃん……最強の妻を持つ国王陛下は、それは……それは……深い溜め息を吐き捨てた。


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