616話 判りやすい地雷は無視しよう
投稿予約忘れて保存のままで寝てしまった。
無事に帰還を果たしたころには飛行魔導輸送騎の応急処置も済んでおり高度125サートあたりを西に向かって航行していた。孔は内部から塞いだので取りあえず飛行は安定しているが万能素子転換炉で得た魔力の多くを浮遊装置に回すことで推進装置に魔力が回せずに速度がガクっと落ちてしまっている。
ハーンらは簡易飛竜騎の脳核ユニットから情報を抜き取り解析を始めている。取りあえず僕はハーンの解析結果を待つ間に同行してくれた瑞穂を労いつつ彼女と別れて艦橋へと向かう。
「艦長。今後の航路計画の見直しについてなんですけど…………」
と切り出してみると
「もう出来上がっています」
と返ってきた。なんでも和花の指示で同行している依頼人代行の文官を交えて終わらせたという。
最近では当たり前に共同体で普及している情報表示板に航路図が投影される。
難民らが目指してい場所は白竜山脈の中腹下層あたりにいつの間にか存在していた。距離は凡そ50サーグほどだ。空気が澄んでいる事もあり既に艦橋からも視認は可能だという。もっとも距離が離れているのであそこらへんくらいにあるよというアバウトな感じだけど。
現在の速度だと二刻ほどで到着予定だという。時間的に日没だなぁ…………。
そこは艦長らも分っているので翌朝に現地調査と受け入れ可能な箇所かの確認を行い難民に多少の食料などを持たせて開放するとしている。
その後は翌朝まで船体の総点検を行い竜王国エルマイセンまで白竜山脈沿いに北上する。到着予定は5日後との事だ。予定より3日遅れたがこの世界ではこの程度の遅れは当たり前なので失礼には当たらないらしい。ただし事前に連絡は入れる必要がある。
黒騎士殿も難民と一緒に降ろしてしまおう。悪い人ではなさそうだけどなんというか…………。
関係各所にスケジュールを伝達してもらい難民の事とか和花から聞かせてもらおうと与えられた私室へと向かう。
僕ら幹部は一応個室を用意している。
ノックをし「どうぞ」と返事が返ってきたので扉を開くと既に先客が居た。
その先客は寝台腰掛けている和花の膝枕を占有している。ごうやら先を越されてしまったようだ。
「終わったの?」
膝枕している瑞穂の頭を撫でつついつものように微笑んで迎えてくれる。でも、なんというか、妙な違和感が…………。
「うん。それより航路の件と難民の件はありがとね」
まずは違和感を無視して航路算定や文官との折衝やら難民への対応についてお礼を言っておく。正直ひとりでどうにか出来る状態ではなかったので大変助かったのである。
「ところで、なんか嫌な事でもあった?」
早速斬りこんだ。
少し驚いた感じであったが直ぐに平静さを取り戻す。
「あれ、表情に出ていた? 実はね――――」
そう言って話始めた内容は要約すると難民にひとり厄介な人物がおり、その人物は難民の間でも腫物を扱うような存在で出来れば関わりたくないという感じだったという。
ところが関わりたくないと思った事でフラグが建ったのか件の人物が執拗に和花に迫ってきたのだという。色目を使ってきたと言い換えた方がいいか。
自分は異世界転生してチート持ちだから今のうちに自分に気に入られといた方がいいとか、終いには〇りたいとか言い出す始末でかなり精神的に疲弊したとの事であった。とにかく生理的に無理と何度も何度も連呼しているあたり相当だろう。
よく【魔力撃】をぶっ放さなかったと褒めてあげたい。
最終的に黒騎士殿が割って入ってきて事なきを得た。しかしどんなチート持ちなんだろう?
これまで並行世界の日本人は幾人も見たけど基本的に召喚されて者たちだしアリスは転生だけどこっちで死んでから転生させられている。神学によると高次の存在になった神々が個別で多次元から人を呼ぶことはない。多少の差はあれどこの時空樹世界での人間に大きな差はない。わざわざ労力を割いて他の世界から召喚する意味がない。何か地上界に干渉が必要なら信者ないし現地人にちょっと力を授ければ済む話である。ただし悪神や神未満のなりそこないが戯れで呼び寄せる事もあるがそう言った輩は現地人に始末されている。
だから僕の中では恐らくだけど神未満の存在に戯れで攫われた可哀想な人だと結論づけた。
吐き出すことで落ち着いてきたのか話題は別の人物に移る。黒騎士殿の事だ。
「あの人は恐らく死に場所を探しているんだと思う」
それが僕ら二人の共通の印象であった。黒騎士殿は赤の帝国に主君を討たれている。
名が売れた理由が黒騎士の乗騎が平凡な[アル・ラゴーン]で赤の帝国の[赤騎士]を何騎も討ち取った事だろう。
その後は|青の|勇者《|キャーア・デ・フォーティス》に倣って難民を見つけては安全地帯まで護衛しつつ遭遇した[赤騎士]を狩っていたそうだ。
うちにぜひ欲しい人材ではあるんだけど主君の仇討が終わらない限りは断られるだろうなぁ…………。
人間にはステータスがないが魔導騎士に限ればステータスは存在する。速度、筋力、装甲、平衝、耐久、反応という項目がありそれぞれが1から15の数値で表されている。
[赤騎士]を鹵獲し僕らも解析しており性能は把握している。ハッキリ言って極めて高水準だ。同程度の力量であればほぼ勝ち目はないくらいには性能差がある。
そんな中で記録では確か撃破数24騎だとか。
あと難民でひとりだけ気になる人物がいたと話題になった。もっともこれは和花ではなくアルマが気にしていたとの事なので後で話を聞いてい見る必要がありそうだ。
その後は話題が点々と飛び艦橋からの連絡があった頃には一刻半も経過していたのだった。
目的地の町が視認できる距離に来たとの事であった。
[アル・ラゴーン]は大陸で最も普及している魔導騎士で多くの騎士にとって「これといった不満が出ない性能」な騎体。中古で結構安く購入できるし部品も豊富。弱小国や個人で運用する者たちに評価が高い。




