614話 難民らをどうする?
リアルであれこれありすぎて気が付けば4か月以上更新が止まってしまった。リハビリしつつ再会。もう誰が読んでるんだよとか思わなくもない。
大きな船体が着底すれすれで停止する。この大型の飛行魔導輸送騎に搭載された浮遊装置の性能は出力の加減で高度を調整する。着底するという事は浮遊装置の出力を停止するという事だ。
困ったことに一度停止した浮遊装置は浮遊に必要な効力が巨大な船体に影響を及ぼすまでにかなりの時間を要する。
いま赤の帝国の連中が襲ってくると早期発見できたとしても上昇中に捕捉されてしまう。
緊急離脱とか出来ない事が飛行魔導輸送騎が普及しない原因の一つでもある。
その為に地上0.25サートほどで降下しアンカーを打ち込むのが基本である。そして周辺警戒に搭載していた警備用の多脚戦車を放つ。
僕はと言えば手の空いている人員にアルマと和花を呼んでくるように伝えると報告書の作成のために騎体を降り魔導機器技師の質疑応答に答える。
生まれたての簡易飛竜騎の脳核ユニットは基本動作しかないので実際に調律して使いやすいようにしなければならない。人型の魔導騎士などでも転倒などによる危険は伴うが高速で飛行する簡易飛竜騎の場合は魔導操手の安全が担保されずこれまで塩漬けされていた。
僕と瑞穂が選ばれた理由は単純な話で魔術師として【飛行】で飛行するという感覚に理解があり、また【軟着陸】や【落下制御】などで安全対策がとれる。この世界は魔術師であると同時に騎士は多くは居ないので結果としてこうなった。
因みに和花は騎体との相性が悪かったので候補から外れた。
報告書も出来上がり次回の試験内容などを決まったところで簡易飛竜騎は整備をするとの事で所定の位置へと移動させる。
程なくしてアルマと和花が仲良くやってきた。
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
そういって順番に軽い抱擁を交わしたあとアルマが口を開く。
「お呼びだとか?」
僕は開閉扉の外に見えるある一点を差して説明を始める。
「実は――――」
「では私の名で施しをしますね」
難民の数は凡そ70名ほど。大半が女性か子供である。男もいるが怪我人だらけであった。
冒険者は無償で人助けをしてはいけない。それが巡り巡って他の冒険者に無償の奉仕を要求する奴が出るからだ。冒険者は正義の味方ではなく仕事として人助けも熟す。
特に等級の高い冒険者ほど影響力が大きく罰則が大きくなる。
ここで建前が必要になってくる。
アルマの聖職者としての立場だ。聖職者は弱者への施しを信仰の一端として容認している。仮に冒険者として登録していても聖職者の立場として動く場合はお咎めがない。
アルマが中心となり同乗していた使用人たちと大急ぎで食事と簡単な治療が始まる。
四半刻程たち難民らも一息付けたようで気を抜いているものも見受けられる。
アルマがひとりの男性を伴ってやってきた。
漆黒に染め上げた革鎧に要所要所を硬革製の防具で補強した僕と同じくらいの背格好の二十代半ば品の良さそうな人物であった。目を引いたのは腰に佩いた豪奢な装飾の施された広刃の剣だ。
「危険を冒して助けていただき大変感謝する」
流暢な公用交易語でそう言って軽く頭を下げる。
「此方の方は難民をここまで誘導してくださった――――」
「ロドリゴ・デ・カルマン男爵である…………いや、正確には元がつくな」
何処かで聞いた名だなと思っているとアルマが寄ってきて耳元で囁いてきた。
「黒騎士です」
有名人であるがなんで気が付かなかったと思って気が付いた。この人物は漆黒の魔導騎士を駆っているのだけど、今は騎体すら見当たらない。よく見れば防具は騎士用の搭乗鎧であった。
「黒騎士殿でしたか。僕は――――」
「君の勇名は私の耳にも届いているよ。なにせ卿は有名人だからな。竜殺しにして【天位】持ちの剣士にして高位の魔術師でもある高屋殿であろう。ん、飃刃も君の名だったか?」
「ご存じでしたか」
「そちらの置かれている状況も理解している。そのうえで頼みたいことが二つある」
そう言って話始めた内容は最初の一つ目は予想通りの内容であった。難民を安全圏まで運んで欲しいという。彼らは西の白竜山脈を目指しており最近そこで難民を受け入れをしている施設があるという。
その話は僕もアルマも初めて聞く内容で眉唾ではと思わないでもないが輸送に関しては予定航路から大きく逸れるわけでもないので了承した。
続いてもう一点の方はちょっと図々しいのではと思ってしまったのか見事に表情に出てしまった。
「図々しいことは承知している。勿論ただとは言わない。担保としてこれを預けておく」
そう言って腰に佩いていた広刃の剣を外すと僕に差し出した。
貴族向けの美術品としても価値がありそうだが、それでも価値としては金貨5枚が良いところだろう。大して差し出せというものは、この飛行魔導輸送騎に搭載している魔導騎士を一騎である。
ぶっちゃけると試験用の騎体で既に僕に合わせて調律済みなので寄こせと言われてもまともに動かせるのだろうかという気はする。
やや距離を置いて聞き耳を立てているハーンと目が合うと無言でどうかと問いかける。
理解したのか問題ないと手信号が返ってきた。
家宝なのかも知らないがそれに価値を見出せないので対価としては弱いんだよねぇ…………。
「それ、拝見しても?」
そう思っているとアルマが広刃の剣を指し尋ねていた。
「構わないよ」
黒騎士の了承を得たので一度じっくり観察する。珍しい事に金属製の鞘であり見事な彫金と色とりどりの宝石が埋め込まれた儀礼用の広刃の剣といった印象である。
柄を握り僅かに抜いてみると溢れんばかりの魔力の波長が広がった。
こいつ魔法の武器か。しかも魔術師以外でも見えているようでかなりの強力な品である事が分かる。
これを担保と言った理由も納得である。詳細は後でいいだろう。抜きかけの刀身を仕舞う。
「二件目もこれを担保にという事で承知しました」
そう答えてハーンに再調律の時間を尋ねると半日は欲しいとの事であった。
念のため赤の帝国の連中が戻ってくる前に離陸しておきたいので難民らを収容を指示する。
半刻後には高度250サートまで上昇を終えていた。一安心した時である。斜め下から突き上げるような衝撃と船体が新図んでいく感覚が襲い収容した難民らが悲鳴を上げる。
それに合わせるように艦内に非常警報が鳴り響く。
一応こういった経緯でといった経緯を近況に記しましたがプロじゃあるまいし多くの人には関係ない話でもありますよね。




