618話 正体不明の都市②
リハビリだというのにまた仕事で止まってしまった。
領主と主要役人などの面会後に食事会とつつがなく進み飛行魔導輸送騎の修理が終わるまで与えられた部屋で一息ついたところでこれまで感じていた違和感を整理していた。
まずどの文明にも当てはまらない建築様式といい使用人がすべて人造人間それも戦闘もこなせるタイプだ。足運びと絨毯への足の沈み込みや僅かな足音の違いで気が付いた。
あいつらは細身の肉体で大猩猩以上の能力を発揮する事からそれに見合う重さがある。普通の人の五倍くらい重いのだ。
それに対して領主や役人は普通の人の範疇に納まっていた。
違和感は領主である。この場に国はなかった。少なくても年末までは。[神の視点]で確認済みである。可能性は例の島同様に【幻影】で隠していた可能性だが…………。
この場へと物資を運び込むための街道などがない。岩肌の傾斜に沿って豆腐建築や段々畑などが存在した。水は豊富そうであったが恐らくは[水精霊の宝珠]を使って水の精霊界から清浄な水を汲んでいるのだろう。うちでもやっているし姫将軍のところもそうだ。
あと先に行ったはずの難民らはどこに行った?
駐騎場から領主館までの移動の際にも住人などを見なかった。居るのは歩哨の格好をした人造人間くらいである。
その歩哨の装備も独特であった。光剣、光盾、魔力銃、光鎧と前史文明レベルの装備であった。人造人間にこのレだけの装備を施されるとこっちの世界基準じゃそこらの騎士程度じゃ秒殺だろう。
他にも食事のマナーや味付けもちょっと東方とも中原とも異なる。東方と中原の境目という場所柄混ざることはある。だが感じた印象は北方っぽい所謂『素材の味を活かした、素朴で優しい薄味』である。
そして言語だ。東方語ではないが公用交易語に近いが独特の訛りがある。一緒に招待された文官さんもやや困惑していた。
あとは固有名詞や名前が発音しにくく聞き取りにくい。
難民の受け入れは本当である。アルマから否定がなかったのでほぼ間違いないだろう。ただ受入れ後どうなるかは不明だ。そこまで責任は持てないが関わってしまった以上気にはなる。
そこまで思考してふと妙な眠気を感じた。確かに簡易飛竜騎に二度乗りそれなりに疲れたとはいえちょっとおかしい。妙な倦怠感もある。
その時であった。
「樹兄さん。クスリを盛られているよ」
いつの間にか目の前に瑞穂がおり毒々しい液体の入った硝子製の小瓶を差し出していた。
その小瓶はうちの共同体で製作販売している万能解毒薬であった。
本来毒や薬は専用の対抗薬で中和するか専門知識を持った術者が魔法で処理をする。魔法をかければ奇麗さっぱりとはいかないのだ。満遍なく効果がある解毒薬は存在するが効目が弱い。また魔法も知識がないと効果が落ちる。
うちの万能解毒薬はもっと上位の[万能薬]から解毒作用の成分のみを抽出した奴なので効果は抜群である。
そいつをグイっと呷る。
途端に「オェッ」となる猿頭反射が起こり眉を顰める。
「うぇぇ…………、不味い」
そう不味いのである。それも絶望的に。どっちが毒なんだよと突っ込みたくなるが効果だけは抜群なのである。
「大丈夫?」
瑞穂が心配そうに顔を寄せてくる。
眠気はマズい薬で飛んだし倦怠感も消えた。
「大丈夫。ところで何があったの?」
個人に部屋を提供されていた筈で入り口には使用人が控えている。だが瑞穂が扉から入ってきた形跡はない。窓ははめごろしだ。
瑞穂は【転移】はまだ使えない筈だし…………。
僕の視線で察したのか瑞穂が上を示す。視線上げると天井の一部がぽっかり空いていた。点検口だろうか?
瑞穂の用件は各部屋に回って万能解毒薬を飲ませて来たとの事で最後が僕の部屋だったとの事だ。
先に自分で飲み和花、アルマと済ませて文官さんに呑ませて最後が僕であった。実に正しい対処である。ゲームとちがい耐毒スキルなどはないので毒の効目は体格と体力が劣るものから発揮していく。
「助かったけど、魔法じゃダメだったの?」
ところが瑞穂は首を振る。
「魔法を使おうとすると使用人が飛んでくる」
そう答えるのであった。
ただし例外もあり無詠唱に限り反応がないそうだ。
瑞穂は和花に言われこの後の行動をどうするか確認に来たのだ。
因みにごく少量の毒を年単位で含んでいくことで耐毒性を上げることは可能です。




