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39 【 叔父カルイドside 】

カルイド目線のお話になります。

 私は、カルイド・グランツ。齢30。

 アリシアたちの叔父である。


 四年前に前公爵である父上を病気で亡くし、26歳で公爵位を継いだ。現在は父の務めていた宰相を引き継ぎ、兄のように慕うドラゴンレアール国王の補佐をしている。

 

 私には姉がおり、現エメラドーナ国の王妃をしている。

 博学で美しい。優しく、慈悲深く皆から愛される公女であった。母上を8歳の頃に亡くし、14歳だった姉上が母親代わりとして側に寄り添い育ててくれた。尊敬すべき素晴らしい姉上なのだ。


 20歳でエメラドーナ国に輿入れし、2年後に皇太子のアルフレッドを出産。その後クリストファー、アリシア3人の子宝に恵まれた。国民からも愛され、国母としての務めをしっかりと果たしている。

 姉上が嫁いでからも2ヵ月に一度、ご機嫌伺いと称し姉上のいるエメラドーナ国を訪問していた。


 アルフレッドが産まれた時は、弟が出来たようで嬉しかった。

 クリストファー、アリシアの時は自分の子供のように感じた。姉の三人の子供達が可愛くて仕方がない。



 私には婚約者がいたのだが結婚前に病死している。彼女とは16歳で入学した王立学園で出逢う。


 本来なら14歳から王立学園に通うことが出来るのだが公爵家は成人するまで存在を隠し生活しなければならないという習わしがあったのだ。その為、学園に入学するまでは屋敷内で勉学、剣術、魔術を磨いていた。

 

 伯爵令嬢であった彼女は優しくて可愛らしい人だった。お菓子作りが得意で、何事にも諦めず一生懸命取り組む姿は太陽のように眩しく、明るい活発な女性であった。

 私の一目惚れだったのだろう。

 政略結婚が当たり前の世の中なのだが、彼女以外は妻に迎えたくないと心に決めていた。両家の許可を得て18歳で婚約、20歳で結婚する予定であった。

 次期公爵夫人教育の為に婚約と同時に彼女が公爵邸で一緒に暮らすようになる。

 


 クリストファーが産まれ、誕生のお祝いと婚約の挨拶にと二人でエメラドーナ国へ訪問した。姉上は彼女のことを気に入り、滞在中は姉上の話し相手やアルフレッドやクリストファーのお世話をするなど楽しく過ごした。


 ドラゴンレアール国に帰国する前日の夜、姉上から一人で王妃執務室に来るようにと声が掛かる。姉上は神妙な面持ちで、古くから公爵家に伝わる病について教えてくれたのだ。


   “ 白の病 ”


 グランツ公爵家に嫁いだ女性が罹る謎多き病。

 今までに嫁いできた公爵夫人は短命であった。

 中には長命の者もいたが、多くは年若くして亡くなっている。

 未だに白の病について解明されておらず、原因も治療に関してもわからない不治の病。公爵家の血筋のみが受け継ぐ秘密の力が関係しているのかもしれない。

 魔力の量が弱いと影響を受けるようだと姉上は話す。母上もこの病で亡くなったのだと初めて聞かされた。彼女の顔色が悪いように感じ、白の病が頭を過った。

 心配になったと姉上は言う。


 元々、色白の女性であったが以前と変わらず食欲も元気もあるようだ。彼女魔力は高い方なので心配はないだろう。具合の悪いところはないかと訊ねても、いつもと変わらず、大丈夫よと笑顔で応えてくれる。

 彼女の様子の変化を見逃さないようにしようと思った。



 彼女は変わらず元気に過ごしている。まもなく結婚の儀式を行い公爵家に嫁ぐことになる。



 公爵家での教育は全て終了し伯爵家へ戻っていた。

 嫁入りする前に生まれ育った伯爵家でのんびりと家族で過ごすことになっているのだ。今は離れて暮らしているが、5日に一度ディナーを一緒にしている。

 来週には晴れて夫婦になる。一緒に居られる幸せから、彼女の体調の変化に気付くのが遅れてしまった……


 伯爵家で食事をいただき、二人の時間を過ごしていた時のこと……それは突然であった。彼女の様子がおかしく、焦点があっていない。声を掛けても反応がない。

 その後、意識を失い倒れてしまった。

 彼女を抱き抱え部屋へ運ぶ。青白い顔をしている。医者を呼び治療を試みるが治療法がないという。数日後、彼女は二度と目を覚ますことなかった。私の最愛の女性はこの世から去ってしまった……



