50 【 王太子レオナルドside~No.1~ 】
王太子レオナルドside★No.1~竜王伝説編~
のお話です。
私はドラゴンレアール国王太子、レオナルド・ドラゴンルアールである。生まれつき胸の辺りにドラゴンの形をした痣がある。
子供の頃は何も問題はなかったが、成長するに従い徐々に痣が大きくなっていった。
成人まであと半月という頃から体調に異変が生じる。心臓がひどく痛み、胸を締め付けられるほど苦しく、時には意識を失うこともあった。
その頃、父上からこのドラゴンレアール国、直系の王家に古くから言い伝えられている伝説について話があった。
それは……初代ドラゴンレアール国王に遡る。
世界は天上と地上の二つの世界に別れていた。二つの世界は交わることを禁じられていた。どちらの世界も関わりを持つことはなかった。
ドラゴンレアール初代国王であるリオグランデ・ドラゴンは天上の世界の末の王子だった。
彼は不思議な力を持っていた。“闇”の魔法を使うことが出来たのだ。彼もまた胸にドラゴンの形をした痣があったという。
天上人はドラゴンが祖先であると言われていて、光魔法を使い生活していた。
光の力と相反する得たいの知れない魔法……リオグランデの闇の力は王族、貴族から恐れられていた。
なぜなら、闇魔法は世界を滅ぼす強大な力があると言われていたからだ。
王族から闇魔法を持つ子供が出たことで、リオグランデは父王や他の兄王子たちから疎まれる存在となり、いつしか王宮での居場所がなくなっていった。
20歳になった頃には胸にある痣が痛みを増し、苦しい日々を送るようになっていた。
リオグランデは王宮を去ることを決断する。その後、小さな村で身を潜め、時折起こる発作に耐えながら懸命に生きていた。
その時、村に身を寄せていた平民の女性がリオグランデを気遣い、側で支えてくれた。リオグランデは彼女の優しさに惹かれ、やがて二人は恋に落ち結婚。番となった。
彼女と過ごし触れることで、いつしか発作が起こらなくなっていたのである。
彼女は光魔法を使うことが出来なかった。そんな彼女もリオグランデと同じく疎まれ、天上の世界に居場所がなかったのである。二人で手を取り合いながら、穏やかで幸せな生活を送っていた。
………父王が現れるまでは………
リオグランデが王宮を去ってから、次々と王族達が原因不明の病にかかり命を落としていった。
父王と王位を継ぐことの出来ない王女達だけが遺され、年老いた父王は世継ぎを全て失い絶望する。
しかしながら、王宮を去ったリオグランデの存在を思い出し行方を捜すのだった。
やっとの思いで捜しだしたリオグランデは、光魔法を持たない平民の娘と婚姻を結んでいた。
王宮を去ったといっても王族であることは変わらない。王族が平民と婚姻を結ぶことは災いの象徴とされていた。
リオグランデがその掟を破ったことで、多くの王子達が死んだ原因なんだと思い込み……父王は怒り狂うのであった。
リオグランデが父王に呼ばれ王宮を訪れていた際に、父王は平民の娘を息子から引き離すために禁忌を侵し、彼女を地上へ追いやり天上の世界から強制的に消し去った。
彼女はリオグランデの子供を身籠っていたのだった。
愛する妻と子供を地上に追いやられたことを知ったリオグランデは激怒した。
怒りが抑えられなかったリオグランデは闇魔法が暴発する。天上の世界は暗闇で覆い尽くされてしまった。
リオグランデが天上から地上に降り立ったことと、力の暴走が重なり天上の世界は滅んでしまったといわれている。
地上へ降りたリオグランデは妻と子供を懸命に捜した。
見つけ出した時は、とある集落で貧しいながらも穏やかに暮らしていたのだった。
リオグランデは愛する妻と子供が、苦労なく幸せに暮らせるようにと自身の力を最大限使用した。
自身の住む領土を増やし、発展させ、ドラゴンレアール王国を立国した。
闇魔法には創造と破壊の力があったのだ。
息子もリオグランデの魔力の高さを受け継いでいたのだが闇魔法は持っていなかった。
それでも、リオグランデの高い魔力を代々受け継いできたドラゴンレアール国は、近隣諸国から恐れられるほど大国になっていったのだ。
