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615話 新兵器?

暫くはリハビリ。読んでくださった方々が戻ってくればいいなぁ…………

「発令所《セントルム・インパーリ》被害状況は?」

 伝声菅まで走り叫ぶように問う。声色から自分でも焦っているのが分かる。

「こちら副長(アジョイント)。索敵範囲外から狙撃です。外殻(スキン)を貫通し第三気嚢(アーアサック)を貫通されました。浮力が低下しましたが今は持ち直してます」

 僕の中で何かが繋がった。

「煙幕《ビールム・ファマーリアム》! それと船体を急いで地平線の陰に!」

 伝声菅の向こうで艦長(キャピタイン)が指示を出し同時に船体が下降を始める。

 僕の見立てはこうだ。

 この飛行魔導輸送騎(マギ・エアロキャリア)の索敵範囲は半径2.5サーグ(約10km)である。斜め下から貫通となると地上からの投射であろう。この時代にそんな兵器はないが前時代の遺物であれば存在する。対巨獣長尺加速投射器(物干し竿)である。あれは音速の20倍の速度で重力を無視して一直線で飛翔する。この世界は地球同様に丸いので高度を下げれば射角から逃れられるはずである。地平線の陰とはそういう意味だ。


 船体から軋んだ音が鳴り響き不安を煽る。何処かで応急処置が必要だろう。


 僕は伝声菅に向けてこう伝える。

「対巨獣長尺加速投射器(物干し竿)で撃たれたと仮定して入射角を計算して狙撃手の位置を割り出して」

 前時代の高度な機器を用いており2つの破孔、射入口(エントリー)と射出口(エグジット)の位置は出るはずである。更に姿勢制御装置(ジャイロスコープ)の姿勢制御(ピッチロール)から入射角は確認できるはずである。


 程なくして回答が返ってきた。

「入射角は凡(およ)そ5度。想定狙撃位置は2.75サーグ(約11km)先となります」

 此方の索敵範囲ギリギリ外かぁ…………最悪だ。

 地平線の陰に隠すとなると単純計算で地表すれすれまで高度を下げる事になる。これはもう一撃喰らうかも? 

「降下し西に進路を取って」

 これで地表まで降りなくても射線を切れる。

 そう指示を出し僕は艦内格納庫(カーゴスペース)の魔導機器組合(マギテックギルド)所属の魔導機器技師(インジグナー)を呼んで簡易飛竜騎《マギ・エンタル・ドラッジ》の再出撃を要請する。

 気流が乱れるのか船体が結構揺れており不安を煽っている。浮遊装置(フロレンティア)と複数に分散した気嚢(アーアサック)のお陰で墜落は免れそうだけど…………。


 僕は急いで専用防具を見に纏い騎体に跨る。

「燃料と武装は?」

 アンカー(固定具)を止めつつ補助の魔導機器技師(インジグナー)に尋ねると燃料は満タン。武装は胴体内弾薬庫《インターナム・マニティオナム》に無誘導式噴進弾(ロケット弾)が5発納めてあるとの事だ。


 急いでいるため手順を省略し緊急発艦となる。これもデータ収集に必要なのでラッキーと思っておこう。

 発艦指示員《エミシオンズ・オフィサー》の発艦指示で騎体が後方に打ち出される。


 翼を展開し噴孔推進機関(ジェットエンジン)が咆哮を上げる。旋回し船体の損害を確認する。対巨獣長尺加速投射器(物干し竿)は所謂(いわゆる)徹甲弾なので船体の大きさからすると目立った損傷は見られない。どのみちこちらの速度が速すぎてじっくり観察は出来ないのだけど。

 そうしているうちに予想通り瑞穂(みずほ)も出撃してきた。基本的に二人一組での運用を提唱されていたのでこれでいい。

 発光信号で地表すれすれを飛行して目標地点を目指す旨を伝える。


 正直言えば時速82ノード(約300km/h)ほどで地表5サート(約20m)を飛行する。対巨獣長尺加速投射器(物干し竿)は重すぎて高速で動くものは狙えない筈なので高度を下げなくても思わなくない。だけど出来ればギリギリまで射線は切っておきたい。


 程なくして地平線の先に見えてきた。

「?」

 一瞬脳がバグったかと思った。対巨獣長尺加速投射器(物干し竿)の射手は人ではなかった。それどころかサイズも違った。

 一瞬で目標と交差する。

「でっっっか!」

 聞こえないのを承知で声を上げる。地表に居た人員との対比から射手の大きさは10サート(約40m)の装甲を纏ったゴリラ型であった。二乗三乗の定義的にあり得ないサイズであった。

 この世界での大型生物は魔闘術(ストラグル・アーツ)によって肉体の強度を上げてあったり軽量化しているから大きくても問題ないのであって、それでも限度いうのがある。

 魔導騎士(マギ・キャバリエ)も強化ありで2サート(約8m)前後なのは人間らしい動きを行えるサイズがそのあたりだからだ。


 10サート(約40m)のゴリラサイズだとするとその重量は推定でも31.2万グラン(約26万t)にもなる。ゴリラの体型のままだと構造的に耐えられるはずがない。背面から二本の巨大な対巨獣長尺加速投射器(物干し竿)が突き出している。その砲身は10サート(約40m)にもなる。だが口径と船体に空いた孔の大きさが合わない。

 よく見ると砲身の上に人間サイズの対巨獣長尺加速投射器(物干し竿)が据えられている。あれは同軸照準砲として据えたモノだろう。アレに当てられたのか…………。


 竜騎兵(ドラグナー)らが小銃(ライフル)をこちらに向けているが照準が定まらないようでオロオロしている。

「射手に正体が知りたかっただけだが行き崖の駄賃という事で無誘導式噴進弾(ロケット弾)でもぶち込んで耐久度でも見てみるか」

 発光信号で瑞穂(みずほ)に攻撃指示を出す。胴体内弾薬庫《インターナム・マニティオナム》が開き無誘導式噴進弾(ロケット弾)が全弾発射される。

 合計10本の無誘導式噴進弾(ロケット弾)が白煙を靡《なび》かせ空気の壁を引き裂いていく。


 ほぼ同時に着弾し爆発はする。黒煙で巨体が見えなくなる。

「やったか!」


 だが黒煙が晴れた後に姿を現したのは無傷の巨大装甲大猩猩(ゴリラ)であった。

 フラグを立てたせいで…………。


 取りあえず攻撃手段もないし煙幕《ビールム・ファマーリアム》をバラまいて帰還する事にした。


 ハーンが鹵獲してくれって言いそうだけあれは無理だ。


まずい。設定資料が行方不明になってしまった。

速度の算出どうしたっけかな?

ゴリラの重さは世界最大規模の豪華客船クラスですね。

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