土曜日の夜 8
「いいのか?」
恭平が、美織をそのままにしていいのかと、二人を見るが、爽も成哉もそれに答えられない。
小柄な女の美織を、3人の男が捕まえるのは簡単だろう。
けれども、捕まえる根拠は、今の時点、爽の言葉だけなのだ。
誰が、霊能力者の言葉を根拠に、彼女を警察につきだすことができるだろうか。
今のところ、彼女が殺人を犯した証拠はない。
彼女と被害者との接点についても、まるでわからない。
警察が、彼女を捜査線の俎上にあげるまでに、どれだけの時間がかかるのかわからない。
けれども、
「彼女は、このままではいられないと思います。」
爽は、断言した。
「警察に捕まるにしろ、捕まらないにしろ、彼女には、強いものがはり付いています。」
恭平が、目をむいた。
「強いもの?」
「おそらく、彼女の犯罪はこれが、最初ではないと思います。」
「え?」
「前の会社の同僚じゃないかな?彼女に殺された男性がいます。幸せの絶頂にいた男性で、随分な未練を感じます。彼女がフリーだということは、事故として処理されたんじゃないかと思います。事件を知るのが彼女と被害者のみだということで、彼は、彼女に相当な恨みを持ってはり付いているようです。チャンネルをあわせていないのにも関わらず、見ただけで、違和感を感じるほどの強い念を持つ霊です。彼女の人生は、今後も明るくはならないでしょう。」
「…。」
成哉の背中が、ぞわりと寒さを感じる。
美織と一緒にいたあの部屋は、暗かった。
その暗さの本当の意味を、成哉は、理解した。
しばらくして、成哉は、口を開いた。
「俺が警察に行く。」
「?」
「恭平から、警察が俺を探していたということを聞き、事情を話しに出頭したということにする。」
「どこまで、話すつもりだ?」
恭平の問いかけに
「俺の行動については全て。美織さんに会ったところから、記憶がないことに気が付き、彼女の家で、1週間世話になっていたところまで。」
「あの女の異常さを、警察が理解できるかな。彼女が、犯人だと目星がついた時には、何故、お前と仲良く暮らしていたのかという疑問にぶちあたる。共犯だと思われるかもしれない。」
「その時は、その時さ。」
成哉は、持ち前の呑気なペースを取り戻していた。
「まあ、いいか。今は、成哉を取り戻せただけで。」
緊張感で、ピリピリしていた恭平が、ようやく安堵の溜息をついた。




