浅野の月曜日
浅野秀行は、ソファにもたれ、ウイスキーを片手にテレビを観ていた。
頭の中では、今日の数字を計算している。
若くして幹部になった。
幹部になった理由はたったひとつ。
営業能力だ。
客を逃す事は無い。
少しでも興味を持った客は逃がさない。
若干の誇張はあっても、大きな嘘をついて騙しているわけじゃない。
相手に、商品のいいところを納得させて、買わせるのだ。
相手が購入を決めた時の快感は、毎度、たまらない。
全国レベルの数字を叩きだすこの腕は確かだと自負してる。
その成績を見込まれて、幹部になった。
けれども、幹部にならない方が楽だった。
今は、そこそこの給料こそもらえるが、自分より、遥かにレベルの低いグループの長として、グループの数字を叩きださなければならない。
そのためには、試用期間の3か月で、一人一人の力量をはからなければならない。
切るのは簡単だ。
才能あるものを、引き出すのが大変なのだ。
自分がそうだった。
どちらかと言えば、遅咲きだった。
いきなり、開花して目覚めたのだ。
だから、他の幹部より、試用期間ギリギリまで、待っている。
この社員が、数字をあげる社員か、そうでないか、見極めることをだ。
今日、一人、通告した。
試用期間の残る明日までに、一日の目標数字に達しなければ、クビだと宣告した。
必ず、近いうちに数字をたたき出すと豪語していたが、最初から、スピードのない女だった。
仕事は、丁寧で、間違いも少なかったが、数字を叩きだすために必要なスピードがこの女には無かった。
泣きついてきたが、俺の知ったことじゃない。
試用期間最後の日まで、待ってやったことに、感謝してもらいたいくらいだ。
段々、性格が悪くなる。
また、長期休暇もらって、旅行でもした方がいい。
その時、ピンポンとドアのベルがった。




