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ONE WEEK  作者: K
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26/31

土曜日の夜 5

成哉が、こんなバカバカしいこと、信じられるかと言った時点で、恭平たちは、成哉を救う手立てを失う。

恭平は、成哉を祈るような気持で見つめた。


成哉は、考えても仕方のないことだとわかっていた。

彼等が冗談を言っているとは思えない。

だとしても、美織を疑うことにも躊躇がある。

彼女が悪人だとは思えなかった。

ただ…

成哉は、こたつの上から恭平からの電話のメモを、美織が隠したのだと気づいている。


何のために?

その理由がわからない。


「質問に対して、答えが出てくることがあるって言ってたな。」

テストのつもりだった。

この目の前の自称霊能力者の能力をテストするつもりで、成哉は、質問した。

「美織さんは、どういう性格?」

爽は、少し、目をそらした。

何かを考えるように、宙を見ている。

しかし、そんなに待たせなかった。

「彼女は…。」

「…。」

「物事を、考えられないサイコパスです。」

「え?」

「彼女のキャパシティは狭く、彼女は、深く物事を考えることができません。」

「それは…。」

成哉が戸惑うのも道理で、美織自身は考え過ぎる自分に悩んでいたからだ。


しかし、爽は、断言する。

「彼女が、考えていることは、思考のレベルじゃありません。」

「?」

「単なる時間つぶしです。」

成哉は苦笑した。

「時間つぶしって…。」

爽は、成哉の咎めるような視線も意に介さず

「彼女の考えは、いつも堂々巡りです。彼女は、本気で答えを見つけようとはしていません。」

と、決めつけた。


「彼女が、本当に考えなければならないことを、考えずに、上っ面の、答えのでない問題だけを考えているのは、彼女が、本気で、何かを変えるつもりも、本気で、何かを見つめるつもりもないからです。」

「?」

「彼女が、深く考えることをしないのは、深く考えると、彼女自身の認めたくない部分を見なくてはならないからです。自分が会社にとって、必要な人材ではなかったことや、好きな人に、好きだと思われていなかったことや、優秀だと思っていた自分の能力が人より劣っていることなど、これらは、どんなことをしてでも、彼女が認めたくないことなのだと思います。」

「どんなことをしてでも?」

「彼女は、その現実を認めたくないばかりに、現実から逃避し、考えないようにしています。答のない堂々巡りを、頭の中で展開させ、他の、本当に考えなければならない思考の入る余地を無くしています。そして、更に、その現実を歪ませ、自分の現実を認めさせようとする存在を消すことで、自分の信じる現実を本物にしようとしています。そのことについては、一切、本気で考えていません。考えることも出来ずに行動しています。そして、その行動については、何の罪悪感も感じていません。」

「…。」

「彼女が、自分が殺そうとした男と一週間も一緒に暮らしたのも、彼女が本気で考えることができないからです。本質的なことを考えようとすると、彼女が、何故、被害者を殺さなければならなかったかを考えなければならなくなる。だから、深く考えることをやめてしまう。自覚は、なかったでしょうが。彼女が、この一週間、悩んでいたことは、自分が殺人犯であると言う事実からは、完全に離れています。その部分を彼女は直視することができません。事実をありのまま、認められないのが、彼女の性格であり、彼女の犯罪の根源にあるものです。」

「…。」

「そして、彼女の行動の意味を考えることも、また、無駄な行為です。考えて行動しない彼女の行動に一貫性はありません。彼女が、不審な行動をしたとしても、それが、必ずしも、彼女の犯した犯罪に結びつくとは限らないからです。」

「…。」

「例えば、彼女が、あなたの持ち物を隠したとしても、その理由は、必ずしも、この犯罪に起因するものじゃありません。」

成哉がピクリと反応した。

「成哉さんが記憶を取り戻すと、自分の犯罪が露見する可能性があるからというのが、普通の人間の考える事。けれども、その時の彼女は、自分の犯罪行為をみとめたくないので、行動が、そこに結びつくとは限らないのです。」

「…。」

「常識的でない彼女の思考を追うことは、無駄なことです。」

「…。」

気が付くと、爽が、成哉を見ていた。

成哉自身を見ている。

成哉のテストに爽が答え終えたのだ。

「それは…。」

成哉が、言いかけた時だった。

カランカランと喫茶店のドアのベルが鳴った。


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