そして、魔力のない最愛の妻を護るために七属性の神獣をつくり出し側に置き生涯護ったといわれている。
これが、ドラゴンレアール国王家に代々言い伝えられている“ 竜王伝説 ”である。
歴代国王と男子王族。そして、“裁きの力”といわれる雷魔法を保持する筆頭公爵家当主にだけ伝えられてきた伝説だ。
初代国王以外に、闇の魔法を受け継いで産まれる王子は今までに一人もいなかった。
私が産まれた時……胸の痣のことは把握していたのだが、まさか闇魔法を保持しているとは思っていなかった。
成人し発現するまでわからなかったことなのである。
竜王伝説の書かれた文献を細かく調べたが解決方法はただひとつ。
““唯一の者を見つけ出すべし。その唯一の相手に触れれば心の臓が波を打ったように反応を示すだろう。その唯一を護るため、七属性の神々の使いである神獣らが側で仕えているであろう。””
と記されていた。その文献を頼りに““唯一の者””を捜し各地を転々とする。
四年前……隣国エメラドーナ国へ立ち寄った城下町で不思議な少女に出会った。歳は14か15ぐらいだろうか。とても美しい少女であった。
その少女は人相悪い男達に連れて行かれそうになっていた。
見て見ぬふりは出来ないため助けたのだか……少女の醸し出す雰囲気がやけに心地いい。怪我をした手の甲を自身の可愛らしいハンカチで包み手当てをしてくれた。
その彼女は私をみて、“目が綺麗だ!キラキラして宝石みたいだ!”というではないか。そんなことを言われたことがなかったからどう反応したらよいのか……
彼女の言葉にこの高鳴る胸を抑え、ここは危ないから戻った方がいいと忠告した。
手当てのお礼を言うと、なぜだか怪我した手が温かく感じた。ふと表情が緩んだ。自分がこんな風に穏やかな表情と気持ちになれたのはいつぶりだろうか……そんなことを思っていると……
彼女の数名の連れらしき者が慌てた様子で駆け寄ってきた。私はその場から逃げるように立ち去った。
滞在する宿に戻り怪我した所を確認すると、驚いたことに少女のくれたハンカチで覆われていた手の甲の傷がなくなっていたのだ。
少女は何者だったのだろうか。ここに滞在すればまた少女に会えるかもしれない……もうしばらくエメラドーナ国で過ごすことに決めたのだった。
城下町に何度も足を運び彼女を捜したのだが彼女に会うことは出来なかった……
私の唯一の者……そして、私をこの痣と闇の魔法から助け出してくれるかもしれない少女をようやく見つけたと思っていたのに……彼女は今どこにいるのだろうか……
諦めきれず、彼女について調べていくうちにエメラドーナ国の王女が光魔法を発動させたという話を耳にした。
もしかしたら、彼女はエメラドーナ国の王女なのか……?
しかしながら、エメラドーナの王女は光魔法を発動させた際に力が暴発し、意識が数ヵ月戻らなかったのだと聞く。一度は回復したように見えたのだが、まだ10歳の王女の身体への負担は計り知れず改善することなく深い眠りについた。その後、王女は亡くなられたようだと耳にした。
エメラドーナ国の王女は年齢が10歳。私が町で出会った少女は私と同じ位のようで、エメラドーナ国の王女よりも歳が上に見えた。町で出会った少女とは別人であると考えられる。
やはり、茶色の瞳、髪色の少女を捜すし出すしかないのだ。
何としても、彼女に会って確かめなければならないことがある。私の唯一の存在なのかどうかを……
あれから四年が経とうとしていた。
私の求める彼女は現れず……様々な国へ赴いたが、見つけ出すことは出来なかった。私もまもなく20歳になる。力を抑えることが出来なければ世界が滅ぶ……
最近は胸の痣がひどく痛み、痛みの感覚も短くなってきた。この発作とも言える痛みが起きる度に不安になる。
もう……この闇魔法を自分ではコントロール出来なくなってきているとわかるのだ……
そんな不安な毎日を送っていたのたが……
““20歳の誕生を祝う宴と社交界デビューの舞踏会を同時に行うことにした。そして、そなたを救う者が現れたかもしれぬ。急ぎ王国に戻られよ。””
と父上から知らせが届いたのだ。
私を救う者…………?
