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惚れ薬の効果にかかったふりをして……油断させてその隙にここから脱出しよう。
そもそもここは何処なのか。どんな建物なのか。建物の内部情報などを手にいれなければならない。逃げ出したとしても今いる場所がわからなければすぐに追っ手に捕まるだろう。
お父様もお母様もお兄様たちも心配しているだろうな。早く帰らないと……クリスお兄様にお誕生日のプレゼント渡せてないし。喜ぶ顔がみたかったのに……
ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
「「許せない!!」」
窓の外から鳥の鳴き声が聴こえてくる。明るい光が射し込みいつの間にか朝になっていた。
外の様子を確認しようと窓から眺めてみる。周りは山や森に囲まれているようだ。この場所からは市街地や建物が一切見当たらない。目印になるものは何もない。
転移魔法が使えれば全て解決なのだが……最上級の風属性の魔法。アリシアは中級程度の魔法しか使うことが出来ない。
光魔法であれば試しにやってみて“出来たー!”ってなるかもだけど……
《どうしよう……》
“ バタバタバタバタ…… ”
ドアの外から足音と話し声が聴こえる。
『私が許可するまで誰も入室するな。』
『『はい。畏まりました。』』
《えっ!来た!?無効化した惚れ薬をピンクにしなければ……》
無効化の魔法によって真っ黒のままである。このままでは効果がないことがばれてしまう。
《 カラーリング! 》
土魔法を使い色付けする。
《うん!これで大丈夫……》
” ガチャ…… “
《入って来ちゃった……》
惚れ薬の瓶の近くで意識がなく倒れているふりをする。
『アリシア? アリィ?』
《やだ……アリィって呼ばないでよー》
と思いつつもその呼び声にピクリと反応する。
《我慢よ……我慢……》
「んっっ………だれ………??」
『僕だよ。愛しいアリィ……』
あなたはだれ?ここはどこ??と可愛く首をかしげてつぶらな瞳で見つめてみる。
『僕はカーゴ・ブルネイ。君の夫となる者だよ。』
『ここはブルネイ伯爵領にある別荘だよ。君と僕の愛の巣さ。』
《ブルネイ伯爵領?》
ブルネイ伯爵と言ったら国の結構な重鎮だよ。その息子なの……?
ブルネイ伯爵家の息子たち二人は城勤めだったよね。騎士団所属で真面目で優秀だったはず。お守りのタッセルを渡したもん。優しいお兄さんたちだった。伯爵にもう一人子供がいたんだ……知らなかった……
私より6つ上ということは15歳?お兄様のご学友って言ってたから……アルお兄様のご学友なのかな。頭の中で考えながらカーゴを見つめる。
『これは成功したのか?アリィ、私が誰だかわかってくれたかい?私のことを愛しているだろう?』
「…………はい…………」
赤らめた頬に手をかざして惚れてますよー的な瞳で最上級の笑顔を浮かべ答えてみる。
《うぇー気持ち悪いよー……耐えろ!耐えるんだ……》
『やった!やったぞ!!成功だ!これで君は僕のものだ!』
『君が成人したら正式に夫婦になるんだよ。』
『それまでは僕の婚約者として暮らしながら二人で愛を育もうね。婚約は10日後に予定しているからね。』
「…………はい……カーゴさま…………」
《成功じゃないしー演技だし……》
《夫婦とかあり得ない!!》
《10日後に婚約?!まずい!まずい!!まずい!!!》
この国は婚約=結婚の考えが強い。一度婚約をすると破棄する事ができない。ほとんどの貴族は結婚適齢期になるまで婚約を結ばず、一生を添い遂げる相手をギリギリまで見極める。
勿論どんな理由があれ破棄も離縁も認められていない。国王陛下であっても入ることの出来ない事柄。
だから婚約期間が短くすぐに結婚というのが多い。中には小さい頃から“この人!”と決めて婚約する人もいるらしいけど……
高確率で問題が起こるらしい。
悲惨なのが、子供の頃に婚約を結んだが、運命の相手?が後に現れたとかなんとか……婚約破棄も離縁も出来ず仮面結婚生活。
一夫一妻制だから愛人にして囲ったりとか……側仕えに置いて第2夫、第2夫人扱いしたりとか……怒った本妻や本夫が刺し殺したり毒殺したりとドロドロの昼ドラ展開があるのよ。
だから婚約はほんとまずい!ヤバイ!!この変態ロリコンストーカー野郎と一生を添い遂げなくちゃいけなくなる。
“死エンド”よりきつい……
タイムリミットは10日間。婚約の儀式の前にこの場所から逃げなくちゃ!!




