619話 正体不明の都市③
なぜ毎日更新できないのか?
「さて、どうしたものか…………」
強引に逃げる手もあるがそうなると文官さんが足手まといだ、あの人は戦闘に縁がない人生だったようで基礎訓練すら受けていない。更に基本的に詠唱を伴う魔法が使えない。出来なわけではなく呪句を唱え始めると瞬時に現れて取り押さえられる。和花が怒っていたと瑞穂から聞いた。戦闘用の人造人間相手だと和花やアルマの自衛能力では不安を覚える。一応魔法の工芸品は問題ないらしいが都合のいいブツは持っていない。無詠唱も問題ないようだが残念ながら漫画のように気楽には使えない。
何か事件が起きないものだろうかなどと物騒な事を思っていると本当に事件が起きた。
領主の館全体に鳴り響く非常警報音と足音を殺すことを止めて走り回る人造人間ら。
チャンスなんで腕輪に手を添え念じる。
『逃げるよ』
婚約用に用意した奇跡の産物の[愛の証明]だが【戦術念話】機能がある。
『【転移】でいいのね?』
『うん。瑞穂をそっちに戻すからアルマと飛行魔導輸送騎へ戻って』
『樹くんは?』
『文官さんを拾ってから戻るよ』
部屋の位置も僕の方が近いし【転移】出来る術者は僕と和花しかいない。
和花が詠唱を始めた途端に人造人間に取り押さえられてはたまったもんではないので護衛として瑞穂をつけておく。
僕?
どうとでもなるから。
瑞穂と別れて文官さんの部屋の前に移動すると前に待機していた人造人間は居なくなっていた。扉を開けようとドアノブに手を添えると…………。
「施錠されている?」
時間が惜しいので光剣で扉を斬り捨て中に入ると警報が鳴り響く中文官さんは暢気に酒とツマミを堪能していた。
めっちゃ肝が据わってるなぁ…………。
「どうしたのかね?」
警報が聞こえないわけではないだろう。自分には関係ないと思っているのだろうか?
瑞穂からクスリを盛られたと聞いている筈なんだけどそれでも提供された酒とツマミを堪能するあたりもしかして馬○なのだろうか?
「お寛ぎのところ申し訳ないですが非常事態ですので飛行魔導輸送騎へ戻ります。道中何があるか分かりませんので【転移】を使いますので受け入れてください」
基本生物は魔法というか魔力を異物と捉えて拒絶反応をしめす。それは支援魔法や癒しの魔法でも同じである。
『戻ったよ』
詠唱を始めようとしたところに和花から【戦術念話】が届く。
直ぐに行くよと返事を返して呪句を紡ぐ。
「綴る、拡大、第七階梯――――」
その時何処からともなく一体の人造人間が現れる。それと同時に万能素子の流れにノイズが混じる。出現した人造人間は僕を取り押さえようと飛び掛かってきた。
魔法妨害の魔法の工芸品か!
詠唱を取りやめ光剣を握りなおすと取り押さえるために伸ばしてきた右手を掻い潜り軽く横薙ぎをすると予想通りの挙動で大げさに身をかわす。
[技能付与の宝珠]で技術を得た者の特徴で訓練と称して散々黒の偽勇者でボコって検証したとおりの挙動であった。
いくら人間以上の反射速度と言ってもう行動が読めるならそれほど脅威ではない。
次の動き動きに合わせるように光剣を閃かせる。上伝技【雷刃烈刃】は最初の軌道が牽制で防御行動をとると瞬時に軌道を変更して相手の防御を掻い潜る技である【雷刃】の上位版でそのまま追撃する形となる。
最初の一撃でワザと体勢を崩すように回避させ軌道を変えた一撃が脇腹を切裂くが傷は浅めである。軌道を変えた事で一撃の威力が落ちてしまった代償である。それを追撃で補う様に連撃で浅めの傷を幾重にもつけていく。生身の人間であれば戦闘不能であっただろうが人間以上の強靭な肉体を持つ人造人間は耐える。姿勢を崩している状態なので反撃の為に一度態勢を整えようとするのも与えられた技能の癖である。
そこを見逃すほど僕は甘くない。僅かに動きが止まった瞬間には体重が乗った人造人間の軸足を魔戦技の【練気斬】により強力な一撃が切り飛ばした。
大きくバランスを欠いて崩れ落ちようというところへ返す刃で首を落とした。心臓は即死しないの脊椎を断つのがもっとも確実なのである。
一旦周囲の気配を探り問題なさそうな事を確認すると人造人間の服を脱がせて物色すると予想通り魔法の工芸品と思しき腕輪と指輪があったので回収する。
そして呆然としていた文官さんと共に【転移】で飛行魔導輸送騎へ帰還を果たした。
樹くんは人造人間の反応速度を脅威ではないと言っていますが、控えめに言って彼は人類の上澄みです。




