617話 正体不明の都市①
艦橋に設置の映像盤から見えた町の印象は某サンドボックスゲームの「豆腐建築」であった。
「交渉旗を掲げて」
夕闇時に巨大な飛行魔導輸送騎が飛来してくれば先方は慌てるし最悪の場合はいきなり攻撃される可能性もある。
程なくして先方の町から発せられた発光信号からモールス符号によって停船を求めていることが分かる。それなりに教育を受けた存在が居る事が分かる。
船体の停止を命じて待機していると用件を聞いてきたので難民の受け入れを打診する。
八半刻ほどして指定箇所に降下しろと連絡が来る。驚いたことに中原で使われている国際信号書に基づいたものであった。
駐騎スペースに灯火されていく。松明などの明かりではなく白色の光だ。恐らく【光源】の魔術に準じたものだろう。
アンカーを打ち込み船体を0.25サートほど浮かせた状態まで降ろす。そして開閉扉を開くと出迎えの人々が来ていた。
「ようこそ中原のお客人。私はこの町の代表である繧「繝ォ繝輔か繝ウ繝サ繧ォ繝翫�繝�と申します」
先頭に立つ仕立ての良い衣装をまとった東方民族の男性が流暢な中原語で挨拶をする。その動きに卒がない。中原で高度な教育を受けた人物だろうか?
だが名前が意味不明の音声として耳に残った。
此方も名乗り用件を伝える。赤の帝国に追われる難民を救助した事と彼らがここを目指していた事を告げ受け入れてもらいたいと伝えると二つ返事で了承された。
なんか違和感を覚えるものの正直言えば難民はお荷物でしかなくこちらの業務を妨げる存在なのでさっさと降りてもらえると助かるのだ。
そして名前のよくわからぬ人物の後ろに控える使用人らにも妙な違和感を覚えた。
受入れ自体は歓迎との事なので黒騎士を呼び受け入れてくれることを告げるとよく通る声で難民らに下船許可が出たことを伝え、町で受け入れてもらえることを告げると難民らに笑顔が戻り嬉々として数少ない荷物をまとめ始める。
下船していく難民らを使用人らが荷物を持ったりと補助してる様を見て違和感の正体に気が付いた。
「彼らは人造人間だ」
そう思って改めて見直すと恐ろしいまでに訓練されたような一様に同じ動作で作業を行っている。技能付与で技術を植え付けたような感じからして間違いないと思う。
念のため後ろ手で手信号で警戒せよと指示を出しておく。
アルマはこの辺りには何もないはずだと言った。彼女の記憶力を疑うつもりはない。そうなると以前砂漠で遭遇したような時空を旅する町だろうか?
「金竜殿は何か心当たりはないですか?」
近くに来ていた客人に問いかけた。この中ではおそらくもっとも長生きで様々なものを見ている筈だからだ。
「我々の知識を当てにしているようだが多くは覚えておらんよ。だが何処かで似たような建築様式の世界を見た記憶はある」
「ここではない?」
「ここではないな」
そう言って白竜殿にも同意を求める。彼女も見た記憶はあるがあまり覚えていないとの事であった。
僕らに興味を覚えたとかでついてきた森霊族のエルトシャンが長寿の者らは印象の薄い記憶を消してしまうのだと説明してくれた。全てを覚えている事は不可能なのだと。
調査したいが仕事が先だ。
船体の総点検を命じて一休みする事にする。
ところが名前の分からない人が食事でもどうだろうかと提案してきたのだ。
礼儀としては断るのはマズいんだよなぁ…………。
一応後ろに居る文官を見るが我関せずであった。
仕方ない。
享ける事にした。




