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ONE WEEK  作者: K
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20/31

木谷の金曜日

コールセンターの仕事はクソだ。

コールセンター幹部社員、木谷真知子にはわかっていた。

クソだということは、わかっているけど、自分をここまで評価してくれる会社は、ほかにはないだろう。

営業能力のみを買われた人選だ。

若い幹部は、皆、木谷と同じ電話での営業力だけで昇進した。

人心掌握能力なんて欠片もない。

誰も、そんなことを教えてくれもしない。

ただ、数字だけあげてくれれば、いいというのが、上の方針であり、幹部である木谷たちが求められていることだ。

数字をあげるためには、足手まといの社員は斬り捨てる。

この非情さがないと、ここでは、やっていけない。

試用期間内に、ほとんどは辞めるが、しがみついている奴等もいる。

能力があればよし。

数字をあげる能力のないものは切る。

その人選は、グループを担当する幹部によって個々になされる。

自分の担当する社員の、試用期間の間に、評価をして、切る人間を決定し、そのあとの補充人数を総務に報告しなければならない

自分のことだけでも精一杯なのに、同僚幹部の浅野が、火曜から無断欠勤している。

上司に、浅野の担当も一緒にみてくれと、昨日、頼まれた。

うんざりする。

この会社では、無断欠勤は少なくはない。

幹部クラスでは、めずらしいかもしれないが、人間関係の希薄なこの会社では、信頼できる友人関係が構築されるはずもなく、幹部として優遇されていても、皆、孤独を抱えている。

数字に一喜一憂し、数字だけで判断される世界の中で、プレッシャーにおしつぶされる者も少なくない。

けど、こんな決算時期に、他のグループの面倒みる余裕なんてないってば。

同僚の浅野に、軽い殺意を感じながら、しかたなく浅野担当の資料に軽く目を通す。

試用期間内で、能力のない社員をいつ切るかは、担当幹部に任されている。

木谷は、比較的早い段階で、その判断をする。

顔なじみにすらなっていない方が、お互い、離れやすいだろうという木谷なりの判断だ。

浅野の資料を見ると、試用期間ギリギリまで、判断を待っているようだ。

化ける社員も時々はいる。

こいつは駄目だと思っていても、ある一定以上の期間から、突然、開花する社員だ。

浅野がそうだった。

自分がそうだったから、人にも、それを期待しているのかもしれない。

はーっと溜息をついて、ファイルを見ていると、受注成績が極端に低い社員がいる。

数をこなせない社員だ。

入社当初から調べてみると、少しずつ、少しずつ、数は上向いてはいる。

ミスは少ない。いわゆるスロースターターなんだろう。

あと、半年くらい在籍してれば、追いつくだろうけど、私なら切る。

そんなに待てない。

受注ばかりの仕事じゃないのだ。

おそらく、どの業務に入っても、この調子だろう。

全ての業務がこの一人のために、数字がとれなくなる。

浅野はどうするつもりだったんだろうと、ファイルを確認して、彼女が、火曜日までが試用期間であったことに気づく。

昨日、来週からのシフトの交替を伝えた彼女だ。

水曜から、本採用になっている。

木谷は頭をかかえた。

こんなお荷物、いらないのに。

浅野の奴、とんでもないもの、残してくれたわね。

本気で殺意がわいたところで、電話が鳴った。

「はい。木谷です。あ、はい。浅野の担当を昨日から任されました。え?何ですって?浅野が?」


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