 公爵家に嫁ぐはずだった女性がまたしても亡くなってしまったことに “ 呪われた公爵家 ”と貴族連中が陰で言うようになった。



 彼女の葬儀が終わり、まだ哀しみが癒えていない私の元に彼女の両親である伯爵夫妻が公爵家を訪問した。彼女の妹を連れて……

 伯爵夫妻のうしろに控えめに立つ女性。一瞬彼女ではないのかと思うぐらい容姿が似ていた。いや、今思えば彼女に似せていたのだ。

 

 実の娘が死んで半月も経っていないのに、彼女の代わりに側に置かないかと腹ただしい提案をしてきたのだ。公爵家の呪われた噂を持ち出し、伯爵令嬢と問題なく結婚したことにすればいい、そもそも長女は体が弱く公爵夫人が務まる器ではなかった。

 出来損ないの長女より、健康で能力の高い次女を娶るべきだと私の愛した彼女を侮辱する。



 彼女の妹は私の側に来て、彼女の侮辱を繰り返す。

 『姉は小さな頃より体力もなく精神疾患がありました。唯一の妹である私にだけは公爵夫人になるのが怖い、務まらないと話してくれました。公爵家から戻ってからは特に酷かったのです。カルイド様の前では明るく振る舞っておりましたが、精神を病んでいるようでした。姉は自ら服毒し命を絶ちました……』

 『そんな弱い愚かな姉のことは忘れて私と幸せな家庭を築いていきましょう。姉と婚約を結ぶ以前よりカルイド様のことをお慕いしておりました。いつか、私のことを愛して下されば姉の身代わり妻でも構いません。』


  

 彼女と似た顔であるが純粋な彼女とは違い心は醜い。姉が亡くなったばかりなのに悲しくはないのか。狂っている……


 “ 服毒……?? ”


 と言ったか……医者は原因不明であると言っていたではないか。

裏に何かありそうだな。早急に調査せねば……父上に報告し内々に調査をすることになった。



 報告内容に驚きを隠せなかった。彼女が実家へ戻ってから毎食少量の毒物を盛られていた。その毒を長期に渡り摂取させられていたのだ。私が訪問した日に致死量の毒物を彼女の食事に混ぜ殺害した。


 長女は力も体力なく公爵家の病により死んだのだと……本当は次期公爵夫人になれる素質はないのだと……“呪われた公爵家”と噂を流したのも伯爵家であった。


 何故、実の娘を殺したのか。

 伯爵は毒物には関わりがなかった。ただ、娘が死んでも公爵家と縁故関係がなくなると考えた伯爵は、娘に似ている妹を公爵家に嫁がせようとしたのだ。

 娘の死を調べることもせず、妻の口車に乗ってしまったようだ。


 彼女は伯爵と先妻の子で妹は伯爵と現伯爵夫人の子。

 次期公爵夫人となる義姉が妬ましく、カルイドに愛され優しく守られている義姉が羨ましく感じた。義姉の夫となる私と何度か対面した際に好意を持ち、義姉が死ねば自分を見てくれる、好きになっとくれると思うようになった。

 伯爵夫人の義母は愛娘の願いを叶えたい一心で義理の娘を殺すことにした。自分より立場が上になる義理の娘が許せずいたのかもしれない。


 彼女は二人の手により殺害されたのだ。

 あの時……伯爵家に返すべきではなかったと後悔しかない。

 


 次期公爵夫人になるはずであった婚約者を殺害した真相公爵家の名誉を毀損した罪。更に、伯爵家の悪巧みの数々を公とした。

 筆頭公爵の父上と国王陛下に託した。


 証拠もある。証言する者も保護している。罪は償ってもらわねばならない。許すつもりはない。伯爵家は取り潰し、爵位・財産の剥奪、監獄へ送り強制労働の罰を受ける。


 一生続く苦しみを罰として与えたいと私自身が陛下にお願いしたのである。

 

 そして、私は今後は誰とも結婚もしないと宣言した。  

 婚約者を亡くし、次期公爵夫人の席が空いたことに喜んだ貴族の令嬢たちが言い寄るようになったからだ。




 逃げるように姉のいるエメラドーナ国に赴き、休養させてもらうことにした。とても穏やかな日々であった。

 可愛い甥達に囲まれ、彼女を失った悲しい気持ちも徐々に癒されていった。


 そんな時、姉上が珠のように美しく可愛らしい娘を出産したのだ。


 ““ 彼女の生まれ変わりかもしれないわね! ””


 と姉上と国王である義兄が、


   “ アリシア ”


 と亡くなった彼女の名前を付けてくれたのだ。

 この時初めて、大粒の涙を流し、涙が枯れるまで泣き崩れた……

 私はようやく彼女・アリシアの死を受け入れられたのだ。

 

