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621話 正体不明の都市⑤

なぜ定期更新や書き溜めが出来ないのだ…………

 今回は盗掘でないので珍しいものがあっても[時空倉庫の腕輪《ブレスレット・オブ・ストレージ》]に放り込んだりはしない。


 ――――してないよね?


 きょろきょろと四半刻(三〇分)ほど施設内をうろついていて幾つか気になる点は見つかった。


 いくつか文献で見かけたモノが置いてあったのだ。そこからアルマとハーンの考察が始まり前々々史文明(約3000年前)の魔法帝国時代で間違いないだろうとの事だった。恐らくだが異世界からの来訪者などによる異文化に汚染された影響で変わってしまった世界線ではという結論になった。

 そうなるとなぜここにそれが突然存在したのかという話になる。


 そんな話で盛り上がっているときだ。前方を歩く瑞穂(みずほ)が後ろ手で手信号(ハンドサイン)を送ってきた。内容は『見られている』である。


 ほんの一瞬だけ静まり返った後に再び考察が続く。僕も参加しつつも意識の半分ほどは警戒に回していた。議論は何らかの形で滅んだ世界が元の世界に吸収されたのではという意見で落ち着いた。


 更に四半刻(三〇分)程が過ぎ去る。唐突に硬い床に金属が落ちて反響した。落としたのは瑞穂(みずほ)であり意図的に(わざと)である。

 これによって飛び掛かるタイミングを計っていた人造人間(リスニア)らは気勢を制され【隠蔽(コンシール)】を解いてしまう。

 クスリを盛られて件もあり既に腰の光剣(フォースソード)に手が伸びていたが待ったがかかる。


「戦闘の意思はないよ」

 その声と共に人造人間(リスニア)らが通路の脇に移動して片膝をつく。


「クスリを盛られた側としては流石にその言葉を鵜吞みには出来ませんね」

「勝手に試したことは申し訳なく思う。ある程度の人材を必要としていてね。悪いけどこれまでの動きは観察させてもらったよ」

「お眼鏡にかなったから姿を現したと?」

「うむ」

 そう答えると領主は鷹揚に頷く。薄っすらと張り付けたような笑みがどうも胡散臭い。

「食事の時にも話しましたが我々は依頼で移動している最中にたまたま立ち寄ったにすぎません。それに――――」

 僕の言葉に被せるようにこう切り出した。

「冒険者(エーベンターリア)はタダ働きはしない。だったかな。もちろん承知しているよ。なので報酬も用意している」

 食事会の際にもざっくり説明したが念のため僕らの状況を説明しておくと説明を止めるように領主が手を上げる。


「ようは飛行魔導輸送騎(マギ・エアロキャリア)とその中身と文官(グワシフィル)と君が居れば問題ないのであろう?」

 たしかに領主の言う通りなのだが…………。

「申し訳ない。こちらの三人の女性は僕のパートナーですし、こいつは必要な魔導機器技師(インジグナー)です。僕とセットと思っていただきたい」


「私としても君らを逃したくない。首を縦に振るまで屋内船渠(ドック)の開閉扉(ハッチ)を固く閉ざす事も出来るのだが?」



 そのまま一限(五分)が沈黙のまま経過する。恐らく僕らが残ると言わない限り終わらないだろう。単純に戦闘能力で片が付く内容であれば人造人間(リスニア)を大量投入すれば済む話なので人造人間(リスニア)では出来ない事を僕らにやらせようとしているんだろう。


 さて、困った。


 そのとき後ろに居たアルマが【戦術念話(レーシオ・コマニケア)】で提案をしてきた。

『人質として私を残すのでという事で一旦開放してもらうのは? 領主の発言に嘘や誘導は見られないですし』

 流石にアルマひとり残し訳にはいかない。そうなると警護として瑞穂(みずほ)も残していかないと不安過ぎる。うちの共同体(クラン)でアルマと瑞穂(みずほ)とハーンは替えが利かない。ぶっちゃけ僕や和花(のどか)の代りは何とかなるけど…………。


 そのまま沈黙が続く。漫画のように力で強引に突破は難しい。数の力はハッキリ言って怖い。しかも死を恐れない人造人間(リスニア)である。おそらく半刻(一時間)もしないうちに制圧されるだろう。主人公補正で暴力で全てが解決できれば楽ではあるんだけどねぇ。


『私らが残るから樹(いつき)くんはさっさと仕事を片付けて迎えに来てよ。それが最善だよ』

 焦れて来たのか和花(のどか)がそう提案してきた。


「まずは仕事の依頼というなら内容を話してください。交渉はそれからでしょ?」

 意地というべきか所謂(いわゆる)権力者というナチュラルに見下す相手に安易に首を縦に振りたくなかった。


 一瞬表情を変えるがすぐに元の薄っすら笑みを浮かべた状態に戻る。なんか作り物じみているんだよねぇ。

「それもそうだ。冒険者(エーベンターリア)に頼みたいこといえば探索だよ。得意だろ?」

 無言で相槌を打つ。

「実は一週間(一〇日)前に突如迷宮(アトラクション)が見つかってね。調査に人造人間(リスニア)を一個中隊(コンパニィ)送ったんだがね。翌日見せしめでボロボロの生還者が戻ってきたが精神が壊れていてね。中の状況が分からなかったのさ。翌日から迷宮(アトラクション)から怪物が出てくるようになり難民らが襲われるているのさ。町中の騒ぎも恐らくそれだろうね」


 人造人間(リスニア)が一個中隊(およそ二〇〇人程度)が全滅するって難易度的に相当危険なんだが…………。それも怖い話だが鋼のメンタルとも言うべき人造人間(リスニア)の精神が壊れた?

 最低でも大竜(グレータードラゴン)クラスとの戦闘を覚悟する必要があるという事かな?


「報酬に関してはここの施設に興味があるようなので制御核(コア)などの重要設備以外であれば提供できる。参加者一人につき一つとしようか。どうしても信用が置けないというのであれば魔法の契約書(コントラート)でも使うかね?」


『まさか受けるの?』

 和花(のどか)から反対だという意思表示がされる。僕も本来であればお断りしたい。だがやたらと推してくる存在が居る。ハーンだ。

『樹さん(ボス)。受けましょう!』


 この後にも予定はある。どうしたものか…………。

シルバーウィークだがやはり仕事が入ってしまった。フルリモート勤務は都合もいいけどこういう時にいいように使われるのがねぇ…………。

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