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 アリシアは悩んでいた……


 午前中の授業が終わり、午後から楽しみにしていた街へ出掛けることになっている。カルイドパパとは女神の噴水と呼ばれる場所で待ち合わせしている。

 午前中は仕事を片付けてくると言って出掛けて行った。

 

 瞳の色も髪の色も町娘風の服も完璧!準備を終えあとは目的地へいくだけ!


 《なのに……どうして………》


 《 転移魔法がうまく使えない!!》


 何度試しても発動する気配もない……


 『アリィ頑張って!エメラドーナでは出来ていたのだから落ち着いてやればきっと上手くいくよ!』

 

 そうなのです……

 こちらに来るまで一生懸命、粉骨砕身練習してきた。

 転移魔法は上級魔法なのだがコツを掴むと難しくない。

 エメラドーナでは行きたい所に簡単に行けてたのに……



 『アリシア様……イメージをするのです。』

 『女神の噴水と唱えながらもう一度やってみましょう。さぁ!どうぞ!!』


 魔術を教えてくれているフレデリックお兄様が熱心に指導?してくれる。


 「「女神の噴水!」」


 ………反応なし………………


 『おかしいですね……』

 『エメラドーナ国では使えたんですよね。イメージの仕方が違うのか?アリシア様、転移魔法を使う際どのようにイメージしていますか。』



 「そうですねぇ……この場所に行きたいと思った所の建物や風景などを絵画のように頭にイメージします。」



 『なるほど。イメージの仕方が他の人と異なるようですね。地図をみてもう一度やってみましょう。』


 地図で女神の噴水の場所を確認する。大体の位置はわかったような気がする。

 

 「「女神の噴水~!!」」


 ………反応なし………駄目だこりゃ……



 前世から地理が苦手な私。つまり方向音痴なのである。

 行きたいところに一度で行けた試しはない。それが問題なのだろう。ドラゴンレアールの街並みも建物も見たことがないから転移魔法が使えないのだ。


 このままではカルイドパパの所までたどり着けない。

 刻一刻と時間が過ぎていく。

 公爵邸の中を歩いていくわけにもいかない……

 転移魔法一択のみ。


 《どうしよう……》 

 

 『仕方がないね。大丈夫だよ、アリィ。』

 『僕がアリィを一緒に転移させてあげるよ!』

 

 「えっ……でも……」


 クリスお兄様がアリシアの両手に重ねる。

 二人の周りに風が吹く。次の瞬間……目の前に噴水があった。

 

 クリスお兄様がガクンと力が抜け、膝を付く。

 転移魔法は自分ひとりならば問題ないが、二人になるとかなりの魔力を使うと聞いた。


 「お兄様……ごめんなさい……」


 『アリィ。大丈夫だよ。少し休めば回復するから気にしないで!』


 『クリス?大丈夫か?』

 カルイドパパが私達を見つけてこちらへ慌ててやってきてクリスお兄様を軽々と抱き上げた。


 『………………!!!……』


 クリスお兄様が一瞬驚いた顔をして、耳まで真っ赤になっている。

 

 『父上……大丈夫ですから下ろしてください……』


 カルイドパパはニコッと美しい笑顔で『問題ないよ!』

 と言う。

 

 「お兄様……パパ……ごめんなさい……皆さんにご迷惑を掛けないようにもっと魔法の勉強をがんばりますね……」


 『まだアリシアは小さいのだからいいんだよ。』


 気にしなくて良いと二人ともすっごく必死にアリシアをなだめる。兎に角、ドラゴンレアールの情景を目に焼き付け、次こそは自らの魔法でここに来るぞ!と心に決めぐっと拳を握りしめた。



 『さぁ、アリシアのお店に行こうか。』

 カルイドパパが右手でお兄様を抱え、左手でアリシアの手を取りゆっくり歩きだす。“ 実はこれがやってみたかったのだ ”とウィンクをするパパ。

 クリスお兄様も恥ずかしそうにしながら、めちゃくちゃうれしそうよ!その姿にホッと息つく。

 

 

 町の女性と女の子が頬を赤らめチラチラと二人を見ている。

 カルイドパパもお兄様も地味な服装に茶色の髪と瞳だが美しさと輝かしいオーラは消せていない。

 

 女神の噴水から数歩の所にアリシアのお店があった。

 王都の中心である噴水広場が目の前にあるお店……

 小さいお店でいいよと言ったのに思っていたよりもでかいような……

 

 右隣にはおしゃれなカフェとレストラン。左隣には宝石店。周辺には、家具屋、洋服屋、お花屋とどれも大きなお店などが建ち並び、どのお店にも行列が出来ている。両隣、周辺の店に比べれば小さいのかもしれない。この場所が商売の中心でり、一等地であることは誰もが知っていることなのだろう。』

 アリシアは冷や汗が止まらない……ちゃんと経営出来るのだろうかと軽く不安になってきた。



 可愛らしい扉を開け中へ入る。店内は落ち着いた雰囲気でアリシア好みに配置されたアンティークの家具が置かれている。

 《可愛い!素敵~!》

 先程の不安はどこかへ飛んでいった。


 売り場はそんなに広くない。売り場の奥にアリシア専用のアトリエと休憩場所がある。アトリエには様々な色の糸や布、いろいろな種類の小さな宝石やガラス玉。すぐに作品づくりが出来そうな場所だった。

 休憩場所には小さなキッチンと食器にオーブン、冷蔵庫。ふかふかのソファーにテーブルが置いてある。

 


 『アリシア、気に入ったかい?』

 

 「はい!パパありがとう!」

  

 嬉しさの余り、勢いよくカルイドパパに抱きついた。

 




  ““ arcobaleno ””

   ~ アルコバレーノ ~

 

 “虹” と言う意味がある。

 これがアリシアのお店の名前。

 看板を取り付け、内装など細かな所をアリシア好みにして数日後オープンさせる予定なのだ。


 毎日お店が開けられればいいのだが、勉強、マナー等アリシアにはやらなければならないことが多くある。週2日~3日位しか来られないかもしれない。カルイドパパはいつ来てもいいと言ってくれているが、やらなければならないことはしっかりやる!

 迷惑はかけない!!この国の人に喜んでもらえるような暖かいものを届けられるように頑張ろうと心に決めた。

 

 これから様々な出会いや事件に巻き込まれてしまうとは

 知らず気合いを入れるアリシアなのだった……


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