622話 正体不明の都市⑥
シルバーウィーク。お前も俺を置いて逝ってしまうのか…………。
体感時間でどれほど経過しただろうか?
『受けるか…………』
熟考した末にそう決断した。
この領主がこのまま大人しく解放してくれるはずはないだろう。犠牲なしに本来の業務を遂行するのも難しい。戦闘能力が一兵卒レベルの者も多いので人造人間にあっさり制圧されるだろう。人質として使われれば逆に不利な条件で契約を呑まざるを得ない。
「お受けしますが人員の調整と事前調査をさせてもらっても?」
「そうだね。何事も準備は必要だね。では、行こうか」
そう言って飛行魔導輸送騎に戻れとゼスチャーで示す。
待機している武装を整えた戦闘用人造人間らを相手に大立ち回りしても誰も得をしないし大人しく飛行魔導輸送騎へと戻る。道中ハーンだけはブツブツと考察を続けていた。相変わらずマイペースな奴だなぁ…………。
「――――という訳なんで何人か残ってもらいたい」
飛行魔導輸送騎に戻り運航に必要な人員を除く全員に艦内格納庫に集まってもらい現状を説明した。
竜王国エルマイセンでの作業は荷下ろしと文官さんの護衛だけなんで多くの人員は必要としないが、それが終わったとは湖畔の静養地アルトメイスでの魔獣退治がある。先行して作業を行っている健司らと合流するために戦闘要員なども一個小隊乗り込んでいる。
竜王国エルマイセンでの仕事はあまりないはずなので装甲歩兵に壁盾を持たせた一個分隊を残していくこととなった。
他には金竜さんや白竜さんが残ってくれるという。食客扱いだし働こうという事らしい。強力な前衛は欲しかったので大いに助かる。
上位森霊族のエルトシャンは精霊が居ないので役には立たないだろうという事で僕の方についてくることになっている。
ハーンも残る事になった。というか熱望してきた。頼んでおいた仕事は引継ぎが終わってるとの事で許可した。
あと警備用の多脚戦車も半数置いて行く事になった。
黒騎士殿はやる事があるので参加できないと申し訳なさそうに言ってきたが、僕としては枯れには期待してなかったので問題なし。
この世界では対人戦が得意な者、怪物との戦いが得意な者、魔導騎士での戦闘を得意とする者と分類される。黒騎士はあくまで騎士としては有名であるが遺跡探索の実績はないので最初から期待していなかったのだ。
人員の配置も決めた事だし和花を筆頭に迷宮に向かってもらう。僕が戻るまで焦らず仕事してますアピールしつつ安全に探索するようにと言い含んでおく。
アルマが居るからと言って死んだら確実に生き返るとは限らないのだから基本的にはいのちを大事にだ。
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僕らは夜明けとともに屋内船渠から出渠する。眼下に映る豆腐建築な町並みはいくつか火の手が上がっており未だに戦闘は終わっていない。
「まったく…………善意で飼ってやってるのに要求だけが肥大化してきて困ったものです」
そう言ったのは監視役として同行してきたコルゲンという貴族だ。時代考察から推測するに恐らくだが魔術師で実力は導師級ではないかと。
当時の世界では魔法使いに非ずば人に非ずだったからなぁ…………。
岩肌に沿って北に向けて二刻ほど進むとちょうどいい塩梅の平地が見つかったのでそこに一旦降下する。ここで黒騎士殿を降ろす為だ。
「高屋殿には世話になった。この騎体はありがたく使わせてもらう」
そんな事を言う訳だが担保としてかなり強力な魔法の武器を置いていくのだから僕としては困らない。
黒騎士殿には二名同伴者が居る。共にこの飛行魔導輸送騎に載っていた魔導機器組合から派遣されてきた魔導機器技師とその見習いだ。
目的は騎体の整備や補給などである。そしてサポート騎として新規開発の魔導輸送騎を運用してもらう。
形状はこれまでにあった箱型や平台型と異なり魔導騎士が登場する魔導速騎型である。
荷物はあまり載せられないが居住区もあり武装も施されているのでそれらの試験も兼ねている。
黒騎士殿と握手を交わし見送ったあと隣にいた魔導機器技師がポツリと。
「試験装備いろいろ試したかったなぁ…………」
そんな事をボヤいていた。貸し出した騎体はいろいろと試験装備をつけていたがほとんど取っ払ってある。
魔導機器技師らは【時空倉庫】に隠してある予備騎に組み込む気満々だけど使う機会があるかねぇ?
その後は特に事件のなく予定通りに竜王国エルマイセンが目視できるところにまでやってきた。国旗と交渉旗を出す事四半刻程で赤い鱗の竜が上昇してきた。大きさ的には成竜だろうか?
首元に毛皮でもこもこの人が騎乗しているのが見えた。この高度だ。そりゃ寒いよね。
「発光信号を確認。来賓を歓迎する。これより誘導する、着いてこられたし。です」
通信師がそう告げ艦長が指示を出し副長が復唱し艦橋内が慌ただしくなる。
取りあえず文官さんに支度してもらわないと…………。
なんかバタバタしてて気が付けばあっという間に終わってた。でも今年は幾分は積みを崩せたので良しとしよう。