……まさか……あの時の彼女が我が国を訪れているのだろうか。それとも……また別の者なのだろうか……
彼女でなくても……どんな者でも良い……私を救ってくれる者がいるのならば……一筋の小さな希望を胸に自国へ急ぎ戻った。
しかし……国に戻った私は愕然とした。
国王である父上からは……グランツ公爵の娘が成人の儀を迎えることになった。それに先立ち、王家とグランツ公爵家の婚姻を結ぶことにした。必ず、王太子の私の救いになる婚姻だというのだ……
なんということだ!父上が政略結婚をさせようとするなど……そのようなことを母上が認める訳がない。
しかし、母上もこの婚姻には賛成のようだった……
隠された公爵家の子息、令嬢には驚きはしない。公爵家の王家を護る特別な力のことは知っている。強大な公爵家の魔力も、家柄も結婚相手としては申し分無い相手なのだ。
だが…………私には時間がない。
現在のドラゴンレアール国の王位を継ぐ者は、王太子の私一人だけである。
叔父である大公と大公子息は王位継承を放棄している。その為、私を婚姻させ世継ぎを作れ……ということなのだろう。
いつ滅びるかわからない息子よりも新たな後継者を作った方が国のためなのだから……と……
王家を存続させるためにはこれは仕方のないことなのだ。王家に産まれた者の定めなのだと……
わかってはいるが、まだエメラドーナ国で出会った少女を諦めきれない自分がいる……
舞踏会まであと数ヵ月……公爵家の令嬢と愛のない政略婚姻をする日が近付く。
私の側近があの時の彼女について調べてくれてはいるが進展はない。
とある日の午後……城に勤める侍女たちが城下にある不思議な力が宿る店の話をしていた。
店の名前は “アルコバレーノ”
その店は、誰もが目をひく程の美しさを持つ女性が経営している雑貨店であった。
その女性が作る品物を持つと身体の不調が改善され、幸福が訪れるというのだ。
あのハンカチを思い出す……彼女に違いないと直感で感じていた。
翌日の公務は早めに切り上げて昼前にお忍びで城を出た。
久し振りの城下町は以前より活気があり、国民は皆、幸せそうだ。
この穏やかな国民の生活を私が壊すわけにはいかない。
その女性があの時の少女であったら良いのに……と気持ちが焦る。
その店は王都の中心街にある女神の噴水広場のすぐ近くだった。店は開いていないようだ……近隣店に店のことを聞いてみたのだが、開店している日にちが少なく月に5日程度しか開いていないらしい。
今日は、店主の女性が買い物に出掛けたのを見かけたから、まもなく戻ってくるだろうと教えてくれた。
店の近くにある噴水に腰掛け待つことにした。何時間経ったのだろうか……待てども、待てども店主の女性が戻って来る気配はない……
今日は諦めて戻ろうとしたのだが……突然胸の痣が痛みだしてしまった。いつもは時間が経てば落ち着くのだが、今日の痛みはいつもの痛みと違う……意識が飛びそうなぐらい酷いものだった。
もう限界なのではないか……力を抑えることが出来ず、今ここで闇魔法が暴発してしまうのではないかと不安になる。
意識を失う前に何としても城に戻らねばと、立ち上がろうとするが力がでない。転移魔法で戻ろうと力を込めるが反応しなかった。
……………………………………。
「お兄さん大丈夫??どこか具合が悪いの?私のお店がすぐそこにあるから少し休んでいって。」
優しい声色の女性の声がした。彼女は地面に膝をつき顔を覗き込んで状態を確認してきた。痛みで視力がぼやけ、女性の顔を確認できなかった。
その時だった……女性は私の手に自分の手をかざし、微量の魔法を私の体の中に流してきたのだ。あの時の彼女の温かい魔法と同じものであった。それと同時に痛みも和らいでいき、体が軽くなっているように感じた。
被っていたフードを少しだけ上にあげ、女性の顔を確認した。
““あの時の……!間違いない……あの時の少女だ!””
茶色の瞳に茶色の髪色……少し大人びた感じはするがエメラドーナ国で出会った彼女であると確信した。
次の瞬間……私の心臓が “ドクン” と雷に打たれたような衝撃が走る。やっと……やっと……彼女に会えたのに……目の前が暗くなり意識が失くなっていく……
目を覚ましたのは夜中のことだった。
見知らぬ場所……見知らぬ天井……気が付くと……ふわふわの小さな生き物達が私の顔をじーっとみていた。
驚いて体を起こすと、先程までいたはずの生き物がいなくなっていたのだ。あの生き物ななんだったのか……ここはどこなのか……辺りを見渡すが暗くてわからない。近くにあったランプに光を灯す。
すると……ベッド脇にあの時の少女が私の手を握りしめ、すやすやと幸せそうに眠っていたのだ。
彼女のお陰で体の痛みも消え、あんなにも大きく成長し続けていた胸の痣も小さくなっていた。やはり彼女は私の唯一であったと確信し喜びが隠せない。
ひとまず、彼女の冷えきった体を温めてあげるため、起こさないようにそっと布団の中に招き入れた。
彼女が逃げないように、逃げられないように……優しく抱き締める。
……彼女を抱き締めた瞬間……今まで抑えることの出来なかった闇魔法の流れが穏やかに流れているのを感じ取れた。
彼女と再び手を繋ぐと……私の心臓がドクン、ドクンと力強い鼓動を奏でていた。
気が付けば、また深い眠りについていたのだった。
翌朝……朝日が昇り、店の中を明るく照らしていた。
外からは小鳥のさえずりが聴こえていた。
隣には幸せそうに寝息をたてている彼女がいる。
こんなにも穏やか気持ちで休めたことはあっただろうか。
彼女が目を覚ますまで、飽きもせずひたすら彼女をながめていたのだった……
No.2に続きます。
レオナルドside……長くなってしまい……50話目だけでは収まりませんでした(笑)




