シディアの塔
『ハイドラッド』の中心部にそびえ立つ塔、その外観はミッドガルドの『バベル』と瓜二つであったが、内部は全く異なっていた。塔の内部に乗り込んだオレたちの視界にあったのは、何もないだたの大広間であり、とても人が住んだり、政をしようといった雰囲気を感じられるものではなかった。
「ククク… 、
まさか本当にここまで来るとは思ってもみませんでしたよ… 」
声がする方を見てみると、白いマントに包まれた男がいた。七聖者の一人であろう男は苦笑いをしながらオレたちに言う。
「それは残念だったな。
ここでおまえ達を一気に倒してみせる! 」
「ククク… 、
まぁ、そう焦らないで下さい。
我々の長が、あなた方に話があるそうですよ。」
「話だと!?
まさか、降伏するとか… じゃないだろうな… やっぱり… 」
淡い期待を抱いてオレは言う。
「ククク… 、
面白い方ですね。
それはないと思いますよ、一条風牙。
あなたと近衛陽子は奥の階段から最上階へお上がり下さい。
我々の長がお待ちです。 」
「ほう… 、まさか妾も招かれているとはな。 」
ヨーコは自分が指名されている事に驚くこともなく、なぜか冷静に答えていた。
「ククク… 、
それはそうですよ。
あなたも、我々と同じ旧世界の産物なのですから。
まぁ、あなたや一条風牙、エリスは別格ですけどね… 」
「……… 、
やはり、あの小娘、只者ではなかったか… 」
「さすがは近衛陽子ですね。
あなたのような天才なら、もう我々が何者なのかもわかっているはずです。
さぁ、あなた達二人は最上階へどうぞ。
残りのメンバーは我々が抹殺しておきますので。」
七聖者の一人がそう言うと奥からもう一人の白いマントの男が姿を見せた。それに続き、初めて見る黒いマントをした男たちと奥から巨大な何かが現れた。殺気を感じたオレは戦闘態勢に入る。
「フーガ君!
ここはミウたちに任せるのだ! 」
「私とミウちゃんだってやる時はやるんですよ。
それに私にはミネルヴァも付いていますし。」
「そんな無茶だ! 」
オレはそう叫び、奥から現れた敵に対し攻撃態勢をとる。
「そうそう!
ミウちゃんとリサっちだけじゃ無理無理!
でも、ボクたち十二人がいれば話は別だけどね!
だから、ヨーコ様、風牙様!
ここはボクたちに任せて早く最上階へ! 」
ヨーコは彼女たちを信じろという目でオレを見つめている。オレは意を決してヨーコと二人で最上階を目指すことにした。
「ミウ! リサ!
絶対に死ぬなよ! 」
「大丈夫だよ!
ミウは大魔導士で、しかも、伝説の魔人『フーガ』の娘だからね! 」
「もちろん死ぬつもりなんてありません。
夫の帰りを待つのが妻の役目ですから。
風牙様もどうかご無事で。 」
ミウとリサは笑顔だったが、力強い目でオレを送り出してくれた。
「お主らも十二人揃って生きて勝つのじゃぞ。
これは妾の命令じゃ! 」
「はは!
心配性だなー、ヨーコ様は。
こんな事言っちゃ、何だけど
ボクたち十二人が何者か知らないわけじゃないですよね、ヨーコ様! 」
「フッ、それもそうじゃったな。
では、また後でな。」
ヨーコは軽く笑い十二人に答えを返した。
オレとヨーコは仲間を信じ、最上階のシディアの長の元へ向かった。
~ミウSide~
「さぁ! ミウたちが相手なのだ! 」
「ククク… 、
まぁ、そう焦らないで下さい。
余り早く始めると階段が壊れてしまうかもしれませんので。
ですから、時間潰しに、あなた方が死ぬ前に簡単ですが我々の紹介でもしておきましょう。
我はシディア七聖者の一人、第五の使者、隣にいる白いマントの男は第六の使者です。 」
「そんなの、もう大体わかっているのだ。
白いマントに金の十字の刺繍が入っているのは七聖者なのだ。」
「ククク… 、それもそうですね。
では、巨大生物と黒いマントの男四人の紹介でもしましょう。
この巨大生物は我の最高傑作。
そして、この黒いマントの男たちは、第六の使者が育てた最強の殺戮部隊とでも言っておきましょうか。」
「なるほど… 。
あなた達が何者か? 大体ですが私にもわかってきました。
私とミウちゃんであの巨大生物の相手をしますので
あなたたちは二人ずつ組んで、七聖者二人と黒マント四人の相手をお願いします。 」
「ま、うちの天才軍師がそう言うならボクはそれでいいよ!
ヨーコ様たちも、もうかなり上の方まで行ったみたいだし!
じゃ! そろそろ始めよっか! 」
「ククク… 、
では愚かな人間たちに天誅を下すとしましょう。 」
オレとヨーコがかなり上まで階段を上ってきた時、下の方から凄い爆発音と振動があった。ついに始まったか… 、オレは仲間の無事を祈りながらもヨーコと共に塔の上を目指した。しばらくすると、どうにか最上階まで辿り着くことができたようだ。だが、今でも下から聞こえる爆発音は続いている。オレとヨーコは呼吸を整え、シディアの長が待つであろう大きな扉を開いた。
「なんだ! これは!!! 」
その扉を開けた部屋には、オレが全く想像していなかった光景が広がっていたのである。




