613話 飛行する
うちの会社は忙しくなるととことんブラックモードに入るから困ったもんだ。業界の悪しき慣習だろうか?
ギリギリになって無理やり時間を作って投稿しました。
艦内格納庫へ行く前に更衣室に入る。今回運用する騎体は専用の防具の着用が必須だからである。
それは体にぴったり張り付く伸縮性に富んだ錬金繊維のスーツに硬革製の全身防具で構成されている。特に変わっているのが無数の留め金がある。
専用の背嚢を背負い兜を被り首元で兜と鎧を固定する。
気が付くと瑞穂が隣で同じように支度をしていた。
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検証用の専用装備に着替えてから艦内格納庫に向かうとすでに準備が始まっていた。
この飛行魔導輸送騎は艦内格納庫側壁に専用のスペースを設けてあり今回検証用として持ち込んだものは簡易飛竜騎とその武装と専用防具である。
うちの共同体は技術検証とかの謝礼として魔導機器組合から整備費用などの免除という多大な恩恵を受けている。
本体価格のわりに普及が広がらない最大の要因が莫大な維持費だ。
例の島の自動工場で部品などを用意できるけど出所を知られたくないのでこの恩恵を受け続けている。
騎体まで移動し点検中の技師に声をかけるとちょうど確認作業が終わったようで「準備完了です」と返答があった。
僕は礼を述べ騎体の首の根元に据えられた専用の鞍に跨ると鐙に足をかけ操縦桿を握り騎体に抱きつくようにする。
技師が本体から伸びる無数の鋼線を専用防具に取り付けていく。これは飛行時の命綱でもある。そして技師が装備のチェックをしていく。
この兜は簡易飛竜騎の視覚情報を魔導操手に見せるものである。
簡易飛竜騎には風防などはなく風圧と冷気と酸素濃度に騎士が耐えられないので専用防具が必須となるのだ。
手信号で準備完了の合図を出すと控えていた発艦指示員が身振りで合図を出すと騎体が側弦の射出レールに移動していく。
それと同時に心肺器の出力が上がり噴孔推進機関が咆哮を上げる。
発艦指示員が手信号でカウントダウンを始める。
実は仮象操縦訓練装置で訓練はしたけど実騎は初めてなのである。緊張してきた。
発艦指示員が発艦の合図を出した瞬間、騎体は後方に高速で射出される。瞬時に強烈な平時の三倍ほどの重力加速度が後ろから襲い掛かる。圧迫感とある種の高揚感を一瞬感じるものの悠長にしていられない。騎体が重力に引かれて落下する前に右の操縦桿を強く握ると僕の意思を脳核ユニットが汲み取り畳んでいた翼を大きく開き噴孔推進機関が更なる咆哮を上げて騎体が加速を始める。
身体はほぼ騎体に固定されているので僅かに目線を動かすと無事に瑞穂も飛行状態に移行していた。
今回は難民救助の名目の騎体射出と兵装の試験である。
騎体間の連絡は翼端灯を用いた発行信号で行う。だがこれだと指揮官騎からの一方的な指示しかできない。
かなり不便だ。しかしこの世界の今の技術レベルだと魔導通信機が小型軽量化出来ないので簡易飛竜騎には搭載できない。
目標に向かいながら急いで武装の確認を行う。
口内に有効射程20サートほどの火炎放射器、後部尻尾に付け根に発煙弾発射機が六発、脚部の鉤爪、長い尻尾、胴体内弾薬庫には用途に合わせたあれこれを搭載できるが恐らく爆装が主となるだろう。今回は拡散爆雷を二発搭載している。ちなみに瑞穂の騎体には無誘導式噴進弾を搭載している。
騎体の骨格は軽量化の意味もあり鋼硬木で出来ており二次装甲に至っては硬革製である。本来は接近戦などは想定していない。
騎体の操縦方法は補助脳核ユニットが特定の動作を変換して脳核ユニットに伝える方式で、右の操縦桿は加減速と兵装の運用。左の操縦桿は縦揺れと偏揺れに用いる。左右の操踏桿は横揺れ制御する。
そうこうしているうちに目標が見えてきたので一旦高度を上げる。恐らく噴孔推進機関音でこちらの存在はバレているだろう。
騎体を横揺れさせ目標を視認すると急降下を始める。出来れば人殺しは勘弁なので一発目は警告の意味で先陣をきる魔導戦闘車両の前方に投下する。
高度25サートで投下する。そのまま機首を上げて上空へと逃げる。投下された円筒の爆雷は高度10サート炸裂し無数の子爆雷を散布する。
散布された子爆雷は地表に着いたと同時に爆発を起こす。それぞれが【火球】くらいの威力があり対人には十分な威力である。
目の前でいくつもの爆発が起き竜騎兵らが混乱し魔導戦闘車両も足を止める。
そこへ瑞穂の騎体から放たれた無誘導式噴進弾が無限軌道に命中する。
幾人かの竜騎兵が立て直し鎖閂式小銃を上に向けるが既に僕らは射程距離から脱出を果たしている。
これで逃げ出してくれればと思っていると魔導戦闘車両が火を噴き始め爆発する。恐らく誘爆だろう。
流石に自身の不利を悟ったのか慌てふためいて退却を始めた。とりあえず最低限の目的は果たした。
でも…………魔導戦闘車両を鹵獲したかったなぁ…………。
暫く上空を旋回し索敵を続けていたが少なめに入れていた燃料が尽きそうだったので着艦のデータどりをすることにした。
着艦はいたってシンプルだ。母艦と相対速度を合わせて牽引鉤爪に引っ掛けるだけである。
これは仮象操縦訓練装置で何度も訓練したので特に労なく帰還できた。
報告書を書かなければならないが、まずは艦長に言って飛行魔導輸送騎を降ろすことにしよう。難民をこのままにしてはダメだ。関わった以上は最低限面倒は見なくてはならない。
残念ながら「いきまーす」とか「発艦どうぞ」とかないのです。まーうるさくて聞こえないので。
通信環境ですが例の島の技術は秘匿しているので身内だけで運用する時以外は使いません。