 

 結婚しない宣言をして逃げるようにエメラドーナに来た為、グランツ公爵家の親族や配下の貴族から、跡継ぎをどうするのか……と問題になっていた。結婚しないと決めたのなら無理にしなくていい。

 公爵家の跡継ぎにクリストファーを養子にすればいい。と提案してくた。姉上夫婦には感謝しかない。



 アリシアは彼女にとても似ていた。

 穏やかで、優しく、我が儘を言わず、笑顔が可愛いとても落ち着いた子供だった。最後に会ったのは8歳の誕生日の時。

 あれから2年。

 アリシアは活発になり年相応の発言、行動をみせる。クリストファーが跡継ぎとして公爵家に来るのがあと数ヶ月後。迎える準備をしていたときだった。


 アリシアが誘拐され、魔力暴走をした……意識がない。と連絡が入ったのだ。彼女のようにいなくなってしまうのではと……

 不安になり慌ててエメラドーナ国のアリシアの元へ。


 アリシアは光魔法の持ち主ではないかと言われていたのは姉上から聞いていたので知っている。

 光魔法の発現と公爵家の秘密の力の発現が重なった為に魔力が枯渇し、小さな身体では耐えきれず、意識を失い眠ったままなのだと姉上から話があった。

 アリシアが魔力暴走した際に天から伸びる光の柱が現れたときく。

 

 神の天罰と言われている力……

 世界を守護するための力……

 それこそが公爵家の秘密の力なのだ。



    ““ 雷の魔法 ””



 私も姉上、アルフレッド、クリスも使える力だが、ここまで大きな力は使えない。雷魔法と光魔法が融合したのか……

 グランツ公爵家の血筋にしか現れない雷の力。決して人前では使っていけない力なのだ。世界の人たちは雷魔法があることすら知らないだろう。


 12歳を過ぎると発現し、危険な力であるため成人まで力のコントロールを学ぶ。

 公爵家が秘密の部屋で過ごすには理由があったのだ。

 アルフレッドも数年公爵家で力のコントロールを学んだ。

 クリストファーも12歳で養子として公爵家に入る。アリシアが目を覚ましたら、アリシアの為にも公爵家で力のコントロールを学ばせなければならない。12歳なる前に発現してしまったアリシアは相当魔力が高いのだろう。

 

 

 アリシアが意識を失ってから2ヵ月が経とうとしていた。

 姉上は憔悴している。

 側にいてあげたい……力になってあげたい。しかし、ドラゴンレアール国の宰相と言う立場……国を長く離れる訳にはいかない。

 アリシアの様子を知らせる報告を待つしかなかった。

 


 アリシアが目を覚ましたと報告を受けた。少しずつ回復していることに安堵していた。しかし、アリシアが光魔法保持者であるという話は国内外に知れ渡ってしまった。

 その為、アリシアを手に入れようとする輩が害虫のように纏わりついているときく。

 アリシアは自室から出ず、日に日に元気がなくなっている。


 姉上からアリシアもクリストファーと一緒にドラゴンレアール国へ送りたいと連絡がきたのだ。

 二人を迎える手筈は完璧に整っている。

 アリシアの夢である雑貨屋を開きたいとお願いされた。やりたいことをやらせようと思う。こちらではエメラドーナ国での嫌な記憶を思い出すことのないように、大切に護ってあげようと決めた。勿論、クリストファーも同様に。

 

 


 二人は暗闇に紛れ公爵邸に入城する。

 クリストファー、アリシアの存在を知るのは数名である。成人を迎えるまでは姿を見られてはならない。

 

 久しぶりに会った二人はとても可愛らしく、美しく成長していた。クリスからは“父上”、アリィは“パパ”と呼んでくれる。 幸せだ。

 一生父と呼ばれることはないと考えていたのだ。

 それなのにこんなに可愛い子達から父と呼んでもらえるとは……嬉しさで顔がにやけそうだ……

 まだ二人と話していたいが夜も遅い明日にしよう。これからは毎日会えるのだから。



 翌朝、朝食の場にアリシアが奇妙な動物を連れてきた。

 七色のふわふわな小さな生き物……

 アリシアもクリスも精霊であるという。

 友達?契約をした??その生き物が凄く気になる。

 ドラゴンレアール国に伝わる竜王伝説……

 もしやアリシアがあの……?

 アリシア……光魔法……七色の生き物……

 神の……伝説………………

 頭の中で情報を整理していくがまとまらない。

 王立図書館の禁書を調べるしかない。

 

 アリシアが国を世界を救う力の持ち主なのではないかと胸を膨らませ……王宮へ急ぐのだった……


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