成哉の木曜日
身体は、だいぶ、楽になってきた気がする。
御堂成哉は、こたつから身体をおこした。
今まで、考えられなかったことも、少しは考えた方がいいかもしれない。
ここに居候して、3日になる。
いつまでも、ここにいるわけにもいかないか。
美織さんは、親切だけど、俺のことは警戒してる。
まあ、当然だろう。
大事なものは、肌身離さない。
風呂に入る時も、脱衣場に、鞄を持って入る。
その鞄を服で隠して入るところが、見え見えなのが、気の毒だ。
頭は、まだずきずきする。
だいたい、この怪我は、どうしたんだろ?
この怪我がもとで、記憶を失ったんじゃないかとは思うんだけど。
思い出したいが、思い出してはいけないような気もする。
何故かわからない。
記憶を失う前の自分の感情なのかもしれない。
何か、道徳に反することをしていたのかもしれない。
俺なら…やりかねん…かも。
真面目な生活、几帳面な生活…、自分と、そんな生活とは、結びつかない気がする。
犯罪的なことをしていても、不思議な気はしない。
規則を守ったり、約束を守ったり、常識的で道徳的な生活が、成哉のバックボーンであるとは、思えなかった。
出てこない答えを見つけようとしても仕方ない。
出てくるときは、出てくるだろう。
気持ちは、すぐに切り替わる。
思い切りの良さも、人間としての軽さも自覚している。
たった数日の記憶でも、人は自分を評価できるんだと、苦笑する。
フと、テレビに目がいった。
ずっとつけていなかったテレビをつけてみる。
丁度、料理番組をやっていた。
麻婆豆腐をつくっている。
あれ?
俺のつくるマーボーと違う。
つくり方の違いを自覚して、意識しない記憶がしっかり残っていることを自覚する。
料理は、覚えている。
覚えていることを繰り返してたら、何かを思い出すかも…。
そろそろ、外に出たいな。
何か、ここは、辛気臭い。
多分だけど、俺は、もっと異常に明るいとこに居たような気がする